サイエンス

1万3000年前の彫刻がゴミの山から偶然発見される


中国・北京で、およそ1万3300年前に作られたと考えられる鳥の像が発掘されました。この鳥の像は井戸を掘った際に出た残土から出土したもので、当時の人類が火と道具を使って彫刻を行い、芸術品を作り出す技術を持っていたことを示唆すると研究者は主張しています。

A Paleolithic bird figurine from the Lingjing site, Henan, China
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0233370

Ancient bird figurine recovered from refuse heap the oldest instance of East Asian 3-D art
https://phys.org/news/2020-06-ancient-bird-figurine-recovered-oldest.html

1958年に、建設作業員たちが井戸を掘るため、地下およそ5メートルのところにあった最終氷期末期の地層を掘り返しました。掘り出した土の中に古代の土器や石器などの工芸品が混じっていましたが、当時の建設作業員はそのことに気づかず、その土をゴミとして処分してしまいました。

山東大学の考古学者であるZhanyang Li氏らの報告によれば、鳥の像は、60年前にゴミとして処分された土の山から大量の石器と共に発掘されたそうです。この像は全長約19.2mmで小さな鳥をかたどっており、焼けて黒くなった動物の骨の破片から彫られたもの。


像を作ったのはおそらく、最終氷期末期に中国北部に住む狩猟採集民族だと考えられています。この中国北部の狩猟採集民族は単純な陶器を作ったり、角岩を削って刃を作ったりする文化を持っていたとのこと。

発掘された鳥の像は骨を焼いて作られていますが、骨を普通に焼いても割れてしまったり収縮して形がゆがんだりしてしまいます。1万3000年以上前の狩猟採集民族は、この像を制作するために「適切な時間だけ低温で骨を焼く」という工程を踏んでいました。

さらにLi氏らの研究チームがマイクロCTスキャナーで発掘された鳥の像をスキャンし、3Dモデルを作成して調査したところ、粗い砥石(といし)で焼いた骨を砕き、鋭い石器で表面を滑らかにし、鳥の頭に目のような切り込みを入れていたことがわかりました。これらの調査結果から、1万3000年以上前の狩猟採集民族が像を作るための技術をすでに習得していた可能性を研究チームは指摘しています。


像が何のために作られたのかは不明ですが、像の表面に無数の細かい擦り傷がランダムな方向についていたことから、Li氏らの研究チームは「長い間革の入れ物に入れて持ち歩かれていた可能性」を指摘しています。

研究チームは、「この発見は中国独自の芸術的伝統を明らかにしたもので、西欧やシベリアで発見された他の標本とは技術的・様式的に異なり、中国の彫像の起源を旧石器時代まで遡るミッシングリンクである可能性があります」と主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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