インタビュー

無料でPhotoshopの時短方法・デザインのコツ・SNSのバズらせ方など465セッションが受けたい放題な「Adobe MAX 2020」開催、中の人に開発秘話などいろいろ聞いてみた


Adobeは毎年クリエイターの祭典Adobe MAXをアメリカ・ロサンゼルスで開催していますが、2020年は新型コロナウイルスの影響で会場でのイベント開催ができなくなり、代わりにオンラインで日本時間の10月21日から23日の3日間にわたって実施されることになりました。これまでのAdobe MAXはイベント参加費が10万円以上だったのですが、オンライン開催ということで参加費が無料に。「作ること」に関するあらゆるセッションが行われるほか、新技術・新製品の発表もあるということで、AdobeのCPO(最高製品責任者)スコット・ベルスキー氏にあれこれ聞いてみました。

Adobe MAX 2020 | 10月20日~22日 世界同時オンライン開催
https://maxjapan.adobe.com/


Adobe MAX 2020に参加するにはまず、上記ページの右上にある「参加登録/ログイン」をクリック。


「登録/サインイン」をクリック。」


今回は既にAdobeアカウントを持っていたのでアカウント名とパスワードを入力して「Sign in」をクリック。


「Allow access」をクリックします。


すると、以下のようなダッシュボードが表示されました。「Open Catalog」を押します。


合計465セッションのリストがズラーッと表示されます。日本語のセッションは40以上あり、英語のセッションも日本語字幕表示を選ぶことが可能。


Adobe Photoshopについてのセッションは、初心者向けに使い方を解説した30分のセッションや……


Photoshopの自動化のコツや時間節約のテクニックを解説したセッション


Photoshopの隠れ技や高度なテクニックを伝授するセッションなど、さまざまなレベルのユーザーに向けたものがあります。


またAdobe製品から少し離れたところでは、フリーランスのデザイナーが「ぜひ次回も依頼させていただきます」と言われるにはどうすればいいのかを解説するセッションなどもあります。


あるいは企業で働く人が企画を通すためのガイドもあります。


またプロ・アマチュアを問わず使えそうな「TikTokフォロワー獲得のための効果的な戦略」というセッションも。これは実際に1000万フォロワーを持つフォトグラファーのAlex Stemplewski氏がフォロワー数増加に役立った内容を解説するもの。


「効率的かつ効果的なソーシャルメディアコンテンツの制作」という多くの人が知りたいであろうことを端的に表したセッションこのようにさまざまなセッションが開催される


「見る人が思わず手を止めるソーシャルメディア用コンテンツの作成」


またYouTuberやコンテンツ配信者に役立ちそうな「ワンランク上のインタビュー映像を作るためのヒント」というものもありました。インタビュー相手のリラックスさせ方や、見る人が興味を持つようなテクニックを、エミー賞受賞のドキュメンタリーディレクターであるChristine Steele氏が伝授します。


見たいセッションがあれば、各セッション左下の白いボタンを押すと、ボタンが青く変化し「Scheduled」と表示されます。


「My Schedule」を押すと……


以下のようにカレンダーが表示され……


ここに先ほどボタンを押したセッションが登録されていることを確認できました。自分だけのカレンダーを作ることで視聴したいセッションを見やすくまとめることが可能です。


……と、さまざまなセッションが開催されるAdobe MAX 2020ですが、それだけではなく、iPad版Illustratorのリリースや、Photoshopの新機能も発表されます。ということで、Creative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CPOのベルスキー氏に、オンラインインタビューで新機能や開発秘話などあれこれ聞いてきました。


Q:
iPad版Illustratorが2020年10月20日にリリースされますが、iPad版Illustratorの開発にあたって重視した点などあれば教えてください。

Adobe IllustratorがiPadに対応 | Adobe Illustrator
https://www.adobe.com/jp/products/illustrator/ipad.html


