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Appleの新しいプライバシー保護機能「プライベートリレー」は中国では使えない


Appleが開催する年次開発者向けイベント「WWDC 2021」の中で、ユーザーのウェブブラウジング行動を隠す新機能「プライベートリレー」が、iCloudを強化したサービス「iCloud+」の一環として発表されました。プライベートリレーはVPNの代替となる存在ですが、規制上の理由から中国を含めた複数の国では利用できないことも判明しています。

Apple's new 'private relay' feature will not be available in China | Reuters
https://www.reuters.com/world/china/apples-new-private-relay-feature-will-not-be-available-china-2021-06-07/

iCloud Private Relay and other Apple WWDC privacy features
https://www.fastcompany.com/90643627/apple-privacy-wwdc-private-relay-vpn-icloud-plus-macos-monterey

AppleはWWDC 2021の中で、iCloudをアップデートしてiCloud+という名称のサービスを展開することを発表しました。アメリカ・ニューヨークに本拠を置くビジネスメディアのファスト・カンパニーは、WWDC 2021に先だってAppleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長であるクレイグ・フェデリギ氏にインタビューを実施し、iCloud+の中に含まれている新たなプライバシー保護機能であるプライベートリレーなどについて尋ねました。

プライベートリレーはユーザーのウェブブラウジング行動を匿名化するという点において、「AppleバージョンのVirtual Private Network(VPN)」と捉えられそうですが、両者には大きな違いがあるとのこと。従来のVPNでは、VPNサーバーがユーザーのIPアドレスを暗号化し、アクセスしたいウェブサイトへ経路をルーティングして接続します。この仕組みにおいて、訪問先のウェブサイトはユーザーの正確なIPアドレスを知らないものの、VPN事業者はユーザーのIPアドレスや訪問したウェブサイトがわかります。

一方、Appleのプライベートリレーでは、まずユーザーのIPアドレスと「暗号化されたアクセス先のURL」がAppleに送信されるとのこと。次に、AppleがユーザーのIPアドレスを暗号化して、暗号化されたURLと共に提携したコンテンツプロバイダーが運営するリレーステーションへ送信します。そしてリレーステーションは暗号化されたURLを復号して、ユーザーに目的のウェブサイトへのアクセスを提供する仕組みです。

プライベートリレーの仕組みで重要なのは、「AppleはユーザーのIPアドレスを知っているが、アクセスするサイトは知らない」「提携したコンテンツプロバイダーはアクセスするサイトを知っているが、ユーザーのIPアドレスは知らない」という点です。ユーザーの正確なIPアドレスとアクセスするサイトの両方を知っている事業者が存在しないため、ユーザーのデータが悪用される危険性が非常に低くなります。


フェデリギ氏は、VPNはIPアドレスを隠したいユーザーにとって有用なものの、ユーザーがVPN事業者に大きな信頼を寄せる必要があると指摘。しかし、一般のユーザーがVPN事業者の信頼性を正確に評価することは難しいため、Appleは正確なデータを持つ事業者が存在しないプライベートリレーの仕組みを開発したとのこと。双方向の匿名化システムを用いることにより、たとえユーザーがAppleやプロバイダーを信頼していなくても、プライベートリレーを利用して身元を隠すことができます。

プライベートリレーはMac、iPhone、iPadなどでiCloud+にログインすると自動的に有効となりますが、利用可能なブラウザはSafariのみだそうで、ChromeやFirefoxなどのブラウザでは利用できません。また、プライベートリレーが有効化されている状態でも、既存のVPNを使用し続けることができるとのことです。


なお、プライベートリレーではアクセス先のウェブサイトがユーザーの正確な居住地を知ることはできないものの、地域を知ることは可能となっています。そのため、特定の国や地域で閲覧できないコンテンツを閲覧するために、プライベートリレーを利用することはできません。

このように、プライベートリレーはVPNの代替とも言える存在となっていますが、政府による検閲が厳しいことで知られる中国をはじめとする複数の国々では、プライベートリレーを使うことができないことが判明しています。Appleによると、中国の他にもベラルーシ・コロンビア・エジプト・カザフスタン・サウジアラビア・南アフリカ・トルクメニスタン・ウガンダ・フィリピンといった国々では、規制上の理由からプライベートリレーを利用できないとのこと。記事作成時点では、日本からはプライベートリレーが利用可能となる見込みです。

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in ネットサービス,   セキュリティ, Posted by log1h_ik

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