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オンラインで実施された高校生向けテストの提出にiPhoneを使用した生徒が不合格に、生徒たちは集団訴訟へ


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のために、筆記問題の回答を撮影し画像ファイルで提出する方法で実施された試験で、主催者側がiPhoneの画像ファイルを受け取れず受験生が不合格になる問題が発生しました。この問題は、iPhoneで撮影した画像ファイルの形式が主催者側が求めたファイル形式とは異なったことが原因でしたが、これに納得できない受験者らは総額5億ドル(約537億円)規模の集団訴訟に踏み切りました。

College Board Hit With A Class-Action Lawsuit After Online AP Testing Snafus | Colorado Public Radio
https://www.cpr.org/2020/05/21/college-board-hit-with-a-class-action-lawsuit-after-online-ap-testing-snafus/

Students are failing AP tests because the College Board can’t handle iPhone photos - The Verge
https://www.theverge.com/2020/5/20/21262302/ap-test-fail-iphone-photos-glitch-email-college-board-jpeg-heic

アメリカの非営利団体カレッジボードは、毎年5月にアドバンスト・プレイスメント(AP)という試験を実施しています。これは、高校生に大学の初級レベルのカリキュラムと試験を提供するもので、ここで高い成績を残すことができれば大学での成績に加算されたり単位に換算されたりするため、有利な進学を目指す多くの高校生が毎年受験に挑みます。


2020年5月に実施されたAP試験は、COVID-19対策のため65年の歴史の中で初めてオンラインで実施される試験となりました。その一環として行われた作文などの筆記試験では、PCで作成したテキストファイルをPDF形式で提出する方法のほか、手書きの回答をスマートフォンなどで撮影して画像ファイルとして提出する方法を選択することが可能でした

しかし、スマートフォンで回答を撮影し、カレッジボードに送信しようとした一部の学生に問題が発生しました。それは、iPhoneで撮影した回答が受信されずに延々とロード画面が続いてしまうという問題です。結局、この問題に突き当たった学生の多くが時間切れで失格となってしまいました。

by College Board

これは、iOS 11以降のiPhoneをはじめとするスマートフォンの一部で撮影した画像ファイルのデフォルトの保存形式が、一般的な画像形式であるJPEGなどではなく、HEICだったことが原因です。

設定を変更しない限りiPhoneなどで写真を撮影するとHEIC形式で保存されますが、カレッジボードが受領可能なファイルの形式は拡張子が「.jpg」「.jpeg」「.png」のファイルのみでした。そのため、この仕様を知らなかった高校生らは、スマートフォンを通じた回答の提出に失敗してしまったというわけです。

この問題に気づいたカレッジボードは、サイト上の告知やTwitterでの投稿を通じて、受験生にスマートフォンの設定を変更するよう求めました。

If you want to submit a photo of a handwritten AP Exam answer from an iPhone or iPad, make sure to change your camera settings so your photos are saved as JPEGs, not HEICs. Go to Settings > Camera > Formats > Select “Most Compatible.”

More details: https://t.co/Hqg0CKbB4A. pic.twitter.com/DZ0lLttDgm

— The College Board (@CollegeBoard)


しかし、Twitterでのツイートは試験開始の直前だったため、ツイートを目にすることができた生徒は少なかったとのこと。また、そもそもTwitterアカウントを持っていない受験生もいました。


この事態に対し、カレッジボードは6月に再試験を実施することを決定。また、5月18~22日に受験した学生の一部に対しては、回答を電子メールで再度提出することを認めています。しかし、その前週である5月11~15日に受験した学生からの再提出は受け付けていないため、このスケジュールで試験を受けた学生は再試験を申し込む必要があります。

この決定を不服とする受験生らは、総額5億ドルの金銭的救済と再試験の中止を求めて、カレッジボードを相手取った集団訴訟に踏み切りました。また、オンライン署名サイトChange.orgに投稿された再提出した回答の受付を求める請願には、記事作成時点で2万6000件以上の署名が寄せられています。


カレッジボードの最高リスク責任者兼顧問弁護士のピーター・シュワルツ氏は、オンラインで実施された今回のAP試験について「COVID-19の影響で国中が都市封鎖された際に、我々が全国の学生に対して調査をしたところ、91%と圧倒的に多くの学生がカリキュラムの終わりにAP試験を受けたいと希望しました。そのため、我々はわずか数週間で自宅からAP試験を受験できるようにしました。また、無事試験を受けることができなかった学生も、再試験により大学の単位を取得する機会を得ることができます」とコメント。

さらに、集団訴訟に対しては「この訴訟は、自分の都合のためにマスコミ報道を利用しているご都合主義者の集まりが作り上げた、正当な法的訴えを装った売名行為に過ぎません。これは事実上誤りであり、なんら法的根拠を有しません。カレッジボードは、精力的かつ自信をもってこれに対抗し、勝利すると考えています」と述べて、徹底抗戦する構えを見せました。

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in モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1l_ks

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