ハードウェア

国際宇宙ステーションのアマチュア無線「ARISS」のシステムが20年ぶりに更新される


国際宇宙ステーション(ISS)設置のアマチュア無線機を用いて、宇宙飛行士が地球上のアマチュア無線家や学校の生徒などと交信を行うプロジェクト「ARISS」で使用されている無線システムが、20年ぶりに新世代の機種に更新されました。

September 2, 2020 - ARISS
https://www.ariss.org/press-releases/september-2-2020

New Ham Radio Onboard The ISS Is On The Air - K0LWC
http://k0lwc.com/new-ham-radio-onboard-the-iss-is-on-the-air/

当社製アマチュア無線機の国際宇宙ステーションへの搭載が決定 | 株式会社JVCケンウッド
https://www.jvckenwood.com/jp/press/2020/03/press_200313_1.html

皆さま、お待たせいたしました!
昨日アマチュア無線機TM-D710GAが無事に #ISS 欧州実験棟Columbus内に設置され、これをクロスバンドレピーターモードに設定し、ARISSメンバーがイタリアとベルギー間で交信成功したとの連絡が入りました\(^o^)/

ARISSのFacebook:https://t.co/oJUBow1HYF https://t.co/li1vEl3fka pic.twitter.com/tC9oWrDYCm

— KENWOOD elec (Japan) (@KENWOOD_elec_jp)


ARISSはISSに駐在する宇宙飛行士によるアマチュア無線プロジェクトで、アマチュア無線家との交信や「スクールコンタクト」と呼ばれる学校の生徒との交信が行われてきました。日本国内でも2001年からスクールコンタクトが行われており、記事作成時点では99件のスクールコンタクトが成功しています。

福井県福井市の森田中学校で中学生たちが国際宇宙ステーションと交信に成功 | 2020_News
https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/News2020/2020_news-2.htm#0217


これまでISSに設置されていた無線システムはエリクソン製のもので、ARISSプロジェクトが立ち上げられた当初から使用されていた20年以上前の古いシステムだったとのこと。


新たに導入されたのは「InterOperable Radio System(IORS)」と呼ばれるシステム。2020年3月6日にケネディ宇宙センターからSpaceXの「Falcon 9」によってISSへと打ち上げらました。IORSはJVCケンウッド製のアマチュア無線機「TM-D710GA」とARISSが開発した多電圧電源によって構成されており、高出力無線機、ボイスリピータ、デジタルパケット無線機、低速度走査テレビジョンシステムが含まれているとのこと。


TM-D710GAは市販のTM-D710GをISS仕様にしたもので、重力がほとんどない状況での運用を想定して放熱性能や操作機能を最適化した特別仕様となっています。具体的には、ISSの安全を守るために出力が25Wに制限されているほか、ファームウェアやメニュー画面はISSの特注で、リピーターの連続運転を可能にするために高出力・高信頼性のファンを搭載しているとのこと。重力がほとんどない環境では対流が生じないため、空気の流れを発生させるファンの信頼性は特に重要です。


ISSにアマチュア無線機を搭載する際に最も大きな課題となるのが「電源」であるとのこと。多電圧電源は直流120Vまたは28Vで動作し、NASAとロシアの異なる要件をどちらも満たす必要があります。電力品質やファンの騒音レベル、温度、特定のLEDの色、特殊なコネクタ、不燃性の配線、埃や糸くずを漏らさないエアフィルタなど、多岐にわたる要件をクリアして開発された電源が利用されています。


ISSには無線通信を行うためのアンテナが冗長性を考慮して4本設置されており、いずれも極度に厳しい温度環境下でも動作に耐えうるようカプトンで覆われています。


IORSで使用されるアンテナ画像がこれ。地球の方を向いています。


ARISSでは今回導入したシステムの他にも、Lバンド中継器アップリンク機能やRaspberry Piを用いたフライト用無線システム「ARISS-Pi」の開発も進めているそうです。

なお、記事作成時点ではTM-D710GAはクロスバンドレピータモードで動作しているため、上空を通過するISSをFM電波の「レピータ」として利用することが可能。145.99MHzのアップリンク周波数に信号を送ると、437.80MHzのダウンリンク周波数で信号が返ってきます。実際にISSをレピータとして利用しているムービーも公開されており、ムービーの3:00あたりでムービー投稿者の音声が返ってきていることがわかります。

International Space Station FM Repeater Now On The Air! - YouTube


ISSが日本上空を通過する日時・方位・仰角は、JASMATの下記ページで確認することができます。

JAMSAT:日本各地の衛星通過時刻の予報
https://www.jamsat.or.jp/pred/

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in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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