サイエンス

子どもが探検するのは何かを得るためではなく「探検そのものに価値を見いだしているから」


小さなころ、近所や学校の近くを友だちと探検した思い出がある人は多いはず。最近の研究により、子どもたちがこうした探検に繰り出すのは、何かを得るためではなく「探検そのものが目的」だということが確かめられました。この発見により、一見あてもなく走り回っているように思える子どもの行動にも、理由があることが分かってきたとのことです。

Systematic Exploration and Uncertainty Dominate Young Children’s Choices - Blanco - - Developmental Science - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/desc.13026

Young children would rather explore than get rewards
https://news.osu.edu/young-children-would-rather-explore-than-get-rewards/

これまでの研究により、「子どもが探検をするのは世界の仕組みを知るために重要な行動」だということが分かっていますが、探検をするという行動やその意志決定プロセスが、子どもの成長とどんな関係にあるのかは分かっていませんでした。そこで、オハイオ州立大学で心理学を研究しているナサニエル・ブランコ氏とウラジミール・スラウツキー氏は、「選択やそこから得られる報酬に対する反応が、大人と子どもとではどう違うか」を調べる2つの実験を行いました。

最初の実験には、4歳児32人と大人34人が参加。各参加者は、目の前に置かれたPC画面に表示される4種類のキャラクターのイラストをクリックするゲームを行いました。参加者がいずれかのキャラクターをクリックすると、報酬として仮想のキャンディーが与えられますが、キャンディーの数はキャラクターごとに1個~10個までばらつきがありました。


このゲームで、100回キャラクターをクリックしてできるだけ多くのキャンディーを獲得するよう指示したところ、大人は予想どおり最も多くのキャンディーを得られるキャラクターをクリックし続けました。そのため、最も報酬が多いキャラクターがクリックされる確率は86%にのぼりましたが、一方子どもがそのキャラクターをクリックする確率はわずか43%に過ぎませんでした。

しかし、子どもがルールを把握できていなかったかというと、そうではありませんでした。なぜなら、ゲームの後で子どもに「どのキャラクターをクリックすると最もキャンディーが多くもらえるか」を尋ねたところ、22人中20人の子どもが正しく答えることができたからです。つまり、子どもはどのキャラクターをクリックすれば最も多くのキャンディーを得られるかを知っていながら、あえてそのキャラクターをクリックしなかったことになります。


また、子どもたちの選択を分析したところ、子どもたちはランダムにキャラクターをクリックしていたわけではなく、4種類のキャラクターを体系的にチェックするようにクリックしていたことも分かりました。

この結果について、スラウツキー氏「子どもは、大人ほどには報酬にこだわらず、試してみることそのものに魅力を感じていました。また、特定の選択肢を選ばない時間が長ければ長いほど、その選択肢をもう一度試してみたくなったようです」と述べました。


2つ目の実験は最初の実験とほとんど同じでしたが、4つのキャラクターのうち3つは得られるキャンディーの数が見えるようになっていました。得られるキャンディーの個数が隠されているキャラクターは毎回ランダムに変わりましたが、各キャラクターから得られるキャンディーの数は常に同じでした。そのため、獲得可能なキャンディーの数が隠れていても、そのキャラクターから得られるキャンディーを推測することは十分可能だったということになります。

2つ目の実験には、4歳と5歳の子ども合計36人と大人37人が参加。今回も、大人は94%の確率で最良の選択をしましたが、子どもが最良の選択をする確率はわずか40%でした。このことについてスラウツキー氏は、「子どもたちの多くは、『隠された選択肢を選ぶこと』そのものに関心を持っていました」と述べています。

ブランコ氏は今回の研究結果について、「2つの実験により、一見ランダムに見える子どもの行動は、情報を蓄積したいという欲求に裏付けられている可能性が高いことが分かりました」と結論付けました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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