メモ

失業保険プログラムを悪用する詐欺が横行、被害額は年間数百億円規模に


偽造通貨や詐欺事件の捜査を行う執行機関のアメリカ合衆国シークレットサービス(USSS)による「犯罪組織がアメリカの失業保険プログラムなどを悪用した詐欺を行っており、被害額が数百億円規模に達している」というレポートの存在を、コンピューターセキュリティに詳しいライターのブライアン・クレブス氏が報告しています。

U.S. Secret Service: “Massive Fraud” Against State Unemployment Insurance Programs — Krebs on Security
https://krebsonsecurity.com/2020/05/u-s-secret-service-massive-fraud-against-state-unemployment-insurance-programs/


USSSの文書によれば、犯罪組織は盗み出した社会保障番号などの個人情報を使って、複数の州で失業保険金の請求を行っているとのこと。保険金請求に使われた個人情報の多くがファーストレスポンダーや政府職員、学校職員のものだったそうです。

ワシントン州では、失業保険プログラムから自動手形交換所(ACH)を介して州外の個人口座に複数回振り込まれるケースが確認されています。なお、この口座を管理するのは名義人とはまったく関係ない人物であることがUSSSの文書で報告されています。


オクラホマ銀行協会の詐欺部門ヴァイス・プレジデントのエレイン・ドッド氏によると、オクラホマ州の銀行では、ワシントン州の失業保険プログラムから9000ドル(約95万円)から2万ドル(約210万円)という高額送金が殺到していたとのこと。銀行員によってこれらの送金はすでにストップされているそうです。

USSSは「同様の失業保険金詐欺はノースカロライナ州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、オクラホマ州、ワイオミング州、フロリダ州で確認されています。失業保険金の請求を大量に行うために、犯罪組織は膨大な個人情報データベースを所有していると推測されます」と指摘。


また、同様の手口でアメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)に所得税還付請求を行う詐欺集団の存在も指摘されており、「(失業保険金詐欺と合わせると)毎年数億ドル(数百億円)の損害が出ている」とUSSSの文書は報告しています。

クレブス氏は、匿名という条件でUSSSの捜査官にインタビューすることに成功。捜査官によると、多くの州で「同じメールアドレスや銀行口座を含む申請書を検出する」という詐欺の申請を却下するための管理が十分に行われていないそうで、一部では名前と社会保障番号と基本情報を提出するだけで失業保険の請求が処理されてしまうとのこと。そのため、第三者でも簡単に失業保険の請求が可能になってしまっているというわけです。


クレブス氏は、失業保険金詐欺が急増した理由として「新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴って失業者が増えたことで、クレームや問い合わせの対応で当局が手一杯になってしまったこと」を挙げています。実際に失業保険詐欺のターゲットとなっている州は2020年に入ってからの失業請求数が特に多く、ワシントン州では労働者人口のおよそ30%が失業したといわれています。

新型コロナウイルスの影響で失業者が世界規模で2500万人増加の見込み、かつてないほどの経済危機に各国はどのような対策を行っているのか? - GIGAZINE


ワシントン州雇用基準局は「2020年3月から4月の間に失業保険の詐欺請求の数は700件にのぼり、通常のおよそ27倍にまで増加しました」「雇用基準局の詐欺ホットラインには電話が殺到しており、電子メールの問い合わせが多すぎるあまり、一時的にメール窓口を閉鎖しました」と語っています。

アメリカ財務省の(PDFファイル)報告によれば、2020年4月だけでおよそ480億ドル(約5兆円)が失業保険プログラムに使われたとのこと。USSSは文書のなかで「地方銀行や信用組合、大規模な国立銀行を含むすべての金融機関が標的にされています。すべての州がこの詐欺の手口に対して脆弱である可能性が非常に高く、今後も標的にされる州が増えるとみられます」と論じました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
新型コロナウイルスの影響で失業者が世界規模で2500万人増加の見込み、かつてないほどの経済危機に各国はどのような対策を行っているのか? - GIGAZINE

国際的詐欺「ナイジェリアの手紙」にだまされてしまう心理学効果とは? - GIGAZINE

新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の情報を盗むサイバー犯罪が急増、アメリカ当局は名指しで中国を非難する見込み - GIGAZINE

「偽の新型コロナウイルスワクチン」を販売していたウェブサイトを司法省が閉鎖 - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.