ベジタリアンをやめて分かった「4つの教訓」とは?


畜産業が大量の飼料作物を必要とすることや、ウシやヤギといった反すう動物の家畜は温室効果ガスであるメタンを発生させることなどから、「気候変動を食い止めるには肉や乳製品を食べるのをやめることが不可欠」だといわれています。一方、菜食主義者(ベジタリアン)はそうでない人に比べて、脳卒中のリスクが20%も高く精神的な問題を抱える可能性も高いなど、健康面でのリスクが高いのも事実です。実際に、3年間にわたり菜食主義を貫いた経験を持つ作家のアンバー・カールソン氏が、菜食主義の実践と肉食への転向から得られた教訓を4つにまとめています。

Lessons I Learned from Quitting Vegetarianism | by Amber Carlson | Wholistique | Nov, 2020 | Medium
https://medium.com/wholistique/lessons-i-learned-from-quitting-vegetarianism-1d27f0312272

カールソン氏が菜食主義に目覚めたのは、20代前半のこと。カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学院のマイケル・ポーラン教授の著作「雑食動物のジレンマ」を読んだカールソン氏は、畜産業の残酷さや工業的な食品生産システムの無駄の多さに嫌気が差して、肉を食べることに耐えられなくなってしまったそうです。

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こうして3年間ほど菜食主義を貫いたカールソン氏ですが、あることをきっかけに肉を食べることを余儀なくされました。そのきっかけとは、偏った食生活により体調不良に陥ってしまったことです。

菜食主義を続けることの難しさについて、カールソン氏は「本当のことを言うとお叱りを受けるかもしれませんが、ベジタリアンやビーガンとしてバランスのとれた食生活を送ることは本当に難しいことでした。生きるのに必要な栄養素を植物だけでまかなうのは、不可能ではないにせよ信じられないほど困難です」と述懐しています。

カールソン氏が、「植物から摂取するのが難しい栄養」の代表格として挙げているのが鉄分です。鉄分そのものは葉物野菜や豆類などにも比較的豊富に含まれていますが、植物性食品の鉄分は動物性食品に含まれるヘム鉄と呼ばれる鉄分に比べると吸収率が非常に低いため、十分な量を摂取するのが難しいとのこと。

このような栄養不足から体を壊してしまったカールソン氏は、悩んだ末に肉を口にしました。その時のことをカールソン氏は「肉を食べるようになってからは、すこぶる体調が良くなりました。まるで、何年も欠落していた栄養を、かけがえのない形で受け取っているような気さえしました。肉を食べるのは決して簡単な決断ではありませんでしたが、100%正しい判断でした」と話しました。


その上でカールソン氏は、菜食主義をやめた経験から得られた教訓を、次の4つにまとめました。

◆1:何を差し置いても自分の体に耳を傾けること
3年間ベジタリアンの生活に傾倒し、心情的には今でもベジタリアンに共感しているというカールソン氏ですが、今では肉を食べる生活を送っています。しかし、カールソン氏は自分を「脱落者」だとは思っていないとのこと。とりわけ食生活に関しては、1度はベジタリアンを実践した経験から「食事とは体に栄養を与え、元気づけるものでなければならない」ということに気がついたそうです。

そのことについて、カールソン氏は「ベジタリアンにせよ、ダイエットやそのほかのライフスタイルにせよ、何らかの生き方を実践している時に違和感を覚えたら、その体の声に耳を傾けるべきです。なぜなら、私は自分の体を自分のエゴの奴隷にはしたくはないからです」と述べています。


◆2:理想から外れた自分を許すこと
理想と現実の落差について、カールソン氏は「理想はクラクラするほど魅力的ですが、私たち自身は不完全であり、私たちの人生もまた不完全です。『どうあるべきか』という理想像を現実の世界に期待すると、私たちは常にがっかりさせられてしまうことになります」と話しています。

自分を「永遠の理想主義者」と呼ぶカールソン氏ですが、その一方でこれまで何度も挫折を経験してきました。今回、ベジタリアンの生活を貫徹することができなかったのも、挫折のうちの1つです。しかし、こうした挫折を経験したからこそ、「不完全さを抱えながらも、最善を尽くしていけば、いずれは自分を許し寛容な気持ちで受け入れることができる」ということを学べたと、カールソン氏は振り返りました。


◆3:自分に合っていると感じられる選択を信じること
ベジタリアンやビーガンとしての生き方を貫いている人の中には、肉を食べることを選択したカールソン氏を非難する人もいるそうですが、カールソン氏はそうした声を気にしていないとのこと。一方、カールソン氏が「耐えられない」と考えているのが、「他の人にどう思われるかを恐れて自分の選択を信じることができないという苦しみ」です。

カールソン氏は「ある人にとって何が正しいのかはあくまでその人の問題であり、他の誰かの問題ではありません。ですから、その人の生き方を決められるのは、その人自身以外にはいないのです」と述べています。

◆4:世界は白黒はっきりしているわけではないということ
カールソン氏が得た教訓の中で、最も重要なのが「肉を食べるかどうかはオール・オア・ナッシングな事柄ではない」ということです。肉を食べる生活を始めたカールソン氏ですが、毎食肉を食べているわけではなく、できるだけ良心に沿った食べ物を選び、肉を食べる時は必ず感謝の気持ちを心掛けるようにすることで、カールソン氏なりの正しい生き方を実践しています。


カールソン氏によると、ベジタリアンの中にはイメージを守るために隠れてこっそりと肉を食べる人もいるとのこと。「ベジタリアンの中で肉食がタブー視されていなければ、極端な教義に縛られることなく節度ある生き方を互いに許せるようになるのではないかと思います」とカールソン氏は述べました。

その上でカールソン氏は、「肉を一切口にしてはならない理由について話す代わりに、持続可能な方法で『雑食性』になる方法について話し合うようにする必要があると感じます。菜食主義運動がもっと穏健で開放的な方向に進化すれば、私たちが今よりもっと大きな影響を世界に与えられるようになるのは間違いないからです」と述べています。

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in , Posted by log1l_ks

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