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顔認証システムにより多数の失業者が失業手当をもらえない事態が発生している


新型コロナウイルス感染症の影響による失業者の増加が危ぶまれる中、失業手当の申請に使われている顔認証システムの問題により、多数の失業者が失業手当の申請を拒否されたり申請が滞ったりしていると報じられています。一方、顔認証システムの開発会社は、問題はシステムではなく申請の不備であるとの見方を示しました。

Facial Recognition Failures Are Locking People Out of Unemployment Systems
https://www.vice.com/en/article/5dbywn/facial-recognition-failures-are-locking-people-out-of-unemployment-systems

ID.me」は、失業手当の詐取や不正を防止することを目的とした本人確認サービスで、スマートフォンなどを経由して得られた生体認証用データと公的書類を照合する機能を持っています。IT系ニュースサイト・Motherboardの調べによると、ID.meはアメリカで20の州の政府が行政サービスの受付に使用しているとのこと。


このID.meの導入に伴う不具合により、失業者が失業手当を受け取れない事態が複数の州で発生していると報じられています。たとえば、カリフォルニア州では2020年末から2021年初頭にかけて、140万人もの失業手当受給者のアカウントが突然停止され、アカウントが復旧するまでの数週間給付が滞る問題が発生しました。またコロラド州では、以前から失業手当を受け取っていた人が、ID.meの導入を境に受け取れなくなってしまった事例が、地元メディアによって報じられました。こうした問題は、フロリダ州ノースカロライナ州ペンシルベニア州アリゾナ州などID.meを導入しているほかの州でも報告されています。

ラスベガスでギグワーカーとして生活していたティム・ウィーバー氏も、ID.meにより失業手当が突然停止されてしまった失業者の1人。ウィーバー氏はTwitterで「ID.meの顔認証が3回失敗してシステムがロックされてしまいました。そこでID.meに問い合わせるチャットを試しましたが、5回試して全部『誰もいません』と表示されてしまいます。おまけに、できることは何もないから州に問い合わせるように言われたので州に連絡したら、州からも『システムで認証できないことには何もできない』といわれる始末です」と訴えました。


ウィーバー氏は、最終的に失業手当の受給を再開することができましたが、再開手続きに3週間かかったとのこと。同氏はMotherboardの取材に対し、「幸い食料の備蓄はあったので助かりましたが、請求書の支払いがいくつか滞ってしまいました。ひどい話です」とコメントしました。


一方、ID.meのブレイク・ホールCEOは、複数のメディアに送った声明の中で「ほかの顔認証システムはユーザー1人に対して多数のデータを照合しますが、当社の顔認証技術は空港で係員がパスポートと客の顔を見比べるのと同じ1対1のマッチングを行います。従って、当社のアルゴリズムの有効性は99.9%に上ります。ID.meで本人確認ができなかった対象者はいません」と述べて、顔認証に失敗したとの訴えを否定しました。また、問い合わせ用ライブチャットの待ち時間も5分以内で、直近1週間でも常に30分以内の状態が続いているとしています。

ホールCEOによると、顔認証の失敗はID.meの技術的な問題ではなく、利用者の問題とのこと。「例えば、顔が半分しか写っていない自撮り写真をアップロードした場合が考えられます」とホールCEOは述べています。

これに対し、ウィーバー氏は「ID.meの顔認証をしようとしたとき、私はシステムに指示された通りに携帯電話を持って顔を撮影しましたが、理由が表示されることもなくただ拒否されました。それが3回繰り返されたので、私はシステムから閉め出されてしまったのです」と話しました。


ホールCEOは、2021年2月にオレゴン州で放送されたテレビ番組の中で、「失業手当の不正受給による損害は1000億ドル(約11兆159億円)にのぼる」とコメントしました。しかし、これが数週間後のモンタナ州のテレビ番組では2000億ドルに、翌月の別のテレビ番組では3000億ドルに膨れ上がり、海外メディアのAxiosが2021年6月に掲載した記事の中では4000億ドルになっていたとのこと。しかし、アメリカ政府の労働省が2020年3月~10月に摘発した不正受給額は56億ドル(約6169億円)でした。同省は、摘発から逃れた額も加味しても被害額は数百億ドルだと見積もっています。

これについてMotherboardは、「ID.meには、不正受給を大きな問題だとすることにインセンティブがあります。不正防止技術を開発している企業が不正行為について研究するのはもっともですが、問題をあおることで利益を得られる企業が発表する統計に人々が懐疑的な目を向けるのは当然のことでしょう」と指摘しました。

なお、ウィーバー氏は「確かに、不正な申請を防ぐのはとても大切なことだと思いますが、ID.meには腹が立ちますし、このようなシステムを短期間のうちに導入してしまったネバダ州にはもっと腹が立ちます」と述べました。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1l_ks

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