サイエンス

ハンドスピナーの原理で作られた装置で尿路感染症の検出が迅速かつ安価にできるように


膀胱炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)といった尿路感染症の診断を、迅速、かつ安価でこなせる装置を韓国とインドの研究チームが開発しました。そのヒントになったのは、手にのせて回転させるおもちゃ「ハンドスピナー」でした。

A fidget spinner for the point-of-care diagnosis of urinary tract infection | Nature Biomedical Engineering
https://www.nature.com/articles/s41551-020-0557-2


A fidget spinner for point-of-care diagnostics | Nature Research Bioengineering Community
https://bioengineeringcommunity.nature.com/users/400727-yoon-kyoung-cho/posts/a-fidget-spinner-for-point-of-care-diagnostics

A fidget spinner to detect urinary tract infections | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/05/a-fidget-spinner-to-detect-urinary-tract-infections/

尿路感染症は、細菌が尿道口から膀胱へと入ることで引き起こされる病気で、膀胱内で感染がとどまると「膀胱炎」、細菌が腎臓にまで進入すると「腎盂腎炎」となります。


大腸菌が存在する肛門と尿道口との距離が近いことや、尿道が短いことなどから、これらの感染症には男性よりも女性の方がかかりやすく、女性の半数以上は一生に一度は感染するといわれています。また、男性も年齢を重ねるごとに感染しやすくなるため、細菌感染症として世界で最も一般的なものの1つといえます。

尿路感染症の診断には、採取した尿のサンプルに含まれる細菌を増殖させる「尿培養検査」が適しているのですが、時間がかかるほか、培養のために医療リソースも必要なのが難点。一方、尿サンプルに検査用の紙片を浸すだけでできる方法もあり、こちらは安価でできるのですが、信頼性が高くないという問題がありました。

Yoon-Kyoung Cho氏らが率いる韓国とインドの研究チームは、おもちゃとして話題になったこともある「ハンドスピナー」の原理を用いた装置を開発しました。

ハンドスピナーは、ボールベアリングと外側に取り付けたブレードで構成されたおもちゃで、2017年に大ヒットしました。以下はギネス・ワールド・レコーズ認定の「片手でのハンドスピナーの最長回転記録」ムービーです。

Longest duration spinning a fidget spinner on one hand - Guinness World Records - YouTube


Cho氏らが作った装置「Dx-FS」は、ハンドスピナーのブレードにあたる部分にサンプルを入れることで、1mlのサンプルを5分でろ過できる診断用ハンドスピナー。装置の使い方に習熟していなくても、1~2回回転させれば、誰でも100倍の病原体を濃縮することができ、手間のかかる培養工程なしで、肉眼で病原体を検出・同定することができるようになります。

まずは、Dx-FS以前からCho氏らが取り組んできた遠心分離技術開発の成果である「流体支援分離技術(Fluid-Assisted Separation Technology:FAST)」の膜を取り付けて、サンプルを注入します。


Dx-FSを回転させて、FASTを取り除き、検出試薬を入れます。


これで、細菌の検出が行われます。


1回の検査にかかる費用は0.24ドル(約26円)。


実際にインドで、尿路感染症の疑いのある39人の被験者について、症状に基づいた診断とDx-FSを組み合わせた検査を行ったところ、抗菌薬を必要とする患者18人を50分以内に特定することができたとのこと。これまでであれば、39人全員に症状に応じた抗生物質が処方されていたところですが、21人は不必要な薬を処方されなくて済んだというわけです。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by logc_nt

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