生き物

自分で胴体をぶった切って「頭部だけ」になってから胴体を完全再生させるウミウシが見つかる


奈良女子大学の大学院生である三藤清香氏が「自ら頭部を切断し、その頭部から全身を完全再生させる」という奇妙な生態を持つウミウシ2種を報告しました。

Extreme autotomy and whole-body regeneration in photosynthetic sea slugs - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0960982221000476

A sea slug’s detached head can crawl around and grow a whole new body | Science News
https://www.sciencenews.org/article/sea-slug-detached-head-crawl-regenerate-grow-new-body

Meet the Sea Slugs That Chop Off Their Heads and Grow New Bodies - The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/03/08/science/decapitated-sea-slugs.html

These Self-Decapitating Sea Slugs Can Grow an Entire New Body on The Old Head
https://www.sciencealert.com/self-decapitating-sea-slugs-can-grow-a-whole-new-body-internal-organs-and-all

体の一部を自ら切断する「自切」はトカゲの尻尾切りが代表的ですが、三藤氏が新たに報告したウミウシは体の一部ではなく「頭部以外の全て」を切り離して、頭部から胴体を再生するという珍しい生態を有します。これまでにも自切を行うウミウシの存在は確認されていましたが、心臓を含む胴体の再生が確認されたのは今回が初めてのことです。

三藤氏が胴体を完全に切り離すという珍奇なウミウシを発見したのは偶然だったそうです。ある日、三藤氏はウミウシが胴体を自切して頭部だけになったにもかかわらず頭部だけでウネウネ動いている様子を目撃し、「心臓などの重要な臓器と切り離されればすぐに死ぬはず」という固定観念を覆されたとのこと。


三藤氏が報告した2種のうち1種「コノハミドリガイ」が自切を行った直後の映像が以下。頭部と胴体が完全に切り離されているというだけでなく、頭部だけがウネウネと動き回っている様子が確認できます。

コノハミドリガイ自切直後 Elysia cf. marginata, just after autotomy - YouTube


こうして胴体を自ら切り離して頭部だけになるコノハミドリガイの観察を始めた三藤氏は、首だけになったコノハミドリガイが自切から数時間以内にエサを食べ始めることを確認します。そして首の切断面は1日で完治し、心臓は1週間で再生。観察から3週間後に全身を完全再生させたことが認められました。以下の画像は左から順に、自切から0日目、7日目、14日目、21日目のコノハミドリガイ。0日目では頭部(上)と胴体(下)が完全に分離していますが、その後日数が経過するごとに徐々に胴体を再生させていることが見て取れます。報告によると、全身の完全再生を2度も成功させた個体もあった一方、高齢の個体は自切直後にエサを食べずに約10日ほどで死亡したとのこと。


以上のように頭部から胴体を完全再生させる一方で、切り離された元の胴体は数日~数カ月間にわたって物理的衝撃に対して反応を示すものの「胴体から頭を再生させる」ことはありません。

胴体の完全再生能力を持つとして今回報告されたコノハミドリガイとクロミドリガイが胴体を切り離す理由は、産卵を妨げる寄生虫を排除することが目的だとみられています。自切を行った全てのウミウシは寄生虫に感染したことや、自切後には寄生虫の排除に成功していたこと、そもそも寄生虫に感染していないウミウシは自切を行わないこと。そして、胴体の切断には数時間かかる場合もあることからトカゲの尻尾切りのように「捕食者に狙われた場合に犠牲にする」状況には役に立たないと考えられることが、この仮説の理由です。また、体の一部のみ寄生虫に感染したクロミドリガイのケースでは、「寄生された部位のみを自己消化して再生能力でまた生やす」という現象も確認されたとのこと。

頭部から胴体を完全再生させる能力については解明されていませんが、三藤氏はコノハミドリガイとクロミドリガイなどの一部のウミウシが有する「盗葉緑体現象」という能力が関係しているとみています。盗葉緑体現象は、食べた藻類の葉緑体を細胞内に一時的に取り込み光合成能力を獲得するという能力。問題の2種は盗葉緑体現象で獲得した光合成能力によって、頭部だけで生きるためのエネルギーを得たと考えられています。


三藤氏が所属する奈良女子大学水圏生態学研究室は、ウミウシやシジミなどの水生生物に関する研究を中心とする研究室。同研究室を率いる遊佐陽一教授はウミウシ類における盗葉緑体現象を主要研究テーマの1つとして掲げており、オープンキャンパスにおいては「ウミウシ ラボ」の名義でウミウシの魅力を発信する企画を発表しています。

【Go To ウミウシ ラボ】光がお好きな海の宝石【奈良女子大学 理学部 生物 サイエンス・オープンラボ SOL 2020】 - YouTube

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1k_iy

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