サイエンス

花粉の量が増えると新型コロナウイルスに感染するリスクが高くなる可能性


春は暖かく気持ちのいい季節ですが、花粉にアレルギー反応を起こしてしまう花粉症の人にとっては、鼻水やくしゃみが止まらなくなってしまう大変な季節でもあります。新たに、「空気中の花粉の量が増えると新型コロナウイルスに感染するリスクが高くなる可能性がある」との研究結果が、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されました。

Higher airborne pollen concentrations correlated with increased SARS-CoV-2 infection rates, as evidenced from 31 countries across the globe | PNAS
https://www.pnas.org/content/118/12/e2019034118

Pollen can raise your risk of getting COVID-19, whether you have allergies or not
https://theconversation.com/pollen-can-raise-your-risk-of-getting-covid-19-whether-you-have-allergies-or-not-156754

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は年齢が高い人ほど重症化しやすいことが広く知られていますが、これまでの研究で肥満大気汚染ネアンデルタール人から受け継いだDNA統合失調症など、多様なリスク要因が存在していることが判明しています。

コロンビア大学の植物性理学者であるLewis Ziska氏らの研究チームは、2019年に「花粉への暴露が呼吸器系のウイルスに対する免疫力を弱める」との研究結果が発表されたことを踏まえ、空気中の花粉の量がCOVID-19のリスク要因になり得ると考えました。花粉は気道の細胞に存在する「抗ウイルス反応を示すタンパク質」に干渉し、インフルエンザウイルスなどの呼吸器系ウイルスに感染しやすくさせるとのこと。

by Yamanaka Tamaki

研究チームは、ヨーロッパ・アフリカ・アジア・北アメリカ・南アメリカ・オセアニアなどに存在する248カ所の花粉監視サイトが収集したデータと、その地域における新型コロナウイルスの感染者数データを入手。これらのデータを分析し、空気中の花粉量が新型コロナウイルスの感染者数とどのように関連しているのかを、2020年3月~4月の期間で調査しました。

分析の結果、花粉の量が増加した4日後に新型コロナウイルスの感染率も増加することが判明し、各国で見られたCOVID-19の症例率の変動は、平均して44%が花粉の暴露に関連していたとZiska氏は述べています。都市封鎖が行われなかった場合、1立方メートルあたりの花粉が100粒増えると感染率も4%増加したそうで、この値は都市封鎖が行われると半減したとのこと。

また、花粉への暴露が問題なのは花粉症の人だけでなく、花粉にアレルギー反応を起こさない人にも影響するほか、一般的にアレルギーを起こさないタイプの花粉でも新型コロナウイルスの感染率増加と関連していたそうです。


近年では地球温暖化の影響によって花粉のシーズンが長くなっており、1990年と比較して20日ほど花粉が飛ぶ時期が長くなっているほか、飛ぶ花粉の量自体も増加しているとの研究結果もあります。今回の研究結果から、Ziska氏は「花粉が多い日はできるだけ屋内にとどまり、花粉への暴露を制限するようにしてください」と述べ、屋外に出る際はマスクを着用して花粉が呼吸器に入るのを防ぐことも重要だとアドバイスしました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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