生き物

ゴリラと人の交友関係は非常に似ていることが判明、その共通点とは?

by Michelle Lee

人が安定して円滑に維持できる人間関係は150人程度までと言われており、このような「お互いに安定した関係を維持できる人数の上限」を「ダンバー数」と呼びます。ダンバー数以上の人々がいる社会的集団に属したとしても、人が密接な関係を結ぶことができる相手は増えないといわれていますが、この現象は人間に限ったものではないとのこと。ゴリラも「社会集団が大きくなったとしても、親しい間柄の相手が増えるわけではない」と判明しました。

Comparing measures of social complexity: larger mountain gorilla groups do not have a greater diversity of relationships | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2020.1026

Home page news - Gorilla relationships limited in large groups - University of Exeter
https://www.exeter.ac.uk/news/homepage/title_807504_en.html

Scientists Find a Striking Similarity Between The Friendships of Gorillas And Humans
https://www.sciencealert.com/there-s-a-striking-similarity-between-the-friendships-of-gorillas-and-humans


ダンバー数は、「霊長類の脳の大きさと平均的な群れの大きさ」の間に相関を見いだした人類学者のロビン・ダンバー氏によって提唱されたもので、認知的な機能の上限によって社会的な関係性を維持できる数が制限されるという考えです。人間以外の霊長類については、脳の大きさや社会的関係の維持に使用できる時間から、ダンバー数はおよそ50頭ほどになると推定されています。

多くの場合、動物の群れは個体数が多くなるほど社会生活が複雑になると考えられています。エクセター大学やマウンテンゴリラの保護団体「Dian Fossey Gorilla Fund」の研究チームは、ルワンダに生息する13のゴリラの群れを12年にわたって追跡し、合計で150頭以上のマウンテンゴリラについて移動や食事、お互いの毛づくろいなどに費やした時間を計測しました。

一般的にマウンテンゴリラは12頭~20頭ほどの群れで生活していますが、その数は時間と共に変動します。近年は国立公園内に生息するゴリラの個体数が増加しており、時には65頭もの個体からなる群れが形成されることもあったとのこと。


今回の調査では、ゴリラ同士の「社会的関係」を測定するために、それぞれの個体が「近くで一緒に過ごした時間」を計測しました。論文の筆頭著者である人類学者のロビン・モリソン氏は、「霊長類の多くは、社会的関係を測定する時に『お互いに毛づくろいをする時間』が用いられます。しかし、ゴリラは他の霊長類より毛づくろいに費やす時間が短いため、ゴリラ社会での社会的相互作用の測定は、毛づくろいの代わりに『誰の隣に座り、誰から離れるのか』で行われます」と述べています。

研究チームはそれぞれのゴリラがどれほど親しい関係なのかを測定し、個体間の親しさを7つのランクに分類しました。その結果、最も個体間の関係にバリエーションがあったのは、群れの個体数が12頭~20頭だった場合であると判明。一方で、群れの数が増えると多くの関係が「最も弱い」ものになってしまい、社会的な関係のバリエーションが減少してしまったとのこと。

社会集団の規模が大きくなると関係の複雑さが減少する理由については不明ですが、モリソン氏は「特定の個体と強い関係を結ぶための時間と精神的なエネルギー」の限界が、親しい個体数の上限に関係しているのではないかと指摘。ゴリラは社会集団が大きくなっても少数の相手とは強い関係を維持しましたが、そこに時間と精神的なエネルギーを割いている分、その他のほとんどの個体とは弱い関係しか結べない可能性があるそうです。モリソン氏は、「社会集団での生活には精神的な努力が必要です」と述べました。


エクセター大学の准教授であるローレン・ブレント氏は、「特定のサイズを超えた群れが社会的な多様性を持っていなかったことに加え、同じ群れに住んでいる個体間でも、さまざまなレベルの社会的複雑さを持っていました」とコメント。人間の中にもとりわけ社交的で顔の広い人がいるように、一部のゴリラは他のゴリラよりも社交的であり、親しい関係を結ぶ個体の数が多かったそうです。

また、オスのゴリラは思春期に入ると親しい関係の相手が急激に減りますが、メスのゴリラは生涯を通じて安定的な関係を維持し続けるという違いも判明しました。この点について研究チームは、オスのゴリラが思春期を過ぎると「生まれた群れを離れるかどうか」の選択を迫られるため、それに先だって関係を減らしているのではないかと推測しています。

「これは人間であれゴリラであれ、集団に属する誰もが同じような社会的世界を経験しているわけではないことを示す証拠です」と、ブレント氏は述べました。


今回の結果から、研究チームは「群れの大きさで測定された社会的複雑さは、群れに所属するそれぞれの個体が経験する社会的複雑さを反映するものではない可能性がある」と指摘。霊長類の群れにおける関係を理解したい場合、社会集団の規模だけにとどまらない、より包括的なアプローチを行う必要があると主張しました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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