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Amazonで販売が禁止されている麻薬や銃器に関連する製品が販売され続けている、Amazon自身が販売・出荷するケースも

by amy

世界最大の通販プラットフォームのAmazonでは多種多様な製品が販売されていますが、一部の製品は「制限対象商品」としてAmazon上での販売が制限・禁止され、プラットフォームの健全化が図られています。しかし、テクノロジー関連の問題について調査するメディアThe Markupは、「Amazonの商品規制はうまく機能しておらず、『販売禁止』のはずの一部製品はAmazon自身によって販売・出荷されている」と指摘しています。

Amazon’s Enforcement Failures Leave Open a Back Door to Banned Goods—Some Sold and Shipped by Amazon Itself – The Markup
https://themarkup.org/banned-bounty/2020/06/18/amazons-enforcement-failures-leave-open-a-back-door

アメリカでは依存性が強い鎮痛剤であるオピオイドの乱用が大きな問題となっており、多くの人々が中毒となったり過剰摂取で死亡したりしています。2016年には、「偽のオピオイド」を製造・販売して多額の利益を上げていたEric Falkowskiという男が逮捕されましたが、Falkowskiは偽の錠剤を製造するための機械を「Amazonで購入した」と証言しました。

Falkowskiが製造した偽のオピオイドを購入して服用した人のうち、3人が過剰摂取などにより死亡しているとのことで、Falkowskiは懲役22年の有罪判決を受けています。The Markupの電話インタビューに対し、刑務所の中にいるFalkowskiは「私は2台の錠剤プレス機をAmazonで購入しました。それと、丸薬を成形して刻印するプレス金型も購入しました」と答えたとのこと。Amazonではこうした違法薬物の製造に使用できる製品の販売は禁止されていますが、Falkowskiは特に面倒な手続きをすることなく、普通にAmazonでこれらの機械を購入できたそうです。

そして、The MarkupがAmazon上で販売されている商品について調査したところ、実に100近いドラッグや犯罪、銃器に関連する危険な商品が販売されていることが判明。Amazonはサードパーティーが販売する製品の監視をうまく実施できていないばかりか、Amazon自ら禁止されているはずの製品を販売・出荷していることも明らかになったと報じています。


The MarkupはAmazonのプラットフォーム上で、水をフィルター代わりにしてマリファナなどの服用に使用するBong(ボング)、注射してハイになれる化合物、Falkowskiが使用したものと同様の錠剤プレス機、車のドアロックを解除するピッキングツール、自動小銃のAR-15のパーツやアクセサリーなど、実に幅広い「本来は禁止されているはずの製品」が売られていることを発見しました。Amazonは危険な製品の販売を禁止していますが、その規制はうまくいっていない模様。

多くの禁止製品はサードパーティーによって販売されていたそうですが、そのうち30個以上は「Amazonの倉庫から発送」となっており、少なくとも4個は「Amazon's Choice」のラベルが付いていたとのこと。また、5個の製品は購入ボタンの下に「ships from and sold by Amazon.com(Amazonが発送、販売します)」と記されており、実際に販売業者の1人はThe Markupに対し、「製品をAmazonに販売した」と認めました。


The Markupが発見した製品の多くは数カ月間にわたってAmazon上で販売され続けており、いくつかのレビューも付いていたとのこと。また、これらの製品は入力フォームにある程度の単語を入力すると、オートコンプリートで検索候補に表示されたそうで、ユーザーは簡単にこれらの禁止製品にたどり着くことが可能だったそうです。

Amazonの広報担当者であるパトリック・グラハム氏はThe Markupに対し、「Amazonは疑わしい製品や禁止されている製品がリストに表示されるのを防ぐために予防策を講じています」と回答し、2019年には60億件を超える製品の販売を阻止したと主張しています。しかし、「The Markupが発見した禁止されているはずの製品が販売され続けていたのはなぜか?」「Amazonがそれに気づかなかったのはなぜか?」「一部の製品がAmazonの倉庫に保管されて発送されているのはなぜか?」「Amazon自身が禁止製品を販売するのはなぜか?」といった質問について、グラハム氏は回答しませんでした。

by Tony Webster

グラハム氏はFalkowskiが使用した錠剤プレス機について、Amazonが販売を許可していたことを認めていますが、「私たちはこれらの製品を製造・流通・販売しないので、製品に対する責任を負いません」とコメント。サードパーティーによって販売された製品が危害を引き起こしたとしても、アメリカの通信品位法第230条に基づいてAmazonの責任はないと主張しています。

その一方で、2019年にはアメリカの連邦巡回区控訴裁判所が、「Amazonはサードパーティの販売者が取り扱う製品に対しても責任を負う必要がある」とする判決を下しています。

Amazonはサードパーティ業者が販売する製品についても法的責任を負う必要があるという判決 - GIGAZINE


The Markupのインタビューに応じたAmazonの従業員や元従業員らは、Amazonがサードパーティーの監督に苦労していると認めています。Amazonは製品のリスクを「誰かを殺したり傷付けたりする可能性があるのか?あるいは法的なリスクが高いものか?」といった要素で分類しているそうですが、Amazon自身も本来であれば販売されるべきではない製品が売られていることは理解しているとのこと。

実際にThe MarkupがAmazonの販売者用アカウントを開設し、ドラッグ吸引用のボングやAR-15の部品などを出品してみたところ、特定のキーワードを回避したりアイテムの分類を誤魔化したりするだけで商品を販売することができてしまったそうです。グラハム氏は本来禁止されている製品が出品できてしまった理由について回答を避けましたが、「サードパーティーの業者は自身が販売する製品について最もよく知っているため、製品を正確に分類する責任がある」と主張しました。

2010年から2017年にかけてAmazonの製品安全プログラムに取り組んでいたレイチェル・ジョンソン・グリア氏は、入社当初のAmazonでは未承認のバイアグラや警察のレーダーを妨害する装置など、問題のある製品が多く販売されていたと回想しています。この状態を是正するため、グリア氏は問題のある製品を検出するプログラムを作成して規制を開始しました。

しかし、グリア氏らが開発したプログラムは以前に問題が確認された製品や用語を検出するものであり、未知の問題には対処できなかったとのこと。また、一部のサードパーティーは規制をかいくぐる巧妙な方法を考案し、まるでいたちごっこだったそうです。たとえばThe Markupが発見したAR-15の整備ツールは「ペーパーウェイト」などの事務用品として販売されており、銃器として見なされないようにしていた模様。

消費者保護団体はAmazonの取り組みが不十分であるとして、規制当局が介入する必要があると訴えています。非営利の消費者保護団体であるPublic Citizenは、「Amazonが禁止製品の販売を規制するために割いているリソースが十分ではなく、Amazon内での優先順位が低く投資もされていないことは明らか」と指摘。Public Citizenでディレクターを務めるLori Wallach氏は、「無法地帯があった方が収益性が高いかもしれませんが、消費者にとっては非常に危険です」と述べました。

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