スコット・ベルスキー氏(以下、ベルスキー)
iPad版Illustratorは、Illustratorを頻繁に使うユーザーと連携し「ユーザーがiPadでの作業において必要としている点は何か」「iPad版でより簡単になる機能は何か」ということを重視して開発しました。この中で新たな発見も多くあり、デスクトップ版の改善にもつながっています。

Q:
iPad版Illustratorの登場でAdobeの主要ソフトウェアのモバイル移行が完了すると思いますが、今後はどういう分野を拡充していく予定でしょうか。

ベルスキー:
まず、私たちはデスクトップの製品をいわゆる「システム」だと捉えています。クリエイティビティはデスクトップに縛られるべきではないので、Adobeのソフトウェアはどこにいても利用可能で、かつ他人とのコラボレーションが容易なものでなければなりません。

昨年PhotoshopをiPad対応にしたことに続き、2020年には新たにIllustratorのiPad版を発表しました。私たちはMicrosoft Surfaceなどを含め、今後、他のテクノロジープラットフォームでの対応も考えています。ニーズがあるところに対応していきます。

Q:
FrescoにiPhone版が登場しましたが、iPad版だけでなくiPhone版も作ろうという判断が下されたのはなぜでしょうか。

Adobe Fresco | スケッチ & ペイントアプリ - iPadで水彩や油彩を描画
https://www.adobe.com/jp/products/fresco.html


ベルスキー:
クリエイティビティに関して言うと、映像ディレクターであっても写真家であっても、みんなそれぞれの「ストーリー」を持っています。そして、どんな時でもそのスタート地点は「スケッチ」であり、クリエイティブは、自分の見たもの、心に浮かんだものを形にして表現することから始まります。なので、創造力を高めるためには「手描きする」プロセスを必ず通ると私たち考えています。

Fresco iPad版は大きな成功をおさめ、世界中でパワフルなアプリケーションとして受け入れられています。調査によって、油彩・水彩といったブラシがユーザーにとって重要だということが判明しており、これと同時に多くのユーザーが手元にスマートフォンしかない時に浮かんだアイデアを何らかの方法でスケッチしているということもわかりました。ここから、スマートフォンに記録したアイデアを、iPad版あるいはデスクトップ版のPhotoshopで受け継いで作業できるようにするべきだと考えました。FrescoはPhotoshopというシステムの一部だからです。

Q:
2019年にスコット・プレポスト氏のインタビューでAdobeは「他の企業が持っていない『どうやって人が作品を作っているのか』という独特のデータからAIを訓練している」と聞きました。現在注力しているAdobeのAI活用分野の中で、「これはAdobe独特のデータの使い方だ」という部分があれば、教えてください。

ベルスキー:
新たにPhotoshopの新しい機能として「ニューラルフィルター」が発表されましたが、これはAIを利用して作られています。ニューラルフィルターは私たちのデータモデルを誰でも使えるようにするものです。これはクリエイティビティにとって、AIのブレークスルーの瞬間だと思います。

ニューラルフィルターについては、以下のページから読むことができます。

ニューラルフィルター
https://helpx.adobe.com/jp/photoshop/using/whats-new/2021.html#NeuralFilters


Photoshopで以下のように写真を開き、メニューから「フィルター」をクリック。


「ニューラルフィルター」を選択します。


ほほ笑みを浮かべている男性の顔を、さらに笑顔にしたり……


顔の向きを変えたり、ということがスライダーを動かすだけで可能になります。


また以下のように肌にニキビ跡などがある写真も……


スライダーを動かすだけで自動的になめらかな肌に加工できます。これまでは1つ1つ画像の中の要素を選択して時間をかけて加工していたことが、あっと言う間に完了するわけです。


ベルスキー:
私たちが持っている「独特なデータ」の中には、「写真家がどのようにして写真を良く見せているのか」ということも含まれます。多くのユーザーがデータを共有してくれるため、クリエイターがどのように合成や編集を行っているのかも私たちは理解しています。このような情報に基づいてAdobeがアルゴリズムを作ることで、これまで3時間かかってやっていたことを3分あるいは3秒で行えるようになるわけです。

Q:
Adobeのストック写真サービスAdobe Stockで新たに無料素材公開を始める背景について教えて欲しいです。プロ層のクリエーターだけでなく、週末クリエーターなどに対して敷居を低くするためなのでしょうか?

