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「自分の子どもを論文の共著者にする」という不正が韓国で横行していたことが判明

by Pixabay

科学論文などでは1人の研究者だけが研究の全てを行うことは少なく、大抵は数人のチームで共同研究を行うため、発表される論文には主著者だけでなく数名の共著者も名を連ねることがほとんどです。ところが、韓国で「実際には研究に関与していない自分の子どもを論文の共著者に加える」という不正が横行していたことが判明し、韓国の教育部による調査が行われています。

교육부, 미성년 공저자 논문 등 관련 특별감사 결과 발표
https://www.moe.go.kr/boardCnts/view.do?boardID=294&boardSeq=78739&lev=0

More South Korean academics caught naming kids as co-authors
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03371-0

研究上の責任を持つ人物の名前を共著者として載せることは重要ですが、当然ながら研究に寄与していない人物の名前を載せることは不正に該当します。2018年、韓国では「自分の子どもを論文の共著者にする」という不正が10年以上にわたって行われてきた疑惑が浮上し、教育部が自分の子どもや親戚を共著者として載せた論文を調査する事態に発展しました。

2018年の報告では、実に82件もの論文において研究者の子どもや親戚が共著者にされていたことが判明しており、ソウル大学や延世大学、成均館大学などの名門大学を含む29の大学の研究者が関わっていることも報告されました。この時特定された82件の論文のうち、39件では該当する共著者が学校のカリキュラムなどの形で研究に参加していましたが、43件の論文では研究に関与した形跡がみられなかったとのこと。この時点ではあくまでも疑惑だけであり、実際に論文を記した学者が不正に手を染めたのかどうか、大学の倫理委員会などとも協力して調査が行われることとなりました。

疑惑をかけられた論文および学者に対する調査は2019年まで継続され、2019年10月17日に教育部が公開した調査報告では、新たに9人の学者が不正に携わっていたことが確認されたと報告されました。今回の発表により、一連の不正に関わった学者の数は合計で17人となり、不正な共著者が確認された論文総数は24件になったとのこと。

by ThorstenF

教育部の報告によると、新たに特定された9人の学者のうち、5人が自分の子どもを共著者に加えており、残りの4人は知人の子どもなどを共著者にしていたそうです。不正が行われた論文は、少なくとも2007年までさかのぼることができるそうで、長年にわたって不正が横行していたことが示されています。

当然ながら韓国でも研究に関与していない共著者を論文に載せることは明確な不正ですが、韓国の非常に厳しい大学入学競争が不正を助長しているとのこと。韓国は超学歴社会であることが知られており、親は子どもを有名大学へ通わせようと必死になっています。そこで、自分の子どもを大学入学時の審査で優位に立たせるため、研究者である親が、実際には関与していない子どもを論文の共著者にする不正が行われてきたそうです。

韓国では論文不正に対して厳しい罰則が科せられており、教育部は一連の不正に関与した学者に対し、戒告、国が関与する研究に参加することを1年間停止する、懲戒解雇といった措置を検討しているとのこと。すでに成均館大学では1人の学者が今回の不正に関連して解雇され、別の大学でも戒告などが行われていると教育部は述べています。

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教育部長官氏のユ・ウンへ氏は2019年10月17日の声明で、教育部および各大学では未成年の共著者を含む794件の論文を確認しており、そのうち549件がレビュー対象になっていると述べています。同日に発表された報告で確認された論文不正は24件にとどまっていましたが、調査は今後も続けられる予定であり、今後も不正に関連した論文や学者の数が増加する可能性があります。

韓国科学技術院(KAIST)のヨン・キム氏は、「私の印象では、共著者不正の事例は私たちが考えているよりも広範囲にわたっています」とコメント。また、成均館大学の材料科学者であるチャング・リー氏は、大学の入学審査に論文の功績を考慮することに反対すると主張し、「高校生が真剣に研究に関与することはできないため、入学プロセスで論文の出版に注目することは好ましくありません」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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