生き物

「UVライトを照射するとネオングリーンに光るヤモリ」が持つ独特の仕組みとは?

by David Prötzel

暗闇で光る動物といえばホタルなどが有名ですが、近年ではタスマニアデビルカモノハシなどでも紫外線を照射すると光ることが確認されています。2021年1月11日に学術誌のScientific Reportsに掲載された「紫外線(UV)ライトを照射するとネオングリーンに光るヤモリ」に関する論文で、ヤモリが光る独特の仕組みについて報告されました。

Neon-green fluorescence in the desert gecko Pachydactylus rangei caused by iridophores | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-79706-z

Moonlight makes desert geckos glow neon green | Live Science
https://www.livescience.com/gecko-fluorescent-green-glow.html

今回の論文で取り上げられているのは、アフリカ大陸の南西部に位置するナミブ砂漠に生息するPachydactylus rangei(Namib web-footed gecko/ミズカキヤモリ)という体長10~15cmほどのヤモリです。ミズカキヤモリの上面の表皮には薄茶色の斑点がちりばめられ、その名の通り足に水かきを持っています。砂漠に住むミズカキヤモリがかき出すのは水ではなく砂だそうで、昼間は巣穴の奥深くに潜んで夜に地表を歩く昆虫を捕食するとのこと。

通常の照明下で撮影されたミズカキヤモリの写真がこれ。側面の下半分や大きな目の周囲には色の違う模様があるのがわかります。

by David Prötzel

論文の筆頭著者でありバイエルン州立動物学博物館に所属するDavid Prötzel氏は、ミズカキヤモリにUVライトを照射するとネオングリーンに光ることを発見し、「信じられないほど驚いた」とのこと。その後、Prötzel氏らの研究チームはミズカキヤモリのオスとメスの両方で、UVライトを照射するとネオングリーンに光ることを確認したそうです。

実際にミズカキヤモリにUVライトを照射すると、このように腹部や目の周囲がネオングリーン色に光ります。

by David Prötzel

透明の板の上にミズカキヤモリをのせて下から見るとこんな感じ。なお、ミズカキヤモリの光は体に浴びた光を吸収し、それからより長い波長で放出する「生物蛍光」と呼ばれる種類のもの。生物の体内で化学エネルギーを光エネルギーに変換して光る「生物発光」とは違います。

by David Prötzel

UVライトなどに照らされることで光る「生物蛍光」を有する動物の研究は、近年になって急速に進んでいます。たとえばBoana punctata(Polka-dot tree frog)などの両生類ではリンパ系を循環する化学物質により生物発光しているほか、一部のカメレオンコガネガエルなどは「蛍光性の骨」の光が皮膚の薄い部分を通って見えるとのこと。

しかし研究チームがミズカキヤモリの蛍光の仕組みについて調査したところ、ミズカキヤモリは分泌する化学物質や骨ではなく、イリドフォア(虹色素胞)と呼ばれる色素細胞の一種が蛍光を生み出していることがわかりました。ミズカキヤモリは2種類の虹色素胞を有しており、そのうち1つが蛍光を発するそうです。

虹色素胞には核酸を構成する塩基の1つ・グアニンの結晶が並んでおり、魚の光沢や鮮やかな青色を生み出しているほか、カメレオンの体色変化にも関わっていることが知られています。以前からいくつかの魚が虹色素胞を用いて蛍光を発する例は確認されていましたが、ヤモリのような陸上の脊椎動物が虹色素胞を用いて蛍光を発するのはミズカキヤモリが初の事例です。

ミズカキヤモリの蛍光はカメレオンの蛍光よりも強く、陸上動物における蛍光の中で最も明るいものの1つだと研究チームは指摘。実際にミズカキヤモリが自然界で発する蛍光は、UVライトではなく月のわずかな光を利用したものとなりますが、見晴らしのいいナミブ砂漠では実際にミズカキヤモリの蛍光が見える可能性があるとのこと。一方、ミズカキヤモリの蛍光部分は腹の側面や目の周囲であり、視点が高いフクロウやジャッカルといった捕食者からは見えにくくなっていることから、研究チームはミズカキヤモリの蛍光に生物学的な意義があると考えています。

研究チームによると、個体の密度が低い環境で生息するミズカキヤモリが互いに連絡を取るために、暗い夜でも目立つ蛍光を利用している可能性があるとのこと。論文の共著者であるMark Scherz氏は、「私たちは飼育下で、短い分離期間の後にミズカキヤモリが互いに駆け寄ってあいさつするのを観察しました。彼らはまた、お互いの体から結露をなめます。従って、長距離からお互いを見つけられることが、ミズカキヤモリにとって有用である多くの理由があります」と述べました。

by David Prötzel

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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