観葉植物の一部を切り取って持っていく窃盗犯が増加、一体なぜなのか?

by leonardoiheme
人々の目を楽しませる観葉植物の中には非常に高価な種類も多く、古くは17世紀のオランダで発生したチューリップ・バブルのように、植物が投機の対象となることも少なくありません。近年では「植物専門店や温室に生えている観葉植物の一部を切り取って持ち帰る」人々が増加していると、The Guardianが報じています。
A growing concern: is it ever OK to steal plant cuttings? | Life and style | The Guardian
https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2020/jan/15/plants-is-it-ok-to-steal-cuttings
2019年12月、アメリカ・オレゴン州のポートランドで観葉植物店を営むCory Jarrellさんは、希望した参加者らに自身の温室を案内しました。参加者らが温室を出た後で、Jarrellさんは温室内で栽培している植物の一部が切り取られていることを発見したとのこと。
Jarrellさんは温室を訪れた人々の中に植物泥棒がいたことに気づき、犯人とみられる女性を問いただし、女性のバッグから切り取られた植物の一部を見つけました。「彼女のバッグには切り取られた植物の山がありました」とJarrellさんは述べています。Jarrellさんは警察に電話をかけた後で、思わず温室内でへたり込んでしまったそうです。
以下のJarrellさんがInstagramに投稿した画像に映っているのが、犯人が盗もうとした植物の一部。切り取られた植物は全て、展示品の中でも特に貴重な品種だったそうで、犯人はどの植物が貴重なのかを知っていたとJarrellさんは指摘しています。
結局犯人は罪を認めましたが、既に一部が切り取られてしまった植物などの被害額は合計で2000ドル(約22万円)に上るとのこと。犯人には1年間の保護観察処分とJarrellさんへの賠償が命じられ、Jarrellさんは賠償金を受け取ることができました。しかし、傷つけられた植物はいずれも貴重で、買い直すことは困難だそうです。
犯人が希少な植物の一部を切り取ったのは、挿し木を行って栽培し、自宅で鑑賞したり通販サイトで売ったりするためでした。全ての植物が挿し木によって増やすことができるとは限りませんが、多肉植物やサボテン、一部の熱帯植物などは挿し木によって比較的簡単に増やすことが可能です。
観葉植物は以前から多くの人々に親しまれてきましたが、近年では高級ブランドバッグやブランドスニーカーなどと同様に、Instagram上でのステータスシンボル化が進んでいるそうです。そのため、かつてモンステラ属の植物は園芸センターで30ドル(約3300円)ほどで購入可能でしたが、近年では挿し木に使用する茎より先の状態が200ドル(約2万2000円)、鉢植えの状態が600ドル(約6万6000円)の価格で取引されています。こうした観葉植物の価格上昇を背景に、挿し木によって希少な植物を売りさばく人々が増加しているとのこと。

by Alexander Mils
挿し木によって植物の株を増やすこと自体は、古くから庭師や園芸愛好者、コレクターたちによって行われてきました。しかし、近年ではインターネットの掲示板上に挿し木を行う人々のフォーラムが登場するなど、かつてないほど容易に植物を挿し木で増やす方法を知ることができるようになっています。
Redditの挿し木フォーラムの創設者であるSarina Daniels氏は、当初のフォーラム参加者はせいぜい数人だったと振り返っています。ところが、TwitterやInstagramにおいて観葉植物の投稿が人気を集めるにつれ、参加者が急激に増加したとのこと。Daniels氏はフォーラムの参加者に対し、「植物を盗んではいけない」という倫理基準を設定しているものの、時には近所の庭やレストランから採取した植物を挿し木に使った投稿も行われているそうです。
さらに、フォーラムの参加者らの中には「倫理基準のグレーゾーン」も生じているとのこと。たとえば、「ウォルマートの観葉植物コーナーに置かれている鉢植えから自然に落ちた葉っぱ」を挿し木に使うことについては、グループの参加者の多くが「セーフ」だと認識しています。しかし、専門的な観葉植物店のオーナーの中には、「自然に落ちた葉っぱであっても売り物から落ちたものであればアウト」という認識の人もいます。

by Alan Cabello
Jarrellさんの店以外の場所でも、近年では観葉植物の窃盗が相次いでおり、植物店のみならずロンドン・チェルシー薬草園のような植物園でも貴重な植物種の盗難が発生しているとのこと。チェルシー薬草園の温室管理者であるJess Snowball氏は、植物種の窃盗が世界中の植物園に共通する問題だと指摘し、非常に貴重な植物が盗まれることはとても悲痛だと述べました。
また、たとえ植物の一部を切り取るだけであっても、店舗で売られている植物の価格は大きく下がってしまい、販売基準を満たさない植物はもはや店舗で売ることすらできません。さらに、植物が元どおりに成長するまでにも時間がかかるため、挿し木にするつもりで少しだけ切り取る行為の悪影響は大きいとのこと。
その一方で、多くの植物店のオーナーや植物園の管理者が、観葉植物の愛好家のほとんどが窃盗に手を染めていないと指摘。窃盗被害に遭ったJarrellさんも、「コミュニティの99%の人々は善良です」とコメントしました。
・関連記事
植物を「数秒ごとに明滅する照明」で育てることで栽培に必要なエネルギーを削減できる - GIGAZINE
職場に観葉植物を置くだけで幸福度と生産性がアップ - GIGAZINE
オフィスの空気をきれいにしてくれる観葉植物の選び方 - GIGAZINE
植物にあてる日光や日陰を求めて自分で歩いて移動するプランター「HEXA」が話題に - GIGAZINE
「植物は意識を持たない」と科学者がわざわざ論文で主張する理由とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