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ビデオ会議は「戦うか逃げるか反応」を誘発し対面コミュニケーションよりも大きな負担となる


新型コロナウイルスのパンデミックに伴って在宅勤務が導入された会社では、Zoomなどのビデオ会議ツールを用いた会議が増加しています。ところが、「ビデオ会議は対面の会議よりも疲れる」といった不満を訴える声はパンデミックの初期から挙がっており、人がビデオ会議を負担に感じてしまう理由について、スタンフォード大学コミュニケーション学部のJeremy Bailenson教授が解説しています。

Nonverbal overload: A theoretical argument for the causes of Zoom fatigue ・ Volume 2, Issue 1
https://tmb.apaopen.org/pub/nonverbal-overload/release/1

New Stanford study says Zoom calls trigger our 'fight or flight' survival reflex | TheHill
https://thehill.com/changing-america/well-being/mental-health/542186-new-stanford-study-says-zoom-calls-trigger-our

◆1:近距離からの視線
一般的に、対面で行う会議はお互いに数メートルほど離れた状態で行われ、自分の顔から数十センチの距離に相手の顔がある状態にはなりません。ところが、Zoom会議ではPCなどのカメラで撮影した顔付近の映像が大きく画面に表示されるため、非常に近距離から相手の視線を感じることとなりました。

もちろん、家族や恋人といった間柄であれば近距離から見つめられることに問題はありませんが、職場の同僚や上司といった間柄と話す場合、数十センチという距離は短すぎます。たとえば見知らぬ人々が数十センチの間隔で居合わせるエレベーターに乗った際、乗客がお互いの顔を見つめずに視線をそらしているのは、近距離で親しくない相手の顔を見つめるのが不快感をもたらすからです。

Bailenson氏は、「脳は特に顔に大きな注意を払っており、大きな顔を見ると私たちは『戦うか逃げるか反応』が反応します」「進化論的な観点から言えば、あなたの近くに非常に大きな人間の顔があり、その顔があなたを見つめていた場合、争いか交尾に従事する可能性があります。どちらの応答も仕事の会議には適切ではありません」と述べました。


◆2:認知的な負荷の増加
ビデオ会議では、脳に与える認知的負荷が対面の会議よりも大きくなるとBailenson氏は指摘。対面であれば何気なく行っているような「うなずく」「アイコンタクトを試みる」といった行動は、ビデオ会議だとカメラの画角に入るように意識的に行う必要があります。加えて、話している相手は直接自分を見ているのではなく、PC画面に映った自分や会議のメンバーを見ているため、アイコンタクトがうまくいかなかったり、相手の視線の意図を読み違えることも増えてしまうとのこと。

また、対面のやり取りとビデオ会議のやり取りを比較した2019年の研究では、ビデオ会議の方が対面の会議より15%大きな声を出していることも判明。普段よりも少し大きな声を出し続けることも、より大きな負荷を脳にかけることとなります。


◆3:自分の顔を見続けることの負担
普段の生活では、自分の顔を見るのは鏡の前に立った時か自撮りをする時くらいですが、ビデオ会議では画面の端に自分の顔が映るケースもあります。自分の顔を見続けることはストレスにつながり、無意識的な自己批判につながったり、精神への悪影響が及んだりすることもあるとのことです。

◆4:身体的な不自由さ
カメラの画角には制限があるため、ビデオ会議に参加している人はその範囲から出ないように心がけます。一般的に、ビデオ会議中はイスに座ったままであり、顔がなるべくカメラから離れすぎないようにすると、ほとんど身動きを取ることができません。この点も人にとってストレスとなります。

対面の会議であればイスの上で体を前後に動かしたり、横を向いたり、立ちあがってウォーターサーバーの水を飲んだり、ホワイトボードに何かを書き込んだりと動く機会は意外と多いもの。しかし、ビデオ会議ではそのような動きをする心理的ハードルが高く、ちょっとした気分転換が行いにくいとBailenson氏は主張しています。


ビデオ会議にはストレスを生みやすいさまざまな要因があるものの、ビデオ会議には多くのメリットも存在しており、たとえCOVID-19が終息したとしてもビデオ会議はなくならないだろうとBailenson氏は考えています。そこでBailenson氏は人々がより快適にビデオ会議を行うために、「相手の顔を画面全体に表示するのではなく、3分の1程度の大きさに縮小して表示する」「相手の動作を気にしすぎない」「自分の顔を非表示にする」といった対策を取ることを推奨しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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