ベルスキー:
Adobe Stockは常にコレクションに写真や動画、オーディオ、3D素材、グラフィックを追加しており、非常に高い評判を集めています。

私たちは、プロではない方がPhotoshopでクリエイティブなプロセスを始める時に、真っ白なページではなく何らかのコンテンツから始めたがるということに気付きました。何らかの素材から編集を始める方が多いので、「コンテンツファースト・クリエイター」と呼ばれる新しい世代の人々にとっては、「何らかの素材がストックとして存在し、それが無料である」ということが重要であり、Adobeのお客様になる前に、そのようなツールで「遊んでもらう」ということが大切だと考えました。

またサービスの無料化を開始したもう1つの理由としては、Adobe Stockの戦略として、ユーザーがコンテンツを探して無料で使えるようにすることをきっかけにして、コレクション全体の価値を知ってもらうことがあります。


なお、Adobe Stockに搭載されている検索技術のすさまじさは以下の記事からも読むことができます。

「画像検索はここまで来たのか」とすさまじさを実感するAdobeのAI「Adobe Sensei」の秘密を開発者が解説 - GIGAZINE


また、Adobe MAX 2020でもスコット・プレポスト氏がAdobeの機械学習について語るセッションが開催されます。


Q:
PCでもMacでも、ARMアーキテクチャを使ったマシンが増える傾向にありますが、これまでAdobeのアプリはARMプロセッサーやApple Siliconデバイスに対応してきませんでした。今後、Adobeはこれにどう対応していくのでしょうか?

ベルスキー:
既に発表しているように、AdobeはMicrosoftとARM関係をサポートしていき、Apple Siliconとも密に連携していきます。これら新しいプラットフォームの対応は2021年に行われる予定です。最高のソフトウェアと最高のハードウェアがもたらす、これまでにないパフォーマンスの製品を、世界最高峰のクリエイターに届けられることを楽しみにしています。

Q:
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってAdobe、そしてユーザーに何か変化はありましたか?またパンデミック下で特に需要が高まったアプリがあれば教えてください。

ベルスキー:
あらゆる危機下には課題がありますが、それは、これまでとは違うことをやっていくチャンスだとも捉えられます。

この8カ月で世界中の人々の仕事のやり方が大きく変わり、コラボレーションをデジタル上で行うというニーズが増加しました。「新しいテクノロジーの利用は保留しよう」と考えていた人々が突然それらの技術を使い始めた……というのがクリエイティブの世界で今起こっていることです。


デジタルでは作業できないと考えていた人々がデジタルで作業を始め、Adobe Creative Cloudライブラリを使ってチームの人々とブラシやフォントなどを共有して作業することが増加してきました。また動画編集の人気も以前より増してきました。家族の動画を編集する個人的な利用もあれば、オンライン講座のようなものを撮影してライブストリーミングで配信する人からのニーズも増えてきています。このほか、クラウドドキュメントAdobe XDの共同編集なども、より使われるようになってきています。

なお、Adobe Max 2020では共同編集のコツなどを解説したセッションも開催されています。


Q:
パンデミックの中でオンラインでの情報の重要性が増し、コンテンツの信頼性確保が重視されるようになってきています。Adobeはこれに対してどのようなアプローチを取っていますか。

ベルスキー:
ユーザーが改ざんを検知できるようにする第一歩として、コンテンツを作成している人々が、IDをコンテンツに付属できるようにすべきだと思っています。これにより、SNSでコンテンツを見つけた人々が、コンテンツのソースをチェックし、改ざんを認識できるようにする情報が提供されます。この情報を基に消費者がコンテンツを信用できるかどうかを判断できるようになるわけです。

Twitterでは認証済みのアカウントにチェックマークがつきますが、このチェックマークが付くことで情報が「本人からのものである」と信頼できますよね。こういうコンセプトをメディアの世界にも持ち込もうと思っています。私たちが他社と協力して行っているContent Authenticity Initiativeは、このためのアプローチです。


Q:
Adobe製品はクリエイター向けツールセットとして不動の地位を築いていますが、近年はアマチュアとクリエイターの中間層にクリエイティブなユーザーが増えています。このような中間層にフィットさせるアイデアは何かありますか?

