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ゲームのクラッキングから始まったレトロPCのデジタルアート文化「デモシーン」がユネスコの無形文化遺産に登録される


1980年代に使われていたPCでリアルタイムに映像や音楽をレンダリングするプログラムを開発したり、その映像や音楽を楽しんだりする文化を「デモシーン」と呼びます。1980年前後に北欧で始まったとされるデモシーンが国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録されたと、フィンランドの文化遺産庁が発表しました。

Demoscene, musical saw playing and horsemanship of the Roma – 12 new elements inscribed on the National Inventory of Living Heritage
https://www.museovirasto.fi/en/articles/demoskene-sahansoitto-ja-romanien-hevostaidot-elavan-perinnon-kansalliseen-luetteloon-12-uutta-kohdetta


Breakthrough of Digital Culture: Finland accepts the Demoscene on its national UNESCO list of intangible cultural heritage of humanity - Demoscene - The Art of Coding
http://demoscene-the-art-of-coding.net/2020/04/15/breakthrough-finland-accepts-demoscene-on-their-national-list-of-intangible-cultural-heritage-of-humanity/


デモの始まりは、1970年代の末から1980年代初頭にかけての時期に登場した「Crack Intro」が発祥といわれています。Crack Introとは、ハッカーがApple IIコモドール64ZX Spectrumなどといったホームコンピューター向けのゲームソフトのコピープロテクトを解除した時にプログラムを改ざんして割り込ませた自作のムービーや音楽のこと。

Crack Introは「コピープロテクトを破ったハッカーが自分の技術力を仲間にアピールするためのもの」という意味合いを持っていましたが、少しずつ複雑で派手な内容のムービーや音楽が増えていき、次第に「デジタルアートの一種」という側面が強くなっていきました。やがて、こうした自作のムービーや音楽は「デモ」と呼ばれるようになり、1980年代に北欧の若者の間でデモの視聴や制作が流行しました。


例えば以下のムービーはApple II版の「テトリスII」の海賊版に挿入されたもので、だいたい1989年頃に登場したといわれています。

Apple II - Tetris II Cracktro by The Brain Trust - YouTube


1988年に制作された以下のムービーは、デレク・アンド・ザ・ドミノスの名曲「いとしのレイラ」をバックにアニメーションが流れます。

X Ray "Layla" Commodore 64 Crack Intro Full Version - YouTube


デモシーンは、80年代のPCやゲーム機の音源を使って作曲をするチップチューン文化と同様に、レトロなデジタルカルチャーとして現代もなお世界中にファンが多く存在し、さまざまな作品が発表されています。2010年頃に制作されたコモドール64のデモは、カラフルなドット絵から3DCGまで多彩な表現が使われたもの。

C64 DEMO WE ARE NEW by FAIRLIGHT - YouTube


以下のムービーは、コモドール64のデモとして2014年に制作されたムービー。

Booze Design - Uncensored - C64 Demo - YouTube


そして、2019年に発表された向けのデモが以下。

Eon by The Black Lotus (compo version) - YouTube


そんなデモシーンが、「カンテレの演奏」「ミュージックソーの演奏」「眠る前の読み聞かせ」などと共に、フィンランドの無形世界文化遺産としてユネスコに登録されました。

フィンランドの文化遺産庁は「デモシーンは、デモやプログラミング、グラフィック、音楽をリアルタイムで演奏する世界的なムーブメントです。デモシーンの作品は当初はフロッピーディスクで配布されていましたが、後にオンラインで無料で配布されるようになりました。1980年代にはじまったデモシーンには、フィンランドだけでも数百のグループが参加しており、それぞれが数人から数十人のメンバーで構成されています。デモシーンは参加者に力を与えるものであり、重要なアイデンティティーの1つでもあります」とコメントしています。

デモシーン関連の情報を発信するサイト・Demoscene - The Art of Codingは「デジタルカルチャーがユネスコの無形世界文化遺産に登録されたのは史上初のことで、素晴らしい瞬間です」と喜びのコメントを述べました。

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in ソフトウェア,   動画,   アート, Posted by log1i_yk

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