サイエンス

スマートフォンはいかに対面式の会話に亀裂を生じさせてしまうのか?


スマートフォンの普及により、実際に顔をつきあわせて行う会話よりも、ディスプレイ越しでのコミュニケーションにばかり注力するようになってしまったという人も多いはず。十代の若者がメッセージやSNSの投稿を通して友達やその他と積極的に交流している姿は、日本だけでなくアメリカやその他の先進国でもよく見られる光景です。そんなスマートフォンが対面式の会話にもたらす悪影響について、専門家が解説しています。

How our phones disconnect us when we're together
https://theconversation.com/how-our-phones-disconnect-us-when-were-together-130838

「雰囲気のあるレストランでゆらゆらと揺らめくロウソクの炎を見るよりも、スマートフォンの画面ばかり見ている若いカップルの方が多い」と語るのは、イギリスのノーサンブリア大学で心理学の講師として働くジェナビー・ブラウン氏。

携帯電話があれば遠くにいる友人とも手軽にコミュニケーションを取ることができます。そのため、より多様なコミュニケーションの取り方が可能になるスマートフォンは、距離が作り出す人間関係の溝を埋めるのに最適なツールであるかのように思えます。しかし、ブラウン氏が語ったレストランでの事例のように、便利すぎるスマートフォンが人間同士のコミュニケーションに亀裂を生み出してしまうケースがあります。


2016年にアメリカのコーヒーショップで実施された研究では、誰かと一緒の時間を過ごしながらモバイルデバイスを使用すると、会話内容を適切に聞き取り、相手に関与する能力が低下することが示されています。さらに、お互いにあまり知らない相手とコミュニケーションを取る場合、モバイルデバイスを使用するとより顕著に対話の質が低下することが明らかになりました。

最新の別の研究では、レストランに行く人に対して携帯電話を「テーブルの上に置いておく」あるいは「手の届かないところにある箱に入れておく」ことを依頼します。そして、レストランでの食事が終わったのちに、被験者に対して「食事がどれくらい楽しかったか?」と「どの程度気が散ったか?」を尋ねたそうです。携帯電話をテーブルの上に置いている場合、被験者は「気が散った」と回答。そして、気が散った結果として友人や家族との食事の時間を十分に楽しめなかったことも判明しています。


ブラウン氏もスマートフォンが対面式のコミュニケーションを阻害する可能性について研究しています。ブラウン氏は2人組の友人を招待し、実験を行うまで待機室に並んで座ってアンケートに回答してほしいとお願いしました。なお、実際はこの「待ち時間の被験者たちの過ごし方」こそが研究チームが調査したかった時間で、待ち時間の様子は動画で撮影され、後に分析されています。また、この時に回答してもらったアンケートでは、「いつ対話の時間が終わったと感じたか?」などが問われているそうです。

研究チームは待ち時間の被験者たちの過ごし方を分析し、被験者がどの程度スマートフォンを使用していたかを調査しました。被験者となった63組のうち、スマートフォンを使用していたのは48組で、5分間の待ち時間でのスマートフォンの平均使用時間は1分15秒でした。コミュニケーションは実際に対話する両人に依存するため、片方がスマートフォンを使用しているだけでも対話の質に影響を及ぼすことが予想されるため、ペアの片方がスマートフォンを使用していれば「スマートフォンを使用している」とカウントされたそうです。

分析の結果、スマートフォンを使用する時間が長ければ長いほど、対話の質は低下することが明らかに。また、友人同士の親密度に関係なく、スマートフォンを使用した状態では対話の質が低下することも判明しています。映像を分析したところ、スマートフォンを使用して写真やメールの内容を友人と共有するというケースもあり、こういった使い方の場合は対話の質が損なわれることはなかったそうです。ただし、こういった方法でスマートフォンを使用したのは全体のわずか21%で、情報共有が行われる時間も平均わずか5秒と非常に短いものでした。なお、より頻繁に起こったのは「友人の話を聞きながら、自分のスマートフォンの画面を見る」というながら行動だそうです。


「友人の話を聞きながら、自分のスマートフォンの画面を見る」というながら行動について、ブラウン氏は「被験者ペアの片方がスマートフォンを取り出したため、もう片方も同じようにスマートフォンを取り出し、会話の内容を熱心に調べるものの、相手が完全にスマートフォンに熱中してしまったことに気づき、失望し傷つき、5分間の待ち時間で再び会話することはなかった」という悲しい事例を紹介しています。

スマートフォンなどの技術を介した対話は人間関係を維持することに役立ちますが、「我々のほとんどは、まだ友人と絆を結ぶために対面での対話を好んでいます。対面式の会話は、スマートフォンを用いた会話と違って他人とすぐに情報を共有することができないため、親密な情報を共有するのにピッタリです」とブラウン氏は語っています。

また、対面式の会話では相手が怖がっている時に手を握ったり、悲しいときに抱きしめてあげたりすることができる点でも優秀で、「スマートフォンを用いた対話ではそういった機会を逃す可能性がある」とブラウン氏は指摘しています。

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in モバイル,   サイエンス, Posted by logu_ii

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