ベルスキー:
このことについては、私もよく考えます。解決策としてはまず、プロ向けではない製品を増やしています。Adobe SparkPhotoshop CameraAdobe Premiere Rushといった製品は、どちらかといえば「プロのようなコンテンツを作りたいが、何時間もトレーニングを受けていられない」という人向けです。こういった製品も非常に順調なので、需要があるのだと理解しています。

もう1つの点は、「製品のチュートリアルを増やす」そして「より洗練したインターフェースを製品に設ける」ことです。Premiere Proのプレリリースの際に新しいデザインを提供しました。これはPremiere Proを多くの人に使ってもらうための大きな一歩だと考えています。

またPhotoshopにはたくさんのチュートリアルがあります。このようなトレーニング動画があることで、ユーザーがPhotoshopをダウンロードし、ユーザーが短時間でPhotoshopを使えるようになり、成功体験を味わってほしいと考えています。

Photoshopチュートリアル | Photoshopの使い方
https://helpx.adobe.com/jp/photoshop/tutorials.html


Q:
iPad版Photoshopの登場でユーザー層に何か変化はありましたか?

ベルスキー:
iPad版Photoshopを発表した時のユーザーの反応は2つに分かれました。あるユーザーは「デスクトップ版Photoshopは扱いが難しすぎるので、インターフェースがシンプルなiPad版が出てうれしい」と発表直後から好意的に受け止めてくれました。それとは逆に、長い間デスクトップ版Photoshopを使っている人の中には「これが足りない、あれも足りない」という反応を示す人もいました。こうしたお客様の要望にも耳を傾けて、要望の大きいものには優先順位をつけて開発し、iPad上で提供できるようにしました。

デスクトップ版のPhotoshop自体も30年の歴史をかけて成長してきました。これと同様にiPad版Photoshopも成長していく必要があり、今年だけでもかなりの進展があります。

Q:
ARなど、まだ評価が定まらない分野への投資や開発計画をどう考えていますか?

ベルスキー:
インキュベーションの領域で投資が増えています。特に3Dや没入型体験への取り組みが増えていますね。3Dオブジェクトにテクスチャを貼り付けるSubstanceはゲーム業界で広く使われており、ARや3Dの世界では必須のツールです。また3Dオブジェクトの作成に使うAdobe DimensionやARのシーンを作成するAdobe Aeroなどのツールセット作成にも力を入れており、将来の3D作品の現場をサポートしていきたいと考えています。私はグラフィックからモバイル、そして3Dに移行するということを確信しており、お客様がそこで成功できるようにしなければなりません。

Q:
新たな技術について多く発表がありましたが、GoogleでPixel開発を行っていたMarc Levoy氏が関わった部分はありますか?

Pixelカメラの「頭脳」がAdobeで「ユニバーサルカメラ」の開発へ - GIGAZINE


ベルスキー:
Markが私たちのもとにやって来て数カ月ですが、本当に、世界のエクスパートのすごさを実感しています。Markはコンピューテーショナル・フォトグラフィーに造形があり、デジタルフォトグラフィーの未来について我々のチームと協力しています。LightroomやPhotoshop、Photoshopカメラなどのチームと取り組み、私たちのロードマップに既に影響が出ています。これからMarkが関与していろいろなことが起きると思うので、ぜひ注目してください。

なお、Adobe MAX 2020には以下から参加可能となっています。

Adobe MAX 2020 | 10月20日~22日 世界同時オンライン開催
https://maxjapan.adobe.com/

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in レビュー,   インタビュー, Posted by logq_fa

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