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脳が混乱する「錯視映像オブ・ザ・イヤー」の2020年受賞作品が発表される、大賞には日本人が輝く


脳が混乱してしまいそうになる錯視映像トップ10を選出する「The Best Illusion of the Year」の2020年度の結果が発表されました。大賞には錯視研究の第一人者とも呼び名が高い明治大学研究・知財戦略機構の杉原厚吉研究特別教授の「立体版シュレーダー階段図形」が輝いています。

2020 Finalists | Best Illusion of the Year Contest
http://illusionoftheyear.com/cat/top-10-finalists/2020/

◆第1位:立体版シュレーダー階段図形
大賞に輝いた杉浦厚吉教授の作品は、錯視の古典的例として知られる「シュレーダーの階段図形」を立体化したという「見る角度によって上下が変わる」という不思議な階段です。映像が以下。

3D Schröder Staircase - YouTube


これが錯視の古典的例である「シュレーダーの階段図形」です。


シュレーダーの階段図形は、「左側から右側に続く階段」と「その階段が逆向きになったもの」に同時に見えるという錯視です。ムービーではシュレーダーの階段図形をぐるっとひっくり返す様子が映し出されており、「階段をひっくり返したんだから、上下逆さまの階段に見える…… いや、やっぱり元の階段と同じものにも見える」という不思議な感覚が味わえます。


そして、これがシュレーダーの階段図形を立体化したという杉浦厚吉教授の「立体版シュレーダー階段図形」。以下の状態では、「階上側」に赤いコーンが置かれているように見えます。


しかし、グルッと180度回転させると……


今度は「階下側」に赤いコーンが置かれているように見えます。


この不思議な錯覚が生まれる理由は階段の形状と模様にあります。ムービーの最後ではネタばらしが行われており、立体版シュレーダー階段図形は実際には階段ではなく、橋のような形状で、階段のように見えていたのは、表面の模様が原因であることがわかります。


杉原厚吉教授は数理工学、計算機科学を専門としており、一般的なグラフィックスの数学の他にも、だまし絵や錯視などのグラフィックスの数理による研究を多数発表している人物。杉原厚吉教授自身による「立体版シュレーダー階段図形」の作品解説は、以下から読むことが可能。さらに、自分で「立体版シュレーダー階段図形」を作れる(PDF)紙工作用展開図も掲載されています。

Kokichi Sugihara's Homepage (Japanese)
http://www.isc.meiji.ac.jp/~kokichis/contest/contest2020/contest2020j.html


◆第2位:本物?の鏡
2位にランクインしたのは、イギリスのサイエンスマジシャンであるマット・プリチャード氏の「The Real Thing」。一枚の「鏡」の前で行われるイリュージョンのあっと驚く展開は、まさしく必見といえる出来栄え。

The Real Thing - YouTube


◆第3位:不可能な格子状のタイポグラフィー
オランダのグラフィックデザイナー、ダニエル・マーレベルド氏のウネウネと動く格子状の3D文字をテーマにした「Impossible grid typography」が3位。格子状の3D文字が動く様子をジッと見ていると、文字の材質が硬いのか柔らかいのか、文字が回転している方向はどちらなのか、どちらが上下なのかがわからなくなっていくという作品です。

Impossible grid typography - YouTube


◆第4位:てんとう虫の着陸
マーク・ウェクスラー氏、パトリック・カヴァナ氏、スチュアート・アンスティス氏の3名が共同で発表した「Landloping ladybugs: Frame-induced position shift」が4位。2匹のてんとう虫は同じ位置で点滅しているだけですが、背景の枠組みが左右に揺れ動くことによって、てんとう虫の位置も左右に移動しているかのように見えるという錯視作品です。

Landloping ladybugs Frame induced position shift - YouTube


◆第5位:太陽光のイリュージョン
リングのような多角形が幾重にも重なった図形の「The Sunray Illusion」が5位。作者はニューヨーク大学のミカエル・カルロヴィッチ氏とパスカル・ウォリッシュ氏です。

The Sunray Illusion - YouTube


この図形を見つめていると見えてくる「中心部から放たれる光」は、実際には存在しません。カルロヴィッチ氏らは「この図形は交点が多く、よく整列しているため、我々の脳は点と点をつないで光線を生み出します。この錯覚は、我々の脳が提示された情報をもっともらしく思えるように解釈するという傾向の一例です」と語っています。

◆第6位:X線の手
6位にはまたしても日本人の作品がランクイン。名古屋市立大学芸術工学部・大学院芸術工学研究科の小鷹研究室今井健人氏、小鷹研理氏の「XRAYSCOPE」は、「手の中に埋め込まれたペン」を見せるという摩訶不思議な錯覚。XRAYSCOPEは、四年生の今井氏の卒業研究の成果の一つです。

XRAYSCOPE - YouTube


なお、コンテストへの投稿後にはXRAYSCOPEの「改良版」を生み出したとのことで、小鷹研究室の公式Twitterでは改良版のデモを見ることができます。

なお、先日の展示で発表したように、このコンテストへの投稿後の数ヶ月で、「XRAYSCOPE」は、UNITY、VIVE TRACKERなどのメディア技術を駆使して、こんなシステムに変貌を遂げています。ただ、コンテスト動画でやっているようなスマホの光を使った場合でも、体験の本質は全く揺らぎません。 pic.twitter.com/QTD5VM9HnN

— 「」kenrikodaka (@kenrikodaka)


◆第7位:字幕スーパー錯視
7位はまたしても日本人が獲得。愛知県五条高校の新正司氏の作品である「Subtitles Illusion」は、映像上の「字幕」をテーマにしており、速く動いている字幕は手前側に、遅く動いている字幕は奥側に見えるというもの。なお、映像自体には特に意味はないそうです。

Subtitles Illusion - YouTube


◆第8位:透明なナイフ
ノースダコタ州立大学のブレイズ・バラス氏とベンジャミンフランクリン中学校のベンジャミン・バラス氏の兄弟が作り上げた「Transparent Knife Illusion」。ナイフをフォークの間に差し込むというシンプルなものですが、差し込まれたナイフがまるで透けているかのように見えるようになっています。

Transparent Knife Illusion - YouTube


◆第9位:タピオカの感触
慶應義塾大学に所属するニシイアヤ氏、オオノマサキ氏、仲谷正史准教授は「触覚」をテーマにした映像で9位を獲得。画用紙に直径1cmの穴を開けて、その穴に両側から指を差し込むと「タピオカの感触」がするというもので、画用紙ではなく紙状のプラスチックを使ったり、開ける穴のサイズを変えたりすることで、さまざまな感触が楽しめるそうです。

The Tapioca Tactile Illusion - YouTube


◆第10位:ぼやけた雲
10位は、絵画から切り抜いたパーツを複製して並べると、白い部分に「ぼやけた雲」が見えるという錯視。存在しない情報を周りから補ってしまうという脳の「補完」機能を利用した、フロリダ・アトランティック大学のスミス・ケトルウェル視覚研究所のラッセル・D・ハマー氏とロンドン大学シティ校のクリストファー・W・タイラー氏の作品です。

Illusory ‘Misty’ Contours - YouTube


なお、2019年度の受賞作品は以下の記事で見ることができます。

脳が混乱してしまいそうになる錯視映像トップ10が発表される、日本からも3作品がランクイン - GIGAZINE

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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