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SNSの存在が薬の臨床試験の信頼性を脅かしている


製薬会社が新しい治療薬を開発しても、それをすぐに市場へ投入することはできず、有効性や副作用の有無を確認するために臨床試験を行う必要があります。しかし、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアの登場によって臨床試験の信頼性が下がりつつあると、エクセター大学のデータ研究者であるニッコロ・テンビーニ氏とスペイン国立通信教育大学(UNED)の科学哲学者であるデビッド・テイラ氏が指摘しています。

Social media can threaten medical experiments
https://theconversation.com/social-media-can-threaten-medical-experiments-118229


ほとんどの場合、薬の臨床試験では何を測定したいのか、あるいはどのような結果が出てほしいのかがあらかじめ決まっています。患者は有効な薬を入手するために臨床試験に登録し、医師はどの治療法がより効果的かを推測します。新しい医薬品の試験は複雑なプロセスですが、製薬会社が医薬品開発への数百万ドルの投資を回収できるのは臨床試験が成功した場合だけです。


研究者や患者、医師、製薬会社のさまざまな思惑によって、臨床試験の結果は簡単にゆがんでしまいます。臨床試験の信頼性を保証するためにも、臨床試験は「盲検化」されていることが多く、医師も患者も誰がどんな治療を受けているのか分からないようになっています。

1960年代以降、ランダムに抽出された治療群と対照群を研究者と被験者に判別できないようにした上で、新薬を投与された患者グループの結果と投与されなかった患者グループの結果を比較し、検査結果への影響を可能な限り減らす「ランダム化比較試験(RCT)」が、新薬の安全性と有効性を評価するための標準的な実験法として使われています。


1980年代に抗HIV薬として開発されたジドブジン(AZT)の臨床試験が行われた際、偽薬ではなくAZTを服用したいと思った被験者が勝手に化学者へ薬の分析を依頼し,
偽薬だと判明すると薬の服用を勝手に中止するという事態に発展しました。そのため、アメリカ食品医薬品局は試験基準を再考して臨床試験をやり直すよう命じました。

このように、患者側が盲検化された臨床試験を突破してしまう危険性は、ソーシャルメディアの台頭でさらに高まっているとのこと。テンビーニ氏とテイラ氏は、ソーシャルメディア上で試験の参加者が自分の治療条件を明らかにし、他の患者グループと情報を交換してしまうことで、臨床試験の盲検性が失われる可能性があると主張しています。

たとえば、同じ症状の患者でつながりあえるSNS「PatiensLikeMe」では、2011年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者が臨床試験の情報と結果を共有したため、臨床試験が十分に行われなかったとのこと。また、Facebookでは筋ジストロフィーC型肝炎の臨床試験でも同様のケースが報告されています。


「ソーシャルメディアは人と人が簡単につながりあえる技術プラットフォームですが、薬の臨床試験のあり方に大きな変化を促す可能性があります」とテンビーニ氏とテイラ氏は語り、「統計学者が盲検化されていないデータを扱う新しい方法を見つけない限り、臨床試験からのエビデンスに依存する患者および処方医師の決定は、結果的に悪影響を受けることになります」と述べました。

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in Posted by log1i_yk

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