サイエンス

Google親会社が推進する農業ロボット開発プロジェクト「Mineral」


自動運転技術を開発するWaymoなど、野心的なプロジェクトを次々と立ち上げてきたのがGoogleの秘密研究機関である「Google X」です。Google Xは記事作成時点ではGoogleの親会社であるAlphabetの傘下企業となり、名称もXに変更されています。このXが農業ロボットを使った「Mineral」と呼ばれるプロジェクトを推進しています。

Mineral - X, the Moonshot Factory
https://x.company/projects/mineral/


Alphabet’s latest X project is a crop-sniffing plant buggy - The Verge
https://www.theverge.com/2020/10/12/21513353/alphabet-google-x-lab-moonshot-computational-agriculture-mineral-revealed

「Mineral」のプロジェクトリーダーを務めるエリオット・グラント氏は、「Mineralは人工知能(AI)やシミュレーション、センサー、ロボット工学などを用い、さまざまなソフトウェア・ハードウェアのプロトタイプ開発やテストを行いながら、大規模で持続可能な食料生産と農業に焦点を当てたプロジェクトです」と説明しています。Mineralは「増加し続ける地球の人口を養うために、世界の農業は気候変動などの我々の作物の生産性を低下させる事情に対して、次の50年間でこれまでの1万年間よりも熱心に取り組んでいく必要があります」と、農業の生産性を向上させるためのプロジェクトの重要性についても言及されています。

Mineralの活動は、世界中の農家が直面している課題を知るところからスタートしています。初期の調査対象となったのは、アルゼンチンの大豆農家やニュージーランドのキウイフルーツ生産者までさまざま。調査の結果、気候変動に直面しても回復力があり生産性の高い品種を見つけるためには、生物多様性に富んだ植物について、より多くの情報を迅速に収集する必要があることが判明したそうです。世界中の農家は毎シーズン何百もの決断を迫られていますが、既存のツールだけでは直面する課題に正しく対応しきることは難しいという話も出てきたそうです。「既存のツール」には各種センサー類やスプレッドシート、GPSなどのデジタルツールも含まれているそうで、それらを用いても農業の複雑さを十分に解析しきることはできない模様。


そこで、Mineralはこれまで複雑すぎたり役に立たなかったりした多様な情報源をまとめるための新しいソフトウェアおよびハードウェアを構築しています。グラント氏はMineralの活動について、「顕微鏡が病気の検出と管理方法に変化をもたらしたように、より良いツールが農業界が食糧の栽培方法を変えることにつながることを願っています。ここ数年、我々のチームでは農家やブリーダー、農学者、科学者といった人々と、さまざまな種類のハードウェア・ソフトウェア・センサーを用いた情報収集および分析をする、計算農業用のツールを開発してきました」と語っています。

Mineralが開発した最初のツールは「植物バギー」と呼ばれるものです。植物バギーにはカメラやセンサーが搭載されており、作物・土壌・その他の環境要因を調査・分析するための情報を収集することができます。プロジェクトチームは植物バギーで収集したデータを衛星写真や気象データと組み合わせ、機械学習やその他のAIトレーニング手法と掛け合わせることで「植物がどのように成長するか」を予測するためのモデルを作成します。プロジェクトチームはイリノイ州の大豆やカリフォルニア州のイチゴを研究するために、すでに植物バギーのプロトタイプを使用しているとのこと。


植物バギーはカリフォルニア州のイチゴ畑やイリノイ州の大豆畑などで、植物や果物の高画質写真を撮影してきました。植物バギーが分析してきたのはイチゴや大豆だけでなく、メロンやレタス、オーツ麦などさまざまで、写真を撮影するだけでなく品種を分類したり、数を計測することも可能です。

グラント氏によると、Mineralは農家や専門家たちと協力し、実用的で現実世界のメリットになるようなソリューションを考案していく予定とのこと。グラント氏はMineralの最終的な目標を、「すべての植物を監視し、必要な栄養を正確に与えることができるとすればどうでしょう?また、作物収量に関する遺伝的・環境的要因を解明することができたらどうでしょうか?」と語っています。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   サイエンス, Posted by logu_ii

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