サイエンス

無限に電力を生成できる可能性がある回路が開発される


アーカンソー大学の研究チームが、高い熱伝導率を持つ炭素を結合させた物質・グラフェンを使い、環境に害の少ないクリーンなエネルギーを無限に生成できる可能性を秘めた回路を発明しました。

Phys. Rev. E 102, 042101 (2020) - Fluctuation-induced current from freestanding graphene
https://journals.aps.org/pre/abstract/10.1103/PhysRevE.102.042101

Physicists Build Circuit That Generates Clean, Limitless Power From Graphene | University of Arkansas
https://news.uark.edu/articles/54830/physicists-build-circuit-that-generates-clean-limitless-power-from-graphene

物理学教授のポール・ティバド氏率いる研究チームは、2020年10月2日にグラフェンの熱運動を電流に変換可能な回路の開発に成功したと報告しました。以下の画像が実際に制作された回路です。


ティバド氏らの研究チームは、室温でグラフェンの熱運動が回路に交流電流(AC)を誘発することを発見。この発見と、1950年にフランスの物理学者であるレオン・ニコラ・ブリルアンが発表した「電流を一定方向にしか流さない作用を持つダイオードを回路に追加することで、液体・気体中の微粒子が不規則に運動する現象であるブラウン運動からエネルギーを得ることができる」という論文の理論を応用することで、回路を構築しました。

ティハド氏らは、グラフェンから発生するACを直流電流(DC)に変換するダイオードを回路に搭載し、ダイオードによって電流が双方向に流れるよう回路を設計しました。回路上で負荷抵抗に作用するパルスDC電流が発生することで電力が生成され、エネルギーが生み出されています。さらに、ティハド氏らが設計した回路では、ダイオードで電流の方向を切り替えることで、供給される電力量が減少するのではなく増加するように設計されています。

ティバド氏は「グラフェンをベースにしたエネルギーハーベスティング回路を組み込むことで、小型デバイスやセンサーにクリーンかつ無限の低電圧電力を提供することができる可能性があります」とコメントしています。


なお、グラフェンの熱運動を電流に変換できるという発見はかつて不可能と考えられていた現象であり、ティバド氏らの発見は物理学者であるリチャード・ファインマンの主張に反するものでもあったことから、一部の研究者の間では物議を醸しているとのこと。

ティバド氏らの研究チームは次の目標として「回路をより小型化すること」を挙げており、すでに研究はスタートしています。回路の小型化に成功し、1×1mmのチップ上に回路を何百万個も搭載できるようになれば、新たな低電力バッテリーとしての活用が可能となります。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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