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上司と良好な関係を築いている部下に見られる意外な「デメリット」とは?


一般的に、労働者が上司と良好な関係を築くことには多くのメリットがあると考えられており、組織や上司は部下との信頼関係を築くためにさまざまな手段を用います。ところが、新たな研究では「上司と良好な関係を築くことが、職務に関して非倫理的な行動をとる可能性を高める」ことが判明しました。

Frontiers | The Dark Side of Relational Leadership: Positive and Negative Reciprocity as Fundamental Drivers of Follower’s Intended Pro-leader and Pro-self Unethical Behavior | Psychology
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2020.01473/full

If you get on with your boss you're more likely to lie for them – new research
https://theconversation.com/if-you-get-on-with-your-boss-youre-more-likely-to-lie-for-them-new-research-147779


スイスに拠点を置くビジネススクールである国際経営開発研究所(IMD)やオランダのフローニンゲン大学の研究チームは、「上司との関係」と「職務に関する非倫理的な行動」の関係について調べるため、アメリカとヨーロッパで研究を実施しました。

一連の調査では、アメリカやヨーロッパに住む被験者を対象に、「架空の上司との関係性」を前提とした実験が行われました。研究チームは実験の最初に、被験者らを「上司と非常にうまくやっており、仕事だけでなく個人的な人間としても信頼関係を結んでいる」パターンと、「上司との仲が悪く、個人的な信頼関係はなく、職務上の関係しかない」パターンへランダムに割り当てました。被験者は研究チームが用意した「自分と上司がどのような関係であるのか」を記した文章を読み、架空の上司との関係を把握したとのこと。


さらに研究チームは被験者に対し、上司との関係について言及した複数の言葉について、自分がどれほど当てはまるのかを回答してもらいました。この言葉には「上司が私に好意を示した場合、私は好意を返すつもりです」「私はかつて自分を助けてくれた上司のためなら、自分が損をしてもいいと思っています」といった上司とのポジティブな関係についてのものや、「上司が私に過ちを犯させた場合、どれほどコストがかかろうと速やかに復讐します」「上司が私を厳し立場に追いやったなら、私は上司に同じことをします」などの上司とのネガティブな関係についてのものがあったそうです。

最後に被験者は割り当てられたシナリオに応じて、「上司の役に立つのであれば、上司の体面のためにうその報告をする」「上司の役に立つのであれば、上司に関する否定的な情報を隠す」といった上司のための非倫理的な行動や、「自分のためになる場合、自分を良く見せるためにうその報告をする」「自分のためになる場合、自分に関する否定的な情報を隠す」といった自分のための非倫理的な行動にどれほど同意するかを回答しました。


研究チームは一連の調査を通じて、従業員が「非倫理的な行動が上司の役に立つ」と考えている時、上司との信頼関係が強い場合はそうでない場合と比較して、非倫理的行動に従事する可能性が高いことを発見しました。

上司との信頼関係が非倫理的な行動につながる理由について研究チームは、「労働者が上司の献身に返礼する方法として、非倫理的な行動に従事した」と説明しています。たとえ上司が「自分に報いるために非倫理的な行為をすると期待している」と表明しなかったとしても、労働者は「誰かによいことをしてもらったらそれに応える」という規範に基づき、上司のために非倫理的な行動をしたとのこと。

これとは反対に、上司との信頼関係がよくない場合には、「自分のために」非倫理的な行動を行いやすいこともわかりました。上司との関係が悪い労働者は自分の上司を犠牲にしてでも、自分の助けとなる非倫理的な行動に従事する可能性が高くなると研究チームは指摘。この行為は、「上司に嫌なことをされた分、自分がいい思いをするべきだ」という感覚に基づくものだったそうです。

2010年の研究では、自分と所属する組織を強く同一視する従業員は、それが顧客の利益に反するものであっても、うそを伝えたり都合の悪い情報を隠したりする可能性が高いことが判明しています。この場合も、組織に報いる気持ちが非倫理的な行動のモチベーションになっています。


今回の結果は上司との強固な信頼関係が、従業員が非倫理的な行動に従事する可能性を高めると示しましたが、もちろん上司と従業員のポジティブな関係性にはメリットもあります。上司と良好な関係を築いている従業員は、仕事でよい業績を上げたり組織の仲間を助けたりする傾向が強いほか、心身の健康にプラスの効果が現れるとの研究結果も報告されています。

従って、上司は部下との強い信頼関係を築く一方で、部下が倫理的に行動するように対策を講じなくてはなりません。上司のためを思ってうそをついたり真実を隠したりすることは、上司や組織から評価されず、望まれてもいないことを明確にする必要があり、もし部下のそのような行動を目にしたらすぐに注意や制裁を行うべきだと研究チームは述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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