サイエンス

寄生細菌に感染させた蚊が感染症の流行を劇的に抑え込むことが判明


近年では蚊が媒介する感染症を減らすために、蚊の生殖を妨害する方法が研究されています。新たに、蚊の生殖を妨害する細菌に感染させた蚊と、そうでない蚊を、異なる地域に放って感染症の発生がどのように影響を受けるかを調べる実験が行われました。この結果、蚊を細菌に感染させることが感染症に対して77%の防御効果を発揮することが示されました。

Efficacy of Wolbachia-Infected Mosquito Deployments for the Control of Dengue | NEJM
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2030243

Randomised Controlled Trial | World Mosquito Program
https://www.worldmosquitoprogram.org/en/randomised-control-trial-rct

蚊はマラリアデング熱といった数多くの病原体を媒介することから、「歴史上、人間を最も多く殺している生物」と言われています。このため病気と戦うためには蚊の対策を行うことが重要だと指摘されており、近年は蚊の遺伝子操作を行う大規模な実験が行われています。

また、ボルバキアという寄生細菌に感染したオスの蚊がボルバキアに感染していないメスの蚊と交配すると子孫が生まれなくなることを利用し、ボルバキアに感染させた蚊を放して蚊を減らす実験も行われています。実験の詳細な仕組みについては以下から読むことができます。

寄生バクテリア「ボルバキア」で蚊を根絶させることに成功 - GIGAZINE


2021年6月10日にNew England Journal of Medicineで発表された新たな研究結果では、インドネシアのジョグジャカルタ市で行われた大規模な実験結果が報告されています。

研究チームは、ジョグジャカルタ市のうち無作為に選んだ12箇所でボルバキアに感染した蚊の群れを放ち、これとは別に無作為に選んだ12箇所ではボルバキアに感染していない蚊の群れを放つという、ランダム化比較試験を行いました。蚊が放たれたのは2017年3月から12月までの間。その後、2018年1月8日から2020年3月18日までの間に、研究チームは政府が運営するプライマルケアのクリニックで5万4000人の患者をスクリーニングし、8000人あまりを研究の参加者として登録しました。そして、このうち6306人を対象に「蚊がどのくらい病気を媒介したのか」を分析したとのこと。

分析対象となった6306人のうち、2905人はボルバキアに感染した蚊が放たれた12地域で暮らしており、残り3401人は対照群の地域で暮らしていました。なお、研究参加者の年齢の中央値は11.8歳とのこと。


この結果、ボルバキアに感染した蚊が放たれた地域の住民は2.3%がデング熱を発症したのに対し、対照群の住民は9.4%でした。これは77.1%の防御効果があると言い換えることができます。またデング熱に関連し入院する割合の違いはさらに顕著で、ボルバキアに感染した蚊を放した地域の住民は0.4%、対照群の住民は3%だったとのことです。

研究チームは、この研究が「感染症を防ぐボルバキアの可能性を示した」と述べています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logq_fa

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