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世界中のPCを使って新型コロナウイルスの解析を進める「[email protected]」の演算速度が世界TOP500のスーパーコンピューターを全部合計した性能に到達


[email protected]」は、世界中の家庭にあるPC・ゲーム機・スマートフォンなどの身近なマシンの演算能力を合算する分散コンピューティングによってたんぱく質の立体構造を解析するというプロジェクトで、新型コロナウイルスの分析にも力を発揮しています。世界規模の新型コロナウイルスパンデミックにより[email protected]に注目が集まった結果、[email protected]の演算処理能力は、世界ランキングTOP500のスーパーコンピューター全てを足し合わせたよりも優れた性能に達しました。


The coronavirus pandemic turned [email protected] into an exaFLOP supercomputer | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/04/how-the-pandemic-revived-a-distributed-computing-project-and-made-history/

So What Is Protein Folding, Anyway? | Hackaday
https://hackaday.com/2020/04/14/so-what-is-protein-folding-anyway/

2020年4月14日時点の[email protected]の演算能力を他のスーパーコンピューターと比較したグラフが以下、縦軸が処理速度を表しています。[email protected]は世界最速の処理速度を誇るIBM Summitの15倍の速度である2.4exaFLOPSに達そうとしており、この速度はTOP500のスーパーコンピューターの演算能力を足し合わせたよりも速いとのこと。


IBM Summitは多数のCPUとGPUを連結することで処理を行っていますが、[email protected]は世界中の家庭用機器の処理能力を合算する「分散コンピューティング」プロジェクトです。[email protected]の処理能力はプロジェクトに参加するユーザーの数に比例するため、いわば「人気」が処理能力に直結します。[email protected]がスタートしたのは2000年10月1日ですが、スタートしてから今に至るまでのおよそ20年間で、その処理能力には浮き沈みがありました。

[email protected]の処理能力に最初のピークをもたらしたのはソニーのゲーム機PlayStation 3(PS3)です。PS3版[email protected]の登場によって注目が集まった結果、[email protected]に参加するPS3ユーザーは100万人に達し、処理速度は分散コンピューティング史上初の1PFLOPS到達しました。しかし、ソニーはPS3版[email protected]の提供を2012年に打ち切り、他のプラットフォームのユーザーも徐々に離れていったため、2020年1月には全ユーザー数が3万人を割り込みました。

しかし、2020年2月に転機が訪れます。[email protected]の全ユーザー数は3月に3万人から40万人に急増。4月にはさらに70万人に達しました。現代ではユーザーの持つPCなどのスペックがかなり向上しているため、現時点ではユーザー側の処理速度が速すぎてサーバー側が過負荷になっている状況とのこと。

この状況を生み出したのが、新型コロナウイルスです。[email protected]233件の研究論文に貢献しており、この中には抗生物質耐性菌やエボラウイルスのタンパク質構造解析などの重要な研究も含まれています。そんな[email protected]は当然ながら新型コロナウイルスの解析にも用いられることとなり、Nvidiaが公式に「COVID-19と戦うためにGPU演算能力を役立てましょう」とツイートしたこともあって、注目が集まりました。


[email protected]はタンパク質の「フォールディング」と呼ばれる立体構造を解析するというプロジェクトです。タンパク質を構成するアミノ酸間で水素結合やジスルフィド結合などが行われるため、それぞれのタンパク質は固有の立体構造に折りたたまれて安定化します。この固有の立体構造はタンパク質を構成するアミノ酸の配列からは予測が困難であるため、[email protected]のような超高速な演算能力を必要とします。


[email protected]の演算能力を使って新型コロナウイルスを解析するプロジェクトは複数進行しています。2020年4月13日には、新型コロナウイルスの内部にある複製能力を担うタンパク質「RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)」についての研究が発表されました。現在開発が進められているワクチンは新型コロナウイルスの表面抗原を対象としたものがほとんどですが、この表面抗原は変異によって薬剤耐性を持つように進化する可能性が高い部分でもあり、「変異によって開発されたワクチンが使い物にならなくなる」可能性が指摘されています。しかし、研究チームによると、RdRpはウイルス内部に位置するため研究がしにくいものの、非常に変異しにくいため、薬物ターゲットとして有望とのことです。

新型コロナウイルスについての研究も進めている[email protected]には、自分のPCを使って貢献することができます。以下の記事で、実際に[email protected]に参加して新型コロナウイルスの解析に協力する方法を解説しています。

新型コロナウイルスの解析を自分のPCの計算リソースを使って手助けできる「[email protected]」「BOINC」レビュー - GIGAZINE

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   サイエンス, Posted by log1k_iy

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