サイエンス

パーキンソン病を引き起こす遺伝子変異は「脳内で神経細胞を作るプロセスを損なう」との研究結果


パーキンソン病は手の震えや歩行の困難といった運動障害を示す進行性の神経変性疾患であり、症状が進行すると車椅子や寝たきりの生活になるケースもあります。そんなパーキンソン病を引き起こすとされている遺伝子変異が、脳内で神経細胞(ニューロン)を生成するプロセスを損なう可能性があるとの研究結果が発表されました。

PINK1 deficiency impairs adult neurogenesis of dopaminergic neurons | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-021-84278-7

Parkinson's gene may impair how new neurons are made throughout our lifetime | Neuroscience Institute | The University of Sheffield
https://www.sheffield.ac.uk/neuroscience-institute/news/parkinsons-gene-may-impair-how-new-neurons-are-made-throughout-our-lifetime


パーキンソン病の症状は神経伝達物質であるドーパミンを作るドーパミン作動性ニューロンが減少し、ドーパミンが脳内で適切に分泌されなくなることによって引き起こされると考えられています。そのため、既存の治療薬はドーパミン作動性ニューロンを活性化させ、ドーパミンの分泌を促す仕組みになっているとのこと。

何が原因でパーキンソン病を発症するのかは不明な点が多いものの、加齢やライフスタイルに関連するいくつかの危険因子が報告されているほか、複数の遺伝子がパーキンソン病に関連していることもわかっています。そのうちの1つがPINK1と呼ばれる遺伝子の突然変異であり、変異によってPINK1の正常な機能が失われるとパーキンソン病を発症することが知られています。

一般的に、PINK1が不活性化するとドーパミン作動性ニューロンが死んでドーパミンの分泌量が減ると考えられていますが、シェフィールド大学の研究者が率いる国際的な研究チームは、PINK1の不活性化と「ドーパミン作動性ニューロンが作られる量」の関係に着目しました。

シェフィールド大学の運動障害神経学教授であるオリバー・バンドマン氏は、「神経発生は脳内で新しい神経細胞が形成されるプロセスです。最近の研究では、神経発生が障害を通じて継続していることが示唆されていますが、パーキンソン病などの神経変性疾患との関連性については十分に理解されていません」とコメントしています。


研究チームはモデル生物として広く使われているゼブラフィッシュを用いた実験で、ドーパミン作動性ニューロンが成人になっても作られ続け、その量が加齢と共に緩やかに減少することを確認。さらに、PINK1を不活性化した個体では、ドーパミン作動性ニューロンの神経発生が著しく阻害されることも発見しました。

今回の実験では、PINK1の突然変異でドーパミン作動性ニューロンが減少する理由の1つに、新たな神経発生が阻害されるメカニズムがあることが示唆されました。この結果を踏まえて、パーキンソン病の新たな治療法として、ドーパミン作動性ニューロンの神経発生を促す治療法の開発にも焦点が当たる可能性があるとのことです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
パーキンソン病のパンデミックが将来起こる可能性があると研究者が警告 - GIGAZINE

人には不要だとされている内臓がパーキンソン病の発症に大きく関わっていることが判明 - GIGAZINE

突然クリエイティビティを大爆発させるパーキンソン病患者がいるのはなぜなのか? - GIGAZINE

においでパーキンソン病を見分けられる女性の告白で難病研究が一気に進む可能性 - GIGAZINE

パーキンソン病患者に光明をもたらす手の震えを相殺する腕時計型デバイス「Emma」 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.