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ファイザーの新型コロナワクチンは「物流の悪夢」との報道、その理由とは?


アメリカの製薬大手ファイザーが開発中の新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」は、2020年11月9日に「治験で90%を超える予防効果が見られた」と発表されたことから、新型コロナ対策として有望視されています。しかし、このワクチンを多くの人に届けるためには、特別な設備や体制を整えることが不可欠であることから、アメリカのニュースメディア・CBS Newsは「物流にとっての悪夢となる」と報じています。

Pfizer's COVID-19 vaccine distribution will be a "logistical nightmare" - CBS News
https://www.cbsnews.com/news/covid-vaccine-pfizer-distribution-logistical-nightmare/

ファイザーがバイオテクノロジー企業BioNTechと共同で開発した新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」は、アメリカや南米、南アフリカなどで実施された第III相試験において「90%を超える予防効果がある」と示されたことから、にわかに期待を集めています。

「90%超の予防効果がある新型コロナワクチン」をファイザーが開発したと発表 - GIGAZINE


そんな中、物流上の問題として急浮上しているのが、「BNT162b2はマイナス70度という超低温での保存が必要」という点です。この問題により、専門家の間では「人々に氷点下でワクチンを届けるには、超低温貯蔵に対応したトラックや貨物飛行機が絶対的に不足している」との懸念が広がっています。

こうした懸念に対応するため、ファイザーは冷却能力がないトラックでもBNT162b2を輸送できるように、ワクチンをドライアイスとともに完全に密閉して出荷可能な専用ケースを開発しました。しかし、これによって当座の問題が解決したとしても、実際に何億人もの人々にワクチンを投与しなければならない医療機関には依然として大きな課題が残されていると、CBS Newsは指摘しています。


専門家がワクチン輸送に伴う問題として指摘しているのは、以下の6点です。

・ファイザーの専用ケースは1日2回、1回あたり3分間までしか開けることができない。
・上記の温度維持基準を順守していても、有効な温度を保てるのは10日間だけ。もし輸送に4日間かかるとすると、医療機関に与えられる猶予はわずか6日間しかない。
・専用ケースに詰められているドライアイスは「危険物」とみなされているため、飛行機での輸送には制限がかかる。
・ケースとは別にファイザーが開発した輸送用コンテナは、ドライアイスを補充することが可能だが、特別な形状のドライアイスでなければならないため、補充には数百ドル(およそ数万円)のコストがかかる。そこまでしても、有効な期間は5日間しか延長されない。
・病院が超低温冷凍庫を導入していれば、ワクチンは最大6カ月保存可能だが、そのような冷凍庫を備えている医療機関は少ない。また、超低温冷凍庫の供給も不足している。
・BNT162b2は21日間隔で2回接種する必要があるため、十分な予防接種を行うには複雑な手順を踏まなくてはならない。


ファイザーの広報担当者はCBS Newsの取材に対して、「効果的なワクチンの輸送及び保管と、継続的な温度監視をサポートするための輸送計画とツールを開発しています」と回答していますが、詳細なワクチン配布計画の提示は拒否したとのこと。

また、冷蔵サプライチェーンを専門とするMD Logisticsの事業開発責任者であるEmily Gerbers氏は「ワクチンだけではなく、治療薬や抗体も輸送しなければなりません。パンデミックに際しサプライチェーンは成長しながら適応してきましたが、それでも冷蔵サプライチェーン業界がこのような要求に応えるのは困難です」とコメントしました。

ワクチンを直接医療機関に届けるのではなく、その前に集中型の冷凍倉庫に保管するという案も検討されています。しかし、商業用不動産サービスを手がけるJLLによると、BNT162b2を保管できるような冷蔵施設は輸送市場全体の2%しかカバーしていないとのこと。また、この分野には最近までほとんど注目が集まっていなかったため投資も行われておらず、既存の冷蔵施設の多くは空室率が5%未満しかないそうです。

JLLのMehtab Randhawa氏はCBS Newsの取材に対し、「パンデミックにより冷蔵サプライチェーンの需給は破綻しています。さらに、ファイザーのワクチンは非常に特殊な低温要件を必要としており、既に世間にあるものとは一致していません」とコメントしました。

また、医療機関向け購買代理商社のPremierで薬剤師を務めるSoumi Saha氏は「ワクチン輸送の課題は、特に地方にとっては物流の悪夢と言えます。このような課題に対応した経験がある人はどこにもいません。従って、ワクチンを適切に管理し配布するには、業界が一丸となって取り組む必要があります」と話しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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