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住宅費が高すぎて都市から住民が離れていくサンフランシスコの現状とは?

by Alexander Mils

アメリカ西海岸にあるサンフランシスコや近郊の都市を含めたサンフランシスコ・ベイエリアは、世界でも有数のハイテク企業が集まる都市として知られています。そんなサンフランシスコ・ベイエリアには多くの人