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Googleの元国際関係責任者が退職、「Googleは邪悪になってしまった」と退職の理由やGoogleの内情を暴露

by Anders Kristensen

Googleの元国際関係責任者であるロス・ラジュネス氏が、2020年1月2日にGoogleを退職したことを発表しました。退職の理由についてラジュネス氏は、Googleが長年にわたって掲げてきた「Don't be evil(邪悪になるな)」というスローガンが、もはや意味を持たなくなってしまったからだと述べています。

I Was Google’s Head of International Relations. Here’s Why I Left.
https://medium.com/@rossformaine/i-was-googles-head-of-international-relations-here-s-why-i-left-49313d23065

ラジュネス氏は2008年にGoogleへ入社した時のことを振り返り、「シンプルだが強力な『邪悪になるな』の規範の下で、世界をよりよく、より平等にする仕事に取り組みました」と述べています。2008年時点では「邪悪になるな」の標語が有効であり、ラジュネス氏はGoogleの製品が邪悪な目的で使用されるのを防ぐために尽力してきたとのこと。


たとえば、Googleは2006年に中国市場へ参入しましたが、その際に中国政府の要望に基づいていくつかのトピックを検閲することを認めました。当時、Googleの創業者であったラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏は、「Googleによってもたらされる『よい結果』が、Googleの及ぼす害を上回る場合にのみ、Googleが中国市場にとどまる」と述べていました。ところが、やがて中国政府の要求はエスカレートし、検閲を要求する範囲が拡大していったほか、Googleマップでは全てのラベルを政府の管理下に置くことを要求してきたとのこと。

そして、2009年に中国政府が人権活動家のGmailアカウントにアクセスしようと試みるに至った時点で、Googleは2006年の決定を再考する必要に迫られました。幹部らによる激しい討論の結果、「邪悪になるな」という標語を守るために、Googleは2010年に中国政府の検閲に協力することを拒否し、中国市場からの実質的な撤退を表明。「中国政府による検索結果の検閲への協力を中止するという2010年の決定は、中国国外の企業が中国政府に立ち向かった最初の事例でした」と、当時のアジア太平洋地域の公共政策責任者を務めていたラジュネス氏は述べています。

by Tomas Roggero

「邪悪になるな」という標語に従って中国政府に反抗するというGoogleの決定は、同時にGoogleが多くのものを投げ捨てる決定でもあったとラジュネス氏は指摘。中国政府への反抗によって、急速に成長する中国市場での将来や数十億ドル(数千億円)もの利益を失っただけでなく、中国人従業員の安全すらも危険にさらされていたとのこと。

中国政府の検閲に協力しない決定を下した後、ある時点でラジュネス氏は「中国に拠点を置くGoogleの全従業員およびその家族を、安全な場所へ移動させる大量避難計画」に携わったそうです。大量の人々を避難させる計画には当然ながら多くの困難が伴いましたが、ラジュネス氏は「邪悪になるな」というスローガンに従ったGoogleの決定を、非常に誇らしく思ったと述べています。

by :D

しかし、Googleが中国市場から撤退したことに不満を持ったのは中国政府だけではなく、巨大な中国市場に目を向ける一部の製品開発部門からも怒りの声が漏れていたとのこと。実際に、中国市場から撤退した2010年の決定から1年もたたないうちに、GoogleマップおよびAndroid関連の幹部は中国市場での製品販売を模索し始めました。

中国市場から撤退したGoogleのアプローチを転換することは人権侵害に加担することを意味する上に、かつての「邪悪になるな」のスローガンに基づいた決定を称賛した人々や西側諸国の反発を招くとして、ラジュネス氏は中国市場に目を向けた計画に激しく反対したそうです。結局、中国政府が依然としてGoogleの決定に不満を持っていたこともあり、Googleマップの中国展開は進みませんでした。

ラジュネス氏は3年ほどアジア太平洋地域の公共政策責任者を務めた後、2012年に国際関係責任者へと就任。この間にGoogleは「すでに成功した大規模な企業」から、「世界中の何十億人もの生活にかかわるハイテク巨人」に成長していたとのこと。

by Pixabay

新たな地位に就任したラジュネス氏は、引き続き中国市場への参入を目指す製品担当者らとの話し合いを続けたそうです。そんな中、2017年にラジュネス氏は、Googleが「Dragonfly」というコードネームで中国向けの検閲機能付き検索サービスの開発を行っていることを知り、人権侵害にGoogleが加担するおそれがあると懸念を持ったとのこと。また、Googleが中国の北京にAIラボを開設した件についてラジュネス氏は知らされておらず、Googleがラジュネス氏の影響力を排除しようと試みていると気づきました。

そこでラジュネス氏は、Googleが国連の人権宣言に基づいて人権を遵守することを公約し、製品の内部レビューを行う全社的な人権プログラムの採用を求めました。ところが、ラジュネス氏の上司は「人権問題は独立したプログラムによってではなく、製品チーム内で処理されるべき問題だ」として、ラジュネス氏の要求を拒否。「製品チームは人権問題に対処する訓練を受けていない」とラジュネス氏が訴え、再度検討を求めた際には、「会社の法的責任が増加する危険がある」として、結局ラジュネス氏の要望が受け入れられることはありませんでした。

その後、Dragonflyのポリシーチームに関して人員の再配置が行われ、ラジュネス氏の同僚がポリシーチームを主導することとなり、ラジュネス氏はDragonflyに関する議論から除かれてしまったとのこと。一連の出来事から、ラジュネス氏は「Googleがビジネスや製品の決定に人権の原則を組み込むことを意図していないと実感しました。人権を追求すべき時であっても、Googleは利益と株価を追い求めているのです」と述べています。

by geralt

Googleの人権を軽視する態度と同様に、ラジュネス氏はGoogleの職場文化についても糾弾。ラジュネス氏の同僚が女性社員をいじめて泣かせたり、上司が有色人種やLGBTの人々に差別的な発言を行ったりすることが横行しており、ラジュネス氏が人事部などに訴えても懸念事項に対するフォローアップがされなかったと述べています。

やがてラジュネス氏は「人員を再編成した結果、ポジションがなくなった」とGoogleから通達されましたが、弁護士を雇って話し合った結果、Googleは誤解があったことを認めて小さな役職を提示してきたとのこと。しかしラジュネス氏は「選択は明確でした」と述べ、「邪悪になるな」という標語がもはや意味を持っていないGoogleを退職することを決めたそうです。

Googleが変わってしまった理由として、ラジュネス氏はかつての経営陣が退いた後のポストに新たなCEOやCFOが雇われ、四半期ごとの収益予想を上回ることが最優先事項になったことが一因だと指摘。また、毎年のように数千人の新入社員が加わる状況では、かつての企業理念を守り抜くことが難しかったとのこと。

それでも、近年では大規模なハイテク巨人が政府の監視を逃れることはできないとラジュネス氏は指摘。Googleもアメリカ議会の調査によってDragonflyの開発を打ち切っているように、もはや世界中の人々の日常生活に影響を及ぼすハイテク巨人の役割は、株主に責任を持つ経営者だけに委ねられるものではないとのこと。なお、ラジュネス氏はメイン州の上院議員の民主党候補として選挙に出馬するとのことで、「今回の証言には政治的な意図がある」との指摘も挙がっています。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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