生き物

人間と動物を掛け合わせたキメラの研究は「大多数から支持されている」という調査結果


人間と、人間ではない動物を組み合わせた新たな生物「キメラ」を作る実験は、倫理的な観点から「実施されるべきではない」という主張が根強く存在します。しかし、ミネソタ大学によって行われた調査により「キメラ研究の実施は大多数の人々に支持されている」という結果が明らかになりました。

The American Public Is Ready to Accept Human-Animal Chimera Research: Stem Cell Reports
https://www.cell.com/stem-cell-reports/fulltext/S2213-6711(20)30374-X

Americans Overwhelmingly Support Human-Animal Chimera Research, Survey Finds
https://www.vice.com/en/article/akzxga/americans-overwhelmingly-support-human-animal-chimera-research-survey-finds

キメラとは、種類が異なる動物のと細胞を組み合わせることで、1つの個体に異なる遺伝情報を持たせた生物のこと。実際にニワトリとウズラのキメラが生み出されるなど、成功例も複数存在します。キメラの研究は倫理面の問題から、一部の人々が研究の中止を求めるケースも少なくありませんが、「人間の移植用臓器を生み出す供給源となる可能性がある」という点では有望視されている研究分野です。

豚や羊の中で人間の臓器を作る「キメラ技術」とは? - GIGAZINE


賛否両論あるキメラ研究ですが、少なくともアメリカでは「8割近くの人々に支持されている」とミネソタ大学の研究チームが発表しています。

研究チームが行った調査では、まず430人のアンケート調査参加者に第1の質問「膵臓がない遺伝子組み換えブタの胚に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を注入することが受け入れられるかどうか」を尋ねました。続いて、第1の質問に「はい」と答えた人に「人間の膵臓を持ったブタを生み出すために、第1の質問で作成した胚をメスのブタの子宮内に挿入してもよいかどうか」という第2の質問をします。第1・第2の質問とも「はい」と答えた人に「ブタの体内に生み出された人間の膵臓を、実際に人に移植してもよいかどうか」を尋ねました。

結果、参加者の約59%が3つの質問すべてに「はい」と答え、約82%が第1の質問に「はい」と答えたと調査チームは報告しています。「私たちは、アメリカ国民の80%以上がキメラ研究における一部の側面を受け入れていることを明らかにしました。私にとって、この結果は最も興味深い発見です。なぜなら、過去には幹細胞研究の一部の分野において、アメリカの国民や代表者は研究者が研究を実施することさえ許していなかったからです」とミネソタ大学の法学部教授、フランシス・シェン氏は語りました。


アメリカではキメラ研究自体は違法ではありませんが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は2015年からキメラ研究への資金提供を一時停止しています。そのため、キメラ研究の分野は国際的な共同研究を除いて積極的に実施されていません。シェン氏は、NIHが資金提供を一時停止していることに対し、研究を遅延させる「モラトリアムのような政策」であると非難しました。

シェン氏は、「キメラ研究を受け入れる人が多いということは、研究分野が比較的新しく、まだ政治化されていないという事実を物語っています。キメラ研究が国民に支持されている今こそ、キメラ研究を取り巻くNIHのモラトリアムな政策を再考すべきでしょう。キメラ研究の議論に世論を反映すべきです。国民の大部分がキメラ研究を進めることに興味を持っているのに、NIHは『なぜ強力なモラトリアムを実施しているのか』を説明する必要があると思います」と主張しています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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