「養鶏業」はアメリカでどのように発展を遂げたのか?


近年では鶏肉は肉の中で「最もヘルシーで価格も安い」と注目を集めていますが、かつては鶏を育てるというのは卵を得ることが主な目的でした。アメリカにおける養鶏業の発展について、イギリス大手紙のThe Guardianが解説しています。

From farm to factory: the unstoppable rise of American chicken | Environment | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2020/aug/17/from-farm-to-factory-the-unstoppable-rise-of-american-chicken

現代ではスーパーマーケットで年中入手できる鶏卵ですが、これは「照明を当てて春と同じ光量を保つ」という飼育法による養鶏が発展したおかげで、自然環境下の鶏は秋から冬にかけて卵を産むのを休みます。20世紀初頭のアメリカの養鶏は肉用を目的としておらず、養鶏といえば採卵が目的で、養鶏業者は春になって産まれてきた雛のうち、雌鶏は採卵に使えるためにそのまま育てましたが、雄鶏は採卵に使えないためにある程度育った段階で食肉処理していました。こうした経緯で、春になると大量に雄鶏の肉が出荷されたことから、若鶏の肉のことを「Spring chickens(春の鶏)」と表現します。

食の歴史に関する専門家であるロジャー・ホロヴィッツ氏によると、当時の養鶏業では、鶏の年齢や品種などを一切区別しておらず、市場に出回っている鶏肉は春頃の雄鶏の肉か、卵の生産余剰が生じて処分されてしまった雌鶏の肉に限られていたとのこと。当時は鶏肉が高価だったそうですが、これは鶏肉の需要が高かったというよりも、上記の理由で供給が少なかったことが原因です。


しかし、第二次世界大戦中に牛肉・豚肉・羊肉などが軍用食として配給されることとなったことを受けて、一般市民は鶏肉と魚を食べることが奨励されました。これによって鶏肉の供給と需要は拡大しましたが、当時はまだ「鶏肉といえば春の食べ物」という観念は根強かったとのこと。

第二次世界大戦終結から1960年にかけて、伝統的な方法で鶏を育ててきた養鶏業者に資金を投じて、近代的な養鶏設備を提供するというローンを提示する飼料会社が登場。いわゆる「契約農家」に当たるシステムが構築され始めました。アメリカ合衆国農業省もマーケティングキャンペーンを行って養鶏を奨励した結果、養鶏業は近代的な設備によってコストを削減できるようになりました。こうした取り組みによって鶏肉の人気は年々高まり、アメリカ人1人あたりの鶏肉の年間消費は、1930年代にはわずか4.5kgでしたが、2018年には30kgと消費量は80年でおよそ7倍弱となり、鶏肉は「人気ナンバーワンの肉」の地位を確立しました。

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現代の養鶏では、鶏が食肉加工されるまでに費やした餌代・水代や収穫にかかった時間などのコストと得られた鶏肉の量から算出される「コストパフォーマンス」が重視されています。しかし、コストパフォーマンスが重視されるようになった結果、養鶏業は「鶏の品種の最適解」を追い求めるようになったとのこと。

アメリカにおいて食肉用の鶏は、「胸部が大きい」「羽が白い」「成長しやすい」「成長後のサイズにばらつきがない」「性格が穏やか」という要素が重視されました。アメリカでは長らく胸肉の人気が高かったため、胸肉のサイズが大きくなる胸部の大きさは重要とされ、色つきの羽を持つ鶏は見た目が消費者に嫌われたために敬遠されました。また、成長のしやすさは、餌代や収穫期間などのコストの削減率に関わっており、当時の食肉加工場処理するためには大きさが均一である必要があったため、成長後のサイズにばらつきがないことが求められました。穏やかな性格が重視されたのは、限られたスペースで飼育された鶏は共食いする可能性があることが理由です。


以上のような要素が重視されたことによって、品種の最適化が進み、一時的に市場に出回る鶏肉の品種は限られていました。しかし近年では消費者の鶏肉についての関心が増してきたことを受け、多様な品種の鶏肉を求める声も上がっているとのことです。

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in , Posted by darkhorse_log

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