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新型コロナ対策としてスタジアムの入場に顔認証が導入される


プロサッカークラブ・ロサンゼルスFCがホームスタジアムにしているバンク・オブ・カリフォルニア・スタジアムで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として顔認識技術を利用した入場システムが試験的に導入されました。将来的には、スポーツ観戦時にチケットを持たず、顔認証のみで入場できるようになることが期待されています。

Facial Recognition’s Next Big Play: the Sports Stadium - WSJ
https://www.wsj.com/articles/facial-recognitions-next-big-play-the-sports-stadium-11596290400

国内で初めてCOVID-19を確認してからわずかな期間に感染者数が増えたイタリアでは、2020年2月に開催されたサッカー・チャンピオンズリーグの試合観戦でスタジアムに多数の人が集まったことが大規模な感染拡大につながったとの指摘が行われています。ソーシャルディスタンスが徹底される以前は、スタジアムでは人がすし詰めになることが当然であり、しかもお酒を飲んだり、大声を出したりするため、スポーツ観戦はCOVID-19の感染リスクが高い行為だったと考えられます。


また、顔認証技術を手がける企業TruefaceのCEOであるShaun Moore氏は、経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し「窓口でチケットのバーコードをスキャンするだけでも、ウイルスが拡散されてしまうと懸念されています」と述べて、入場手続きも感染リスクを高める要因になっていることを指摘しました。

そこで、スポーツ業界が感染拡大防止のために着目したのが、係員との接触がなくても入場できる顔認証技術です。例えば、ロサンゼルスFCが試験的に導入した顔認証システムが以下。機器の上部には入場客の体温測定とマスク着用状況の確認、そして顔認証を行うための複数のカメラが設置されています。マスク未着用で入場が許可できないなどの場合は、カメラの下にあるスクリーン上の赤色の表示と音声でマスク着用が促されます。入場客がマスクを着用した顔を見せた上で、マスクをずり下げて顔認証にパスした際はスクリーンが緑色になり、下部にあるL字のバーが回転して入場できるようにする仕組みです。


ロサンゼルスFCのクリスチャン・ラウCTO(最高技術責任者)によると、2021年までにClearというアプリをサポートする予定とのこと。すでに航空業界に顔認証システムを導入した実績があるAlclearが開発したこのアプリを使用すると、スマートフォンなどで自撮りした顔写真とチケット販売会社Ticketmasterのプロフィールを紐付けて、顔を見せるだけで簡単にスタジアムに入ることができるようになります。

ラウ氏の話では、すでに600人の入場客でこの顔認証システムをテストしていますが、そのうち再スキャンなどが必要だった人は1%にも満たなかったそうです。ロサンゼルスFCやAlclearはこの顔認証システムの導入コストを正式に公表していませんが、年間20万ドル~25万ドル(約2120万円~2650万円)ほどかかると見積もられています。カリフォルニア州は、アメリカで最もCOVID-19感染者数が多い地域の1つなので、これだけの投資をしても2021年までに客足が回復するのは望み薄とされていますが、ラウ氏は「この投資は効率的な『プレー』です」と述べて、顔認証システムの利便性を強調しました。

同様の顔認証システムは、メジャーリーグのニューヨーク・メッツのスタジアムでも導入が検討されています。プロスポーツ団体に関する調査やコンサルティングを行っているSports Tech World Seriesのトーマス・アロメス氏はWSJの取材に対し「スポーツ団体のような組織は動きが遅いこともありますが、一度何らかの仕組みが定着すると、それが瞬く間に業界標準になることがあります」と述べて、今後さまざまなスポーツスタジアムで顔認証システムでの入場が当たり前になる可能性を指摘しました。

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in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by log1l_ks

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