サイエンス

火星と木星の間にある準惑星ケレスの地下に「海」が広がっている可能性があると判明

by NASA

火星と木星の間に広がる小惑星帯に位置するケレスは、海王星よりも内側の軌道に位置する唯一の準惑星です。かつてケレスは岩の塊であると考えられていましたが、新たに公開された一連の論文で「ケレスの内部には現在まで海が残っているかもしれない」と報告されています。

Impact-driven mobilization of deep crustal brines on dwarf planet Ceres | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1168-2

Evidence of non-uniform crust of Ceres from Dawn’s high-resolution gravity data | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1019-1

Recent cryovolcanic activity at Occator crater on Ceres | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1146-8

Fresh emplacement of hydrated sodium chloride on Ceres from ascending salty fluids | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1138-8

Mysterious Bright Spots on Dwarf Planet Ceres Point to Secret Underground Ocean
https://www.sciencealert.com/mysterious-bright-spots-on-dwarf-planet-ceres-point-to-secret-underground-ocean


19世紀初頭に発見されたケレスは、海王星軌道の内側にある唯一の準惑星で、小惑星帯最大の天体です。2015年、NASAは無人探査機「ドーン」を打ち上げ、小惑星のベスタとケレスに関する調査を3年間にわたって行いました。

ドーンはケレスを探査する中で、2000万年前に形成されたとみられるオッカトル・クレーター内部に異常なまでに輝く「光点」があることを発見。当初は1つか2つの光点とみられていたものの、後にそれ以上の光点が複数集まっていることも判明しました。そして2016年、ケレスの光点は炭酸ナトリウムで形成されていることが研究者によって確かめられたとのこと。

以下の写真が、オッカトル・クレーターにある光点です。光点を形成する炭酸ナトリウムは、地球上だと海底の熱水噴出孔の周囲によく見られます。海底は光合成をするための日光が届きませんが、熱水噴出孔の付近は化学反応を利用してエネルギーを生成する細菌による食物連鎖が存在しています。

by NASA

研究者らは、ケレスの表面にみられる炭酸ナトリウムが、一体どのようにして供給されたのかについて考えてきました。地下に存在する氷が隕石衝突の熱で溶けて一時的に液体となって集まったのか、それともケレスの内部は想定よりも温度が高く、隕石衝突時に内部に液体状の海が存在していたのかは、重要な関心事です。また、後者の場合は、「現在もその海は存在するのか?」という疑問も浮かび上がります。

2020年8月、NASAやマックス・プランク研究所などの研究チームは、ドーンのデータを基にした一連の論文を新たに発表しました。この論文では、ドーンの燃料が尽きた後にわずか高度35kmまでケレスに近づき、オッカトル・クレーターを中心に撮影した高解像度データなどが分析した結果などが報告されています。


研究チームが高解像度データからクレーター周辺の地質学的状況から重力変動を記録し、熱モデリングと組み合わせたところ、「クレーターの下には深い水がある」ことが示唆されたそうです。つまり、オッカトル・クレーターに見られる炭酸ナトリウムの堆積物は、隕石衝突で生じた熱や衝撃によりケレス内部の海が噴出して作られた可能性が高まったとのこと。

また、オッカトル・クレーターは2000万年前に作られたとみられる一方、クレーターにある氷火山は200万年前まで活動していた形跡があることも研究チームは指摘しています。クレーター上の塩は過去200万年以内に堆積した可能性があると研究チームは述べ、隕石衝突の熱が失われた後も、炭酸ナトリウムを含む塩水が表面まで供給されていたことが示唆されているそうです。

さらに、オッカトル・クレーターで見つかった光点を分光法で分析したところ、光点がドーム状になった頂点の部分は、塩化ナトリウムが水和したHydrohalite(ハイドロハライト)という希少な鉱物であることが判明。Hydrohaliteは水を必要とする一方で非常に脱水しやすいため、ケレスの表面にあるハイドロハライトは長期間安定して存在できません。研究チームの計算によると、ほんの数十年~数百年前に内部から噴出した液体が、ケレスの表面にあるハイドロハライトを形成した可能性もあるとのことです。

by Justin Cowart

依然として、ケレスがどのように形成されたのか、なぜケレスの内部には液体が存在できるほどの熱が保持されているのかといった謎は未解明です。ケレスの重大度は大きさを増しており、2023年からスタートする予定の惑星科学10カ年計画でも、ケレスの調査が行われるとみられています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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