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プログラミング言語Pythonの生みの親がDropboxを退社、Dropboxが語る一流プログラマーの姿とは?

by Sagaru9535

プログラミング言語Pythonの生みの親であるグイド・ヴァンロッサム氏は、2018年7月12日に突如Python開発のBenevolent Dictator For Life(BDFL、優しい終身の独裁者)を退き、Pythonの仕様策定から離れる意向を示しました。そんなヴァンロッサム氏は2013年1月からDropboxの主任エンジニアを務めていましたが、2019年10月29日時点で既にDropboxを退社していることをDropboxの開発チームが公表。公式ブログでヴァンロッサム氏のエピソードと共に謝意が述べられています。

Thank you, Guido | Dropbox Blog
https://blog.dropbox.com/topics/company/thank-you--guido


ヴァンロッサム氏はアムステルダム大学で数学と計算機科学の修士号を取得した後、オランダの研究所を経て、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)やアメリカ国立研究開発法人(CNRI)に在籍。また、ヴァンロッサム氏は1991年にPython 0.90のソースコードを公開し、1994年1月にPython 1.0を公開するなど、「Pythonの生みの親」としても知られています。なお、「Python」という名前はヴァンロッサム氏がイギリスのコメディグループ「モンティ・パイソン」のファンだったことに由来しているとのこと。

by Ben Welsh

Dropboxのドリュー・ヒューストンCEOは「Pythonで気に入っているのは、Pythonが機能することです。Pythonはとても直感的で、美しくデザインされています。そんなPythonの特徴は、Dropboxの設計理念を考える上で私と(Dropboxの共同設立者である)アラシュ・フェルドーシに影響を与えました」と述べています。実際、Dropboxサーバーとデスクトップクライアントの初期コードのほとんどがPythonで書かれていたそうです。

ヒューストンCEOとヴァンロッサム氏は、元同僚の紹介で2011年に出会ったとのこと。ヴァンロッサム氏は当時のDropboxを振り返って「DropboxはPythonですべての仕事を行っていたため、私はコードのどの部分に興味があるかということも含めて自分がワクワクしていることに気づきました」と語っています。

当時Googleに勤めていたヴァンロッサム氏がDropboxに移籍したのは2013年12月のこと。Dropboxのエンジニアは、ヴァンロッサム氏のもとでPythonのエキスパートとして成長し、ヴァンロッサム氏の存在はDropbox内のエンジニアリング文化に大きな影響を残したと、Dropboxは述べています。

by Ian Lamont

会社が成長するにつれて、後から入社したエンジニアにとって、Dropboxのコードは非常に難解なものになってしまうという問題が発生。Pythonのエキスパートたちによって書かれたコードは個人の機転によって短くなっていったものの、コーディングしたエンジニア以外にとってはわかりづらいものになってしまっていたとのこと。ヴァンロッサム氏は、チーム内の開発者がコミュニケーションを取れずに好き勝手バラバラに開発してしまう状況を「カウボーイコーディング文化」と呼び、わかりづらいコードを見つけたら他の人にもわかりやすいように書き直し、「スマートさよりも保守可能性の方が重要です」と、社内で積極的にコミュニケーションを取るように呼びかけていたそうです。

また、ヴァンロッサム氏はDropboxのエンジニアに対してテストの重要性を訴えました。コードが変更されるたびに問題がないかテストが行われますが、ほとんどのエンジニアが「なぜテストが失敗したのか」を理解しようとしないという問題に気づきました。ヴァンロッサム氏はコードをテストするチームに加わり、なぜテストが失敗したのかがすぐに理解できるような内部ツールを開発したとのこと。

Pythonの型を静的にチェックするツールmypyは、もともとはエンジニアのユッカ・レトサロ氏が大学の博士号研究の一環として開発をスタートしたものでした。しかし、Pythonカンファレンスで発表を聞いたヴァンロッサム氏がレトサロ氏をDropboxに誘い、2015年に社内でmypy開発チームを結成し、以降4年にわたってレトサロ氏と一緒にmypyの開発を進めていたとのこと。この結果、mypyによってDropboxのおよそ400万行にわたるPythonコードがチェックされ、20万カ所以上の型定義が改善され、エンジニアの時間を大きく節約することに成功したそうです。

by geralt

そして、「私はフェミニストとして生まれたと思う」と語るヴァンロッサム氏は、Pythonのコア開発チームに女性エンジニアがいないことに気づき、Dropbox内にいる女性エンジニアに声をかけ、積極的にPythonのコア開発に携わらせたそうです。Dropboxの情報技術サービスチームに所属する女性エンジニアのSushma Yadlapalli氏は、週に1度はヴァンロッサム氏とプログラミングについての会議を行い、Python開発コミュニティに関わってきたとのこと。

Yadlapalli氏は「ヴァンロッサム氏は私が言ったり聞いたりしたことを決して無視せず、私に力があると感じさせてくれました。彼は信じられないほど現実的です。ヴァンロッサム氏の中心にあるのは『自分なりのやり方で世界を良くしようとすること』であり、彼の哲学だったと思います」と述べました。

「ヴァンロッサム氏は、友好的で歓迎的なコミュニティを育てることに成功しました」と語るレトサロ氏は「ヴァンロッサム氏の存在がPythonコミュニティの大部分を占めているので、Pythonコミュニティをこれからもフォローし続けてくれることを願っています。Dropboxから引退したとしても、Pythonコミュニティから完全に引退したというわけではありません」と述べています。

by Doc Searls

実際に、ヴァンロッサム氏はPythonコミュニティへのメールの中で「通常のコア開発者として、しばらくはコミュニティにとどまるつもり」と述べており、あくまでもPython Enhancement Proposal(PEP)の意思決定プロセスから退きたいという意志を示しています。

「私のちょっとしたハックが多くの人々の人生に影響を与えるのを見ることは素晴らしいものです」とヴァンロッサム氏は語り、「『Pythonは自分たちの人生を変えた最高のものだ』という人たちからファンメールを受け取ることもあります。Pythonのすべては人々の貢献に対して非常にオープンであること、そして自分たちでどうにかしようとする人たちを励ますことから始まっています」とコメントしています。

Dropboxは「ヴァンロッサム氏をDropboxファミリーの一員として迎えられたことに感謝していて、引退後も彼が最高であることを願っています。ありがとう、グイド!」と謝意を述べました。

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in メモ,   ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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