Amazonが組合監視システムの導入を進めていたことが内部文書により判明

Amazonの従業員が組織している労働組合を監視するシステム「GeoSPatial Operating Console(SPOC)」の存在が、同社の内部文書により明らかになったと報じられています。

Leaked Amazon internal memo reveals new software to track unions - Vox
https://www.vox.com/recode/2020/10/6/21502639/amazon-union-busting-tracking-memo-spoc

Amazon Tracks Unions With geoSPatial Operating Console - ValueWalk
https://www.valuewalk.com/2020/10/amazon-tracks-unions-geospatial-operating-console/

海外ニュースメディアのVoxは 2020年10月6日に、「我々が入手したAmazonの内部的な機密文書により、同社が組合の動きを追跡して対抗するためのテクノロジーに多額の投資を行っていることが判明しました」と報じて、労働組合を監視するシステムの存在がリークされたことを明かしました。

Voxが入手した2020年2月付けの文書には、Amazonが多額の費用を投じて世界中の組合のデータを分析し可視化する計画が、犯罪や気候などへの「脅威」への対処と同列に記載されていました。また、文書に含まれていた40件のデータセットの約半分が、組合や強制的な残業、職務上の事故などの問題に関連したものだったとのこと。内部文書は、Amazonがこうした脅威に対応するため、人事部やグローバル・インテリジェンス・ユニットなどが保有するデータを統合し、視覚的にマッピングするソフトウェアの導入に必要な予算や人員を要求する内容のものでした。

また、内部文書は監視システム・SPOCが40件のデータセットの可視化に役立つと評価。こうしたデータセットには、「ホールフーズ・マーケットの活動や組合化の取り組み」「組合助成金の流れのパターン」「地方組合支部と代替労働グループの存在」など、組合に関するものが多く含まれていたとのことです。

かねてから、Amazonと組合の対立は度々表面化しており、2018年にはAmazonがホールフーズのチームリーダーに「反労働組合」的なトレーニングムービーを送っていたことが判明しています。

Amazonが「反労働組合」的なトレーニング動画をWhole Foodsのチームリーダーに送っていたと報じられる - GIGAZINE

また2020年9月には、Amazonが採用ページで労働組合の組織化を監視する人員を募集していたことが取り沙汰されました。

Amazon、労組の組織化を妨害か　監視人材を一時募集　（写真=ロイター）　:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63329250S0A900C2000000/

匿名を条件にVoxの取材に応えたAmazonの元上級人事マネージャーは、SPOCについて「私の意見では、これは間違いなく組合を忌避する戦略の一部です。このツールを使用すれば、組合の財政力を推測したり、組合のキャンペーンが団体交渉に結び付いた成功率などを推測したりすることが可能になるでしょう」と話しました。

また、小売業界の労働組合であるRetail, Wholesale and Department Store Union(RWDSU)のスチュアート・アッペルバウム代表は、SPOCの報道を受け声明を10月6日に発表。その中でアッペルバウム氏は、「本日のリーク報道は、これまで長い間Amazonが行ってきたであろうデータマイニングを改めて白日の下にさらしたものであり、考え得るあらゆるレベルにおいて不穏なものです。この国では、労働者は権利を持っています。Amazonであれ他の企業であれ、労働者をスパイしてその権利の行使を妨げることは許されません」と述べています。

一方、Amazonの広報担当者であるジェイシー・アンダーソン氏は、「我々は、従業員が報復や脅迫、嫌がらせを恐れることなく、自分が選んだ労働組合やそのほかの合法的な組織に加入すること、または加入しないことを選択するという従業員の権利を尊重しています」との声明を発表しています。