サイエンス

科学に裏付けされた1日わずか15分でメンタルヘルスを改善させる「感謝トレーニング」とは?


誰しも「感謝するのは気分がいい」となんとなく知ってはいますが、感謝で気分が向上すると科学的に実証されたことはこれまでありませんでした。オランダ・トゥエンテ大学の心理学者でメンタルヘルスの専門家でもあるErnst Bohlmeijer氏らの研究により、実際に「意識的に感謝をすることがメンタルヘルスを改善させる」ことが確かめられました。

Promoting Gratitude as a Resource for Sustainable Mental Health: Results of a 3-Armed Randomized Controlled Trial up to 6 Months Follow-up | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10902-020-00261-5

Consciously training our sense of gratitude is good for mental health | Home (EN)
https://www.utwente.nl/en/news/2020/5/631059/consciously-training-our-sense-of-gratitude-is-good-for-mental-health

Grateful perspective in life promotes mental well-being, finds study
https://medicaldialogues.in/psychiatry/news/grateful-perspective-in-life-promotes-mental-well-being-finds-study-66114


Bohlmeijer氏の研究チームは、「幸福度が低く、軽度のメンタルヘルス上の問題をかかえた成人」を対象とした実験を行うため、心理学情報誌や新聞広告、ソーシャルメディアで参加者を募りました。そして応募者に、オンラインでのインフォームド・コンセントやスクリーニング検査を実施した結果、最終的に217人の参加者が残りました。参加者の平均年齢は48.6歳で、全体のうち88.5%がオランダ国籍、89.9%が女性、78.3%が高学歴、73.7%が就労中、74.2%が他の人と同居中、48.8%が既婚者でした。

研究チームは、参加者をランダムに3つのグループに分けて、6週間にわたる実験を行いました。1つ目のグループは、実験期間中に以下の6つの行動を組み合わせた「感謝トレーニング」を実践しました。

・日記をつけて、その日に起きたうれしかった出来事とその理由を3つ書く。
・「水道からきれいな水が出ること」や「愛する人やペットがそばにいること」など、日常生活で当たり前になっていることを1つ見つけて、もしそれがなくなってしまった時のことを想像する。
・自分に対して何かいいことをしてくれた人に感謝の手紙を書く。手紙は郵便や電子メールで送っても、会ったときに直接伝えてもOK。
・人生の中での出来事や会ったことがある人々に対する感謝を、できるだけ詳しく書き出す。
・上記とは逆に、過去に起きた困難な出来事について、その経験から得られた前向きな変化などを書く。
・毎朝5分間、物事に感謝する姿勢を持とうと意識する。

研究チームによると、このトレーニングに必要な時間は1日当たり15分間、1週間で75分間前後と見積もられているそうです。


2つ目のグループには、1週間のうち1日を選んで「5つの自分へのご褒美」を実行してもらいました。「ご褒美」の具体的な内容は、「これまであまりやっていなかった特別な物事」であること以外は各自の判断に任せられており、例としては「とっておきのコーヒーを淹れる」「好きな雑誌や食事で自分を癒やす」「趣味に時間を費やす」「散歩に行く」などがありました。5つの行動を行うのに必要な時間は、1回当たり平均約75分と見積もられています。

最後の3つ目のグループは、何もしない対照グループでした。ただし、そのことが参加者の心理に影響を与えないようにするため、このグループの参加者には「6週間の中で何か自分の幸せの実現に最適なアクティビティを見つけておく」ことが指示され、実験期間後にそのアクティビティを実行してもらいました。

そして、実験期間終了後の各グループに対しメンタルヘルスに関するテストを受けさせたところ、「幸福度」「感謝の気持ち」「充足感」「喜び」など複数の項目において、感謝トレーニングを実行した1つ目のグループの結果が他のグループの結果を上回っていたとのこと。特に違いが顕著だったのは「幸福度」で、1つ目のグループの約3分の1が幸福度の高まりを示していたのに対し、2つ目のグループでは19.2%、3つ目のグループでは13.6%でした。


Bohlmeijer氏はこの結果について「ポイントは、ネガティブな経験を無視するのではなく、困難や心理的な苦痛に向き合いつつ人生のいい側面に感謝の気持ちを持つことです。それこそが、精神の回復力である『レジリエンス』の本質だと言えます」と話しました。

研究チームは今回の研究結果を踏まえ、感謝のトレーニングを自分で行うことができる無料アプリの開発を進めており、2020年9月ごろにリリースする予定とのことです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「人生に対する不満」を癒やす方法とは? - GIGAZINE

強いメンタルヘルスを養う方法とは? - GIGAZINE

「週1日の労働」がメンタルヘルスにとって必要な全てであるという研究結果 - GIGAZINE

お金持ちになるとメンタルヘルスは向上するが心血管の健康は困窮している人と同レベルだという調査結果 - GIGAZINE

気温が上昇するとストレスやうつといったメンタルヘルスの問題が起きやすくなる - GIGAZINE

「若者のうつ病は睡眠不足に深く関連している」という研究結果 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article here.