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なぜ悲しい気分から回復するには「悲しいことを避ける」だけではいけないのか?


世の中には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行や株式市場の変動、楽しみにしていたイベントのキャンセルや延期といった悪いニュースがあふれており、不確実な将来を悲観している人も多いはず。SNSなどで悲惨なニュースをチェックせずにはいられないという人もいる一方で、逆に悪いニュースを全てシャットアウトして別の物事に集中しているという人もいますが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のHal Hershfield准教授はネガティブな気分から回復するには暗いニュースをシャットダウンするのではなく「悲しいイベントと共にうれしいイベントを経験するべき」と主張しています。

Should You Immerse Yourself in Bad News These Days or Ignore It Completely? - Scientific American Blog Network
https://blogs.scientificamerican.com/observations/should-you-immerse-yourself-in-bad-news-these-days-or-ignore-it-completely/

オハイオ州立大学の心理学教授であるJeff Larsen氏の研究チームは、2001年に発表した研究で「混合した感情の共活性化モデル」として知られるアイデアを生み出しました。このアイデアの基本的な考えは、悲しい感情と共に喜びなどのポジティブな感情を体験することで、悲しみなどのネガティブな感情に対処し、学ぶことができるというものです。

Larsen氏の考えによると、ポジティブな感情は心理的な緩衝材として機能し、人々が快適でないイベントや感情に対処するのを助けるとのこと。つまり、何かを経験してネガティブな感情を抱いた時は、ポジティブな感情を持てる体験に取り組むことで、ネガティブな体験を消化して、洞察を得ることができるとLarsen氏は主張しています。


Hershfield氏らの研究チームは2012年の研究で、毎週のメンタルヘルスセラピーに登録している47人の成人を対象にして、抱いている感情や精神的健康状態に関するアンケート調査を実施しました。研究チームが12週間にわたって感情とメンタルヘルスに関する長期的な影響を評価したところ、数週間ほどで参加者らの精神状態が改善したことが判明し、時間はかかるもののセラピーの効果があることが確かめられたとのこと。

より注目するべき点としてHershfield氏が指摘しているのが、ある時点において悲しみと喜びといった相反する感情を抱いていた人は、翌週の調査で心理的幸福が改善していることが明確に示されたという点です。たとえば、今週の時点で悲しみと喜びという相反する感情がない交ぜになっている人は、翌週には気分がよくなっている傾向が強く見られると推測することができます。その一方で、悲しみと喜びが混ぜ合わさっている最中には、メンタルヘルスの改善がみられなかったとのことで、相反する感情の混合がメリットをもたらすには時間がかかる可能性があるとHershfield氏は指摘しています。


悲しい感情に対処する上で喜びを用いた事例として、Hershfield氏はスタンフォード大学の精神科医であるDavid Spiegel氏が乳がんの女性を対象にした調査の中で出会った、1人の女性の例を挙げています。その女性は乳がんのせいで自分の好きなことができないと悲しみを抱いており、好きだったオペラ鑑賞も「乳がんの治療が終わるまでは行けない」と考えていました。

しかし、がんが末期となった時にようやく女性はオペラ鑑賞に行ったそうで、Spiegel氏に対して「私はがんを一緒に連れて行き、がんを私の隣に置きました。がんは変わらずそこにありましたが、私は素晴らしい時を過ごしました」と述べたとのこと。このように、悲しい感情を抱いた時にあえてポジティブな感情を得られる体験をすることで、悲しみを乗り越えることができるとHershfield氏は主張しています。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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