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Google検索の品質悪化はリーダーが変わったことの影響だという指摘

by Anthony Ryan

ウェブ検索市場では、Googleが長年圧倒的なシェアを占めていますが、Google検索の品質は年々悪化していることが研究で示されています。そんなGoogle検索の品質が悪化したのか、イギリスのジャーナリストであるエドワード・ジトロン氏が自身のニュースレターで解説しています。

The Man Who Killed Google Search
https://www.wheresyoured.at/the-men-who-killed-google/

2018年から2020年までグーグルの検索部門の責任者を務めていたベン・ゴームズ氏はGoogle黎明期からの中心メンバーで、検索エンジンの設計にも携わっています。

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ゴームズ氏は、検索結果の関連性を高めるために、「ページランク」と呼ばれるアルゴリズムを単一マシンではなく複数のマシンで動作するように改良しました。これにより、Googleは膨大な量のウェブページを効率的にクロールし、インデックス化することが可能になりました。

さらに、ゴームズ氏は、低品質なコンテンツが検索結果上位に表示されにくくするため、「パンダアップデート」と呼ばれる改良をGoogle検索アルゴリズムに導入。2011年に導入されたこのパンダアップデートにより、コピーコンテンツや広告主導のサイトがGoogleの検索結果から排除されるようになりました。そして、ゴームズ氏は2018年にGoogleの検索部門責任者に就任しました。


しかし、Googleの広告チームとファイナンスチームは検索収益の伸び悩みを受けて、2019年2月に「コードイエロー」を宣言しました。「コードイエロー」とはGoogleで使われている社内用語で、収益目標の未達成や重大な技術的問題の発生など、事業に大きな影響を与える可能性のある事態が発生した際に宣言されます。広告チームは、検索エンゲージメントを上げるために、ユーザー体験を犠牲にしてでも変更を加えるべきだと主張しました。

これに対して、「ユーザーに最適な情報を届ける」ことがGoogleの理念であるとするゴームズ氏は、ユーザー体験を犠牲にしてまでエンゲージメントを上げることを認めず、検索の中立性や品質を守るための方針を打ち出そうとしました。しかし、最終的にGoogleの経営陣は広告チームの主張を支持する判断を下しました。

その結果、ゴームズ氏は2020年6月にGoogleの検索部門責任者を解任され、後任にはプラバカール・ラガヴァン氏が就任しました。ラガヴァン氏は2005年から2012年までYahoo!の検索部門責任者を務めており、Yahoo!入社前はIBMで検索アルゴリズムの研究開発に携わっていたとのこと。しかし、ジトロン氏はYahoo!の検索市場シェアが2005年から2012年のあいだに大きく低下したことを理由に、ラガヴァン氏の手腕に疑問を呈しています。

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ゴームズ氏は解任後、教育部門に異動となり、事実上の降格人事となりました。この時すでに、Googleの共同創設者であるラリー・ペイジ氏もセルゲイ・ブリン氏もGoogleを去っており、この時点でGoogle経営陣の考え方が「ユーザー至上主義」から「成長史上主義」に転換したとジトロン氏は主張しています。

ラガヴァン氏は広告収入の成長を最優先する方針を打ち出し、検索結果にショッピング広告を表示したり、SEO対策に有利なアルゴリズム変更を行ったりといったさまざまな施策を実行しました。さらに、ラガヴァン氏は検索結果のUIを変更し、広告と検索結果の区別を曖昧にしました。この際、広告というラベルを目立たないデザインに変更するというアイデアはラガヴァン氏の主導で実現されたそうです。

加えて、ラガヴァン氏はYouTube動画の検索結果への表示を増やしました。YouTubeはすでにGoogleの子会社となっており、動画広告が主要な収益源となっています。検索結果にYouTube動画を表示することで、ユーザーをYouTubeに誘導し、広告収入を増やすことが可能になります。

ラガヴァン氏の施策は広告主には有利なものでしたが、オリジナルのコンテンツや専門性の高い情報は軽視されるようになり、ユーザーの利便性や体験が犠牲になっているという批判もありました。ジトロン氏は、ラガヴァン氏の検索部門責任者就任が、Googleの理念が「ユーザーファースト」から「広告主ファースト」に転換したことを象徴する出来事だったと論じています。


ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは、2019年から2023年までGoogle検索エンジニアだったというgregw134氏が「ゴームズ氏が検索部門責任者を解任させられたことに、当時ベテランエンジニアの多くが憤慨していました。ただし、私が聞いたところによると、もっと大きな転換点はゴームズ氏の前にGoogle検索部門の責任者だったアミット・シンガル氏が退社した2016年でしょう。彼は機械学習を減らして人間のエンジニアが理解可能にできるものにするべきだと主張していました」と証言しています。

一方で、「ラガヴァン氏がIBMの時に著した論文は非常に素晴らしく、エンジニアとしては優秀であり、決して成長至上主義者ではありません。ラガヴァン氏にすべての責任をなすりつけるような書き方には問題があります」と、ジトロン氏の論調に大きな偏りが見られるという指摘もありました。

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in ネットサービス, Posted by log1i_yk

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