セキュリティ

NSAが極秘で電話のメタデータを収集していた行為は違法だと裁判所が判断


アメリカ国家安全保障局(NSA)が犯罪捜査で証拠を得るため、盗聴活動を通じて電話の発信者と通信相手の電話番号・時刻・通話の長さといったメタデータを収集していたことが2013年にエドワード・スノーデン氏の内部告発で明らかになりました。そこから7年が経過した2020年9月、初めてNSAのメタデータ収集が違法な行為だと認められました。

9th Circuit Opinion Sept 2 14-50051_Documents
https://beta.documentcloud.org/documents/20386796-9th-circuit-opinion-sept-2-14-50051_documents

Appeals court rules NSA's bulk phone data collection illegal | TheHill
https://thehill.com/policy/national-security/514854-court-rules-nsas-bulk-phone-data-collection-illegal

Court rules NSA phone snooping illegal — after 7-year delay - POLITICO
https://www.politico.com/news/2020/09/02/court-rules-nsa-phone-snooping-illegal-407727


2013年、アメリカ国家安全保障局 (NSA)と中央情報局(CIA)の元局員であるエドワード・スノーデン氏はNSAの極秘監視プログラム「PRISM」の存在を暴露しました。

PRISMは9.11テロ事件の発生後、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代に法整備されたもの。企業は通常、政府からユーザーの個人情報などについて開示命令があった場合に、法にしたがって情報提供を行いますが、この方法では時間がかかります。そこで、NSAやFBIが令状や企業の同意なしでも情報を参照できるようにしたのが、このPRISMです。

PRISMで収集できるデータはメール、ライブチャット、文章、映像、音楽、通信ログなど多岐にわたっており、Google・Apple・Yahoo!・Facebook・Microsoftなどインターネット関連企業のサーバーに直接アクセスして情報収集をすることも可能とのこと。

Google・Apple・Yahoo!などのサーバにある個人情報を直接のぞき見できる極秘システム「PRISM」とは? - GIGAZINE


そして情報が暴露されてから7年が経過した2020年9月2日(水)、アメリカ合衆国第9巡回区控訴裁判所はNSAによるデータの収集は違法かつ違憲だと判断しました。今回の裁判は、ソマリアの過激派グループであるアル・シャバブに資金提供したとして、3人の共謀者と共に起訴されていたバサーリー・サイード・モーリン被告の罪状についてのもの。モーリン被告は2013年にマネーロンダリングとテロ資金供与の罪で有罪となりました。

NSAは3人の逮捕はPRISMによる極秘データ収集による功績であると主張。しかし、3人の裁判官で構成される審査員団は、数十億のアメリカ人の電話から詳細情報を引き出せるプログラムは外国情報監視法に違反し、令状主義を定める権利章典にも反すると結論付けました。

また裁判官は、2013年の裁判は「何百万人もの人の電話のメタデータを収拾し、それを分析したことで、モーリン被告のメタデータコレクションを明らかにしたという事実」を無視していると指摘。その上で、NSAが「功績」とするものは「電話のメタデータが果たした役割は、政府が正規の方法で取った通話記録に比べてささいなもの」だと述べました。


PRISMが違法だと認められた今回の裁判は大きな意味を持ち、アメリカ自由人権協会はこの決定について「私たちのプライバシーの権利の勝利です」とコメント。一方で「モーリン被告の事件で監視の事実が認められながら、裁判所が違法に集められた証拠の削除を認めなかったのは残念です」とも述べました。

なお、NSAによるメタデータの収集活動は2015年に中止されています

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in セキュリティ, Posted by darkhorse_log

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