蚊を自動検知してレーザーで滅却するRaspberry PIマシンが誕生

by Andrew "FastLizard4" Adams
蚊はマラリア・デング熱・ジカ熱などの病気を媒介する衛生害虫で、毎年全世界で殺人事件による死者の2倍に相当する70万人以上を死に至らしめています。そんな蚊をマシンビジョンと機械学習で検出し、レーザー照射で焼き殺すというRaspberry PIマシンが開発されました。
Raspberry PI for Kill Mosquitoes by Laser[v1] | Preprints
https://www.preprints.org/manuscript/202101.0412/v1
蚊を自動検出して焼き殺すマシンを生み出したのは、ロシア・南ウラル国立大学のIldar Rakhmatulin氏。同氏は蚊が毎年世界中で多くの死者を出している状況を打破するためには画期的な発明が必要だとして、「ディープラーニングによって蚊を見分けてレーザーを自動照射するマシン」の概念検証用の試作機を開発しました。
このマシンは、Raspberry Pi 3 MODEL Bを基盤とし、ソニーのIMX219イメージセンサを搭載した専用カメラモジュールやガルバノメーター(検流計)、1Wの高出力レーザーを搭載。

蚊を検出してからレーザーで滅却するまでの流れは、まずカメラによって取得された画像情報を機械学習で分析して蚊を検出し、さらにTrackerCSRT・TrackerKCF・TrackerBoosting・TrackerMIL・TrackerTLD・TrackerMedianFlow・TrackerMOSSなどの移動する物体を追い続けるトラッキング系APIによって追跡。そして一刻一刻変化する飛行中の蚊の軌道をディープラーニングで予測し、そして一刻一刻変化する飛行中の蚊の軌道をディープラーニングで予測してレーザーを照射するという仕組みです。

蚊の検出に用いられたのは、Convolution 2DとMaxPooling 2Dの畳み込みニューラルネットワーク。今回の実験においては、AMD Ryzen 5 3600とGEFORCE GTX 1060を搭載したGIGABYTE製ビデオカード、そしてメモリ6GBを搭載したマシンで機械学習が実行されましたが、このスペックでは画像から蚊を検出することは容易にできるものの、検出するまでに1秒以上かかるという問題があったとのこと。
また、検出精度にも問題があり、蚊が急激に進路変更した場合には以下の(d)のように補足に失敗するケースが確認されました。

今回作成された試作機は実際に透明ケースに捉えられた蚊を対象として試運転が行われています。この試運転では、15%の確率で蚊を無力化することに成功し、レーザーが着弾時に蚊が死ぬ確率は50%超でした。

今回のマシンには「カメラによる画像情報で蚊を識別する」という手法が用いられています。Rakhmatulin氏はこのほかにも「ソナーによる音波感知」「赤外線センサーによる温熱感知」を検討したものの、音波感知には開放空間ではノイズが混じって精度が下がるという問題点や蚊が複数匹いた場合に対応できないという問題点があり、温熱感知には蚊の体温は環境温度から大きく影響を受けるという問題点があるとして、今回は画像識別という手法を採用したと記しています。
Rakhmatulin氏によると、蚊をレーザー照射で退治するという手法は「風の強い野外でも使用できる」「広域をカバーできる射程を将来的に達成できる」「無人ドローンや人体に直接搭載することで移動時にも対応できる」といった利点があるため、Rakhmatulin氏は世界中で病気をばらまいている蚊の対策として将来的に有望だとしています。
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