メモ

30年以上にわたり元同僚になりすましていた男が有罪に、なりすまし被害者はなりすまし犯と誤認されて逮捕され刑務所と精神科で2年過ごす羽目に


1980年代にホットドッグ店で働いていたときの同僚になりすましてその後の人生を送り、病院のシステム管理者にまでなっていた男に対して、有罪判決が出されました。この男によってなりすましの被害に遭った男性は、「なりすましを行っている」として逮捕された上に、自分が本人だと主張を続けたため刑務所と精神科でほぼ2年も過ごすことになりました。

Northern District of Iowa | Former Hospital Administrator Pleads Guilty in Identity Theft Scheme That Spanned Three Decades | United States Department of Justice
https://www.justice.gov/usao-ndia/pr/former-hospital-administrator-pleads-guilty-identity-theft-scheme-spanned-three


Furious hot dog cart vendor whose identity was stolen by hospital exec reveals all about being thrown in a mental hospital for TWO YEARS for complaining about $200,000 in debt the thief racked up in his name | Daily Mail Online
https://www.dailymail.co.uk/news/article-13290993/William-Woods-identity-theft-jail-Matthew-David-Keirans.html

Former University of Iowa Hospital employee used fake identity for 35 years | The Gazette
https://www.thegazette.com/crime-courts/former-university-of-iowa-hospital-employee-used-fake-identity-for-35-years/

事の起こりは1980年代後半、ニューメキシコ州アルバカーキにあるホットドッグ店で、従業員のウィリアム・ウッズ氏が財布を紛失した出来事から始まりました。ウッズ氏はそれまで接点のなかった同僚に財布を見ていないか尋ねましたが、彼は何も言わなかったため、今度は拳を突き詰めて問い詰めました。すると、同僚はウッズ氏の財布を出してきたそうです。この同僚が、今回有罪判決を受けたマシュー・デビッド・キーランズ被告人です。

このとき、財布の中には出生証明書や社会保障番号が入っていましたが、ウッズ氏は「そのときは何も思いませんでした。彼が何かすると、思いもしませんでした」と振り返っています。


しかし、実際にはこの一件でウッズ氏の社会保障番号を手に入れたキーランズ被告人は、だんだんとウッズ氏になりすますようになっていき、1988年には自分の名前と社会保障番号を使わなくなっていました。

The Mail Onlineによれば、キーランズ被告人は1990年にコロラド州のIDを取得し、銀行口座を開設してレストランに就職。1991年には自動車を購入しています。そして1994年に結婚し、子どもをもうけました。

ウィスコンシン州に引っ越したキーランズ被告は、家系図作成サイトで得た情報を利用して、ウッズ氏の出生証明書のコピーを入手。2013年にはITアーキテクトとしてアイオワ大学病院に就職しました。収入は2023年までの10年間で70万ドル(約1億800万円)以上だったとのこと。その間の2016年8月から2022年5月に、アイオワ州北部地区の信用組合から、自動車ローンや個人ローンなど8つの案件で、総額20万ドル(約3090万円)を借り入れています。


一方、2019年時点でホームレスになっていたウッズ氏は、誰かが自分のクレジットを利用してローンを組んでいることに気付き、銀行に行って「借金は払いたくない、銀行口座を閉鎖したい」と主張しました。該当する口座は預金額が多かったため、銀行の支店長はセキュリティを考慮して「秘密の質問」をウッズ氏に行いました。しかし、ウッズ氏は質問に答えることができませんでした。

銀行から通報を受けたロサンゼルス警察は、口座の持ち主であるはずのウッズ氏、つまりキーランズ被告人に連絡。被告人は「口座へのアクセス権は誰にも与えていない」と答え、ロサンゼルス警察に免許証などの身分証明書を送付しました。このとき、免許証の名前は「ウィリアム・ドナルド・ウッズ」ではなく、キーランズ被告人の本名を含む「ウィリアム・デビッド・ウッズ」となっていましたが、キーランズ被告人は「ミドルネームとして、ときどきデビッドを使用するが、本名はドナルド」と説明しました。


身分証明書の提出があったことで、ロサンゼルス警察はキーランズ被告人をウッズ氏であると認識。本物のウッズ氏を「マシュー・キーランズ容疑者」として逮捕し、ロサンゼルス郡刑務所に拘留しました。なお、この時点ではまだ完全にウッズ氏になりすましているはずの「マシュー・キーランズ」の名前がなぜ出てきたのか、司法省の発表には言及がないため不明です。ちなみに、キーランズ被告人本人のスペルは「Keirans」、ウッズ氏につけられた容疑者名のスペルは「Kierans」で、微妙に間違っています。

裁判にかけられたウッズ氏は、一貫して「自分はマシュー・キーランズではない」と主張しました。その結果、裁判所は「ウッズ氏には裁判を受けるだけの精神的能力がない」と判断し、精神科に入院させる措置を執りました。刑務所で428日間(約1年2カ月)、精神科で147日間(5カ月弱)を過ごした末に、ウッズ氏は有罪を受け入れることで即時釈放となりました。


しかし、州裁判所はウッズ氏に、罰金400ドル(約6万2000円)の支払いと「マシュー・キーランズ」の名前使用を命じました。キーランズであるはずがないウッズ氏は、何度もカリフォルニア州とウィスコンシン州の当局に対して「自分がウィリアム・ウッズである」と申し立てを実施。そのたびに、キーランズ被告人は「自分こそがウッズである」という虚偽のレポートを提出しました。

状況の打開に苦しんでいたウッズ氏は、自分になりすましている人間について調べ続け、ついに2023年1月、アイオワ大学病院にたどり着きました。

ウッズ氏から連絡を受けた病院のセキュリティ部門は、警察に連絡。ベテランのイアン・マロリー刑事が事件を担当することになりました。マロリー刑事は数カ月かけて捜査を行い、キーランズ被告人がいかに個人情報を盗んだかという手法を解明しました。

決定的だったのは、出生証明書をもとにケンタッキー州に住む「ウッズ氏の生物学上の父親」のDNA検査を行ったことで、ウッズ氏は間違いなくこのケンタッキー州在住の男性の息子でした。

2023年7月、マロリー刑事の訪問を受けたキーランズ被告人は当初、ウッズ氏について「クレイジーな人物だ」「助けが必要で、拘束する必要がある」と主張していましたが、DNA検査の結果を突きつけられて、ウッズ氏になりすましていたことを認めました。CBS Newsによると、証拠を見せられたキーランズ被告人は「人生の終わりだ。すべてなくなった」と述べたとのこと。

Former hospital IT worker pleads guilty to 3-decade identity theft that led to his victim being jailed - CBS News
https://www.cbsnews.com/news/william-woods-matthew-keirans-former-hospital-it-worker-guilty-identity-theft-victim-jailed-iowa/


キーランズ被告人の妻は「動機は単純で、若いころ手にできなかった家族と家を手に入れたかったのだと思います」と語りました。

アイオワ州シーダーラピッズの連邦裁判所は2024年4月1日、保険機関に対する虚偽の供述と個人情報盗難の罪で、キーランズ被告人に有罪判決を下しました。量刑の内容は未確定で、最短2年から最長32年の禁錮刑と125万ドル(約1億9300万円)の罰金、禁錮刑服役後5年間の監視措置の可能性があります。

なお、Mail Onlineによると、ウッズ氏はテキサス州エルパソの友人宅に滞在していて、「次は、すべてのものを取り戻して、元の自分を再構築しなければいけないと思います」と語ったとのことです。

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in メモ, Posted by logc_nt

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