白人至上主義などの過激派は「ゲーム配信」で子どもを取り込もうとしている

ドナルド・トランプ前大統領の支持者が連邦議会議事堂を襲撃した一件を機に、アメリカでは「一部の過激派が武力行使するのでは」という懸念の声が上がっています。こうした現状について、アメリカのビジネス誌Fast Companyが「白人至上主義やオルタナ右翼は『ゲーム配信』で子どもの支持者を取り込んでいる」と過激派が採っている戦略について解説しています。

White supremacists are using gaming sites as tools of hatred
https://www.fastcompany.com/90599113/white-supremacists-gaming-sites-dlive

現地時間2021年1月6日、アメリカ大統領選の結果を確定させるための上下両院合同会議が開かれていた連邦議会議事堂の建物に、ドナルド・トランプ氏の支持者らによるデモ隊が侵入する事態が発生しました。この事件のさなかに射殺されたアシュリー・バビット氏を含め、関係者5名の死が確認されています。

アメリカの連邦議会議事堂にトランプ氏支持者らが侵入し女性1名が撃たれて死亡した事件の現場ムービー - GIGAZINE

この一件を契機に、国土安全保障省は「トランプ前大統領支持者による連邦議会議事堂襲撃事件が一部の暴力的過激主義者を勢いづかせた可能性がある」と発表し、国家テロ諮問システム速報を発令。暴力的過激主義者の活動に対する警戒レベルを2021年1月27日から2021年4月30日まで引き上げるとしました。

National Terrorism Advisory System Bulletin - January 27, 2021 | Homeland Security
https://www.dhs.gov/ntas/advisory/national-terrorism-advisory-system-bulletin-january-27-2021

この暴力的過激主義者と目されているのが、白人至上主義やオルタナ右翼、ネオナチなどです。オンラインにおける過激派の活動に関する専門家であるイーロン大学コンピューターサイエンス科のミーガン・スクワイア教授によると、こうした過激派は若年層を取り込むために、「ゲーム配信」を利用するようになっているとのこと。

オルタナ右翼の旗手と呼ばれているパトリック・ケーシー氏は、TwitchやDLiveといった配信サービス上でマインクラフトのゲーム実況を行っており、配信終了後にファンと交流しながらニュース番組のような形式で自身の主張を盛り込んだ政治解説を行っているそうです。

過激主義者にリーチするための「入り口」として用いられている配信サービス各社も対策を講じています。Twitchは「ヘイト関連行為を完全に否認します」とし、種・民族・肌色・カースト・国籍・移民・宗教・性別・ジェンダー・性同一性・性指向・障害・重篤な疾患そして退役軍人といった保護特性に基づく、差別、中傷、嫌がらせ、暴力等を助長または奨励するコンテンツやアクティビティなどに措置を講じると明記するだけでなく、報道各社に「白人至上主義などをサポートするコンテンツを特に禁止している」と通達しています。

BitTorrentが運営するDLiveはこれまで過激派に対して寛容なポリシーを設けていたことから「過激派の温床」と呼ばれてきましたが、連邦議会議事堂襲撃事件などを受け方針を転換。前述のケーシー氏などをBANし、過激派排除にかじを切っているとのこと。

ネオナチ・白人至上主義系ウェブサイトの中でも大手とされるDaily Stormerがラジオ番組で「11歳の若者を想定したサイトデザインにしている」と回答したように、過激派コミュニティはおのおのの戦略を持って若年層の取り組みを行っています。

ネオナチがスキンヘッドなどのスタイルでパンクロック好きの若者にアピールしていたように、「若年層を取り込む」という戦略は珍しいものではありません。こうした戦略について、ネット上のいじめや差別の問題に関する学習教材を作成するAnti-Defamation Leagueのジニー・シュピーグラー氏は「過激派とつながることに対する罰則は問題を解決しません」と言及。若者が所属するグループで何が起こっているかを本当に理解しない限りは罰則が逆効果になり得ると説明し、オープンなコミュニケーションによって若者を理解することが先決だと語りました。