「くしゃみ・せきなどで放たれる微粒子が屋内でどのように拡散するか」をわかりやすく示したムービー
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、飛沫感染と接触感染が主要な感染経路だと考えられている病気です。フィンランドの研究機関が公開した、くしゃみ・せきなどによって口から飛び出す粒子がどのように室内に拡散するかを示すムービーを見ると、屋内ではCOVID-19の感染リスクが高くなることがよく理解できます。
Researchers modelling the spread of the coronavirus emphasise the importance of avoiding busy indoor spaces | Aalto University
https://www.aalto.fi/en/news/researchers-modelling-the-spread-of-the-coronavirus-emphasise-the-importance-of-avoiding-busy
アールト大学・フィンランド気象研究所・フィンランドVTT技術研究センター・ヘルシンキ大学の合同研究チームが、新型コロナウイルスに感染した人のせきがどのようにして屋内に拡散していくのかをCSCのスーパーコンピューターでシミュレートした結果を視覚化したムービーを公開しています。COVID-19の典型的な症状である「乾いたせき」の粒子サイズは15マイクロメートル未満と考えられているため、ムービーでは感染者のせきによって気管から放出される20マイクロメートル未満のエアロゾルの拡散状況を視覚的に表現しています。
A 3D model of a person coughing in an indoor environment – how an aerosol cloud travels in the air - YouTube
このムービーでは、スーパーマーケットなど食料品店が屋内空間として想定されており、人と人の間には2メートルほどの高さの棚が並んでいます。なお、この屋内空間は換気まで考慮に入れられているとのこと。人がせきをして、口から拡散されるエアロゾルが以下の赤枠部分。
エアロゾルの色は各粒子が存在する位置を示しており、黄色に近いほど空間内で高い位置に存在し、青色に近いほど低い位置に存在していることを表現しています。せきによって放たれたエアロゾルは急速に前方に拡散して……
1分30秒後には棚を超えて、1列離れた位置にいた人の頭部に到達。
2分半後には2列離れた位置にまで達しました。
時間の経過と共にエアロゾルは蒸発して消えてなくなりますが、せきをした人の前方にエアロゾルは長く残ります。4分経過時点ではこんな感じの残留状況。
6分を超えてもエアロゾルは残り続けていました。
このムービーは20マイクロメートルのエアロゾルの拡散状況を示したものですが、A型インフルエンザウイルスは5マイクロメートル未満の粒子に含まれることが研究によって確認されています。
研究チームは、以上のムービーで示されるように新型コロナウイルスの感染者が放出したエアロゾルは感染を増やす可能性を指摘。今回の結果は、フィンランド保健福祉研究所が推奨してきた「体調が悪い場合には家にとどまって、あらゆる人との物理的な距離を保つ」「せきをする場合は袖口やティッシュで口を覆う」「手をしっかりと洗う」などの指示の重要性を確認するものだと述べています。
今回の研究結果を報じるアルト大学の記事は、「ショップ・レストラン・公共交通機関などの混雑しやすい場所を使う人の数が減ると、ウイルスの拡散が鈍化したり、完全に抑制されたりすることが知られています。現在の情報によると、新型コロナウイルス感染症の主な原因となる飛沫感染のリスクを減らすためには、人の多い屋内を避けるべきです」と記しています。
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