サイエンス

「究極のシャボン玉を作り出すためのシャボン液のレシピ」を物理学者が解明

by Alexander Dummer

洗剤を使えば手軽に吹けるシャボン玉ですが、世界記録レベルの超巨大シャボン玉を作り出すには、非常に正確な割合で水や洗剤を調合する必要があります。この「究極のシャボン玉を作り出すためのシャボン液の調合比率」を科学的に解明した物理学者が、科学誌のPhysical Review Fluids上で論文を公開しています。

Phys. Rev. Fluids 5, 013304 (2020) - How to make a giant bubble
https://journals.aps.org/prfluids/abstract/10.1103/PhysRevFluids.5.013304

Physicists determine the optimal soap recipe for blowing gigantic bubbles | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/02/physicists-determine-the-optimal-soap-recipe-for-blowing-gigantic-bubbles/

シャボン玉の形成には非常に複雑な物理学が関わっているため、「究極のシャボン玉を作り出すための調合比率」は長らく謎のままでした。1800年代にはベルギーの物理学者であるジョゼフ・プラトーが広範囲に及ぶ石けん膜の基礎研究を行い、シャボン玉を形成する石けん膜の構造を説明するためのプラトーの法則を公式化し、石けん膜の構造を決定する表面張力に関する4つの基本法則を概説しました。

このプラトーの法則によると、気泡が丸い理由は表面張力によるものです。球形は所定の体積に対しての表面積が最小となるため、形状を維持するために必要なエネルギーも最小となります。なお、シャボン玉は形成されてから時間が経つと、重力が液体を下方向に引っ張る力により、完全な球体ではなくなり、その後割れます。

by Daniel Hansen

近年においてもシャボン玉に関する研究は活発に行われてきており、2016年にはフランスの物理学者が「シャボン玉を吹く際のメカニズムを理論モデル化」しました。研究によると、シャボン玉は一定の速度以上で吹かれた場合にのみ形成されることが明らかになっており、これは空気の噴流の幅に依存することも判明しています。噴流の幅が広い場合、狭い場合よりもシャボン玉を形成するためのしきい値が低くなり、形成されるシャボン玉も大きくなります。この現象はプラスチック製のストローでシャボン玉を作り出す際にまさに起きている事象そのものです。

また、2018年にニューヨーク大学の応用数学研究室の数学者も、シャボン玉を形成する石けん膜に関する実験を行い、「シャボン玉を吹くための最適な方法」について論文を発表しています。この論文によると、外周1.5インチ(3.81cm)の円柱状の筒を用い、毎秒6.9cm程度の風速で優しく息を吹くことが「シャボン玉を吹くための最適な方法」だそうです。強い息で吹くとシャボン玉が破裂してしまうだけでなく、大きすぎるストローや小さすぎるストローであっても、同じように問題になると論文では指摘されています。

by Julie Laiymani

そんなシャボン玉に関する最新の研究論文がPhysical Review Fluids上で公開されました。この論文によると、割れにくい巨大なシャボン玉を作り出すための鍵となるのは「異なる長さのポリマー」です。

論文の共著者であり、エモリー大学で流体力学の専門家として働くジャスティン・バートン氏は、バルセロナで偶然出会った大道芸人がフラフープを使って自動車と同じ長さの巨大なシャボン玉を作り出す様子を見て、シャボン玉に興味を持ったそうです。

バートン氏が最初に興味を持ったのは、シャボン玉の表面が虹色に変化するという点でした。これはシャボン玉を形成する石けん膜の表面で光が反射する際に生じる干渉パターンによるものです。そこからバートン氏はシャボン玉を形成する石けん膜の厚さがわずか数マイクロメートルであることを知ります。その後、わずか数マイクロメートルの薄い石けん膜が、巨大なシャボン玉の状態のまま保たれることに驚き、実際に実験室や自宅の裏庭で巨大なシャボン玉を作り出すための実験をスタートしたとバートン氏。

by Holly Bartley

バートン氏は巨大シャボン玉を作り出すためにシャボン玉専用のWikiなどを参考にしていたそうです。こういったサイト上で紹介されている人気の高いシャボン液のレシピは、ほとんどがポリマー(グアーや医療用潤滑剤として用いられるポリエチレングリコール)が含まれていることに気づいたそうです。

そこから、バートン氏は水・石けん・ポリマーの混合物をさまざまな割合で調合してシャボン液を作成。このシャボン液を用いてシャボン玉を吹き、石けん膜の厚さを赤外線で測定し、シャボン玉が割れるまでの寿命も計測しました。

この調査の結果、研究チームは巨大なシャボン玉を作り出すために必要となるのはポリマーであると結論づけています。バートン氏は「鎖状のポリマーが絡み合い、毛玉のようになることで、分裂しづらい長い鎖状構造が形成されます。適切な組み合わせで作られたシャボン液では、ポリマーが石けん膜を『粘性がありながら伸縮性のある最適なもの』に変貌させてくれます」と述べています。

by Enrico Carcasci

そんなバートン氏ら研究チームが導き出した「完璧なシャボン玉を作るためのシャボン液レシピ」は以下の通り。

◆材料
水:1リットル
Dawn Professional(食器用洗剤):50ml
グアーパウダー(食品性増粘剤):2、3グラム
消毒用アルコール:50ミリリットル
ベーキングパウダー:2グラム

◆シャボン液を作る手順
1:グアーパウダーと消毒用アルコールをだまができなくなるまでかき混ぜる
2:(1)に水1リットルを加え、10分間静かに混ぜる
3:グアーパウダーが水に溶けるまで静かに待つ
4:再びかくはんし、液体が固まっていないゼラチンのようになったらベーキングパウダーを加えて再びかき混ぜる
5:食器用洗剤を加えて液面が泡立たないように優しくかくはんしたら完成

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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