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寄付した人にお礼を伝える「感謝の電話」が相手の今後の寄付行動に与える影響はゼロ

by Kat Yukawa

一般から広く寄付を受け付けている慈善団体は、寄付をした人に対して「寄付をしてくれてありがとうございました」といったお礼の電話やメッセージの送付を行うことがあります。「寄付した人にお礼をすることで、再び寄付をしてくれる可能性が上がる」とも言われていますが、実際に経済学者が寄付に対する感謝の電話が及ぼす効果を調べたところ、感謝の電話はその後の寄付行動に全く影響を与えないことが判明しました。

Do Thank-You Calls Increase Charitable Giving? Expert Forecasts and Field Experimental Evidence by Anya Samek, Chuck Longfield :: SSRN
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3371327

Calling donors to thank them doesn't make them more likely to give again
https://theconversation.com/calling-donors-to-thank-them-doesnt-make-them-more-likely-to-give-again-126995

アメリカでは感謝祭明けの火曜日に「ギビングチューズデー」という日が設けられており、慈善団体への寄付が社会的なムーブメントとなっています。2018年のギビングチューズデーには、3億8000万ドル(約420億円)もの寄付が非営利団体に寄せられたとのこと。

こうした寄付を受けた団体の多くは寄付者に電話やメッセージで感謝を伝えており、感謝を伝えることでその後も寄付活動を続けてくれることを期待しています。実際に寄付を行った人のうち、再び寄付を行う人の割合は50%に満たないという(PDFファイル)調査結果もあることから、新規の寄付者が定期的に寄付を行ってくれるように促すことは、慈善団体にとって重要な課題です。

感謝の電話が人々の寄付行動を活性化すると考えている非営利団体は多く、南カリフォルニア大学で寄付行動について研究している行動経済学者のAnya Samek准教授の調査によると、実に80%の非営利団体が感謝の電話をかけていたとのこと。Samek氏は、寄付者に対して感謝の電話をかけることが、実際にその後の寄付行動を増加させるのかどうかについても調査を行いました。

by artbaggage

Samek氏の研究チームは、寄付を受け付けている公共のTV局や大規模な非営利団体と協力して実験を行いました。対象となった団体における、2011年から2016年にかけての新規寄付者はおよそ50万人であり、初回の平均寄付額はTV局に対するものが150ドル(約1万6000円)、非営利団体に対するものが70ドル(約7700円)でした。

研究チームは新規寄付者のリストから一部をランダムに抽出し、寄付に対するお礼の電話をかけました。お礼の電話ではあくまでも感謝の気持ちを伝えることに終始し、「また寄付をお願いします」といった要求はされなかったとのこと。なお、もしも感謝の電話を外注した場合、必要な金額は1件あたりおよそ1ドル(約110円)だそうです。

by it's me neosiam

実際にSamek氏の研究チームがデータを収集し始めると、驚くべき結果が明らかになりました。なんと、寄付した後に感謝の電話を受けた人とそうでない人の間では、その後の寄付行動に全く違いがでなかったのです。

以下のグラフでは、赤い棒グラフが上から順に「感謝の電話が寄付行動を増加させると思っている資金集めの専門家」「感謝の電話が寄付行動を増加させると思っている一般人」を示しており、その下の棒グラフは、TV局に寄付をした人と非営利団体に寄付をした人が再び寄付を行った割合を示しています。専門家と一般人の50%以上が「感謝の電話が寄付行動を増やす」と考えていましたが、実際に寄付を行った人々は感謝の電話を受けようが受けていなかろうが、30%近くの割合で再び寄付を行っています。つまり、「寄付に対する感謝の電話には、再び寄付を行ってもらうという目的では全く意味がない」ということが判明しました。


さらにSamek氏は、調査終了後から5年間を考慮しても感謝の電話が寄付行動に変化を及ぼさなかった点や、寄付金額の量にも影響を及ぼさなかった点も重要だと指摘。実験を行う以前のSamek氏は「感謝の電話が非常に流行している点を見る限り、おそらく感謝の電話には何かしらの効果があるのだろう」と考えていたそうですが、今回の結果は予想に反するものだったとのこと。

なお、「その後の寄付を増やす」という意味では感謝の電話に効果はありませんでしたが、慈善団体の信念として「寄付をしてくれた人には感謝を伝えるべき」と考えているのであれば、感謝の電話を止める理由はないとSamek氏は述べました。

by Patrice_Audet

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in メモ, Posted by log1h_ik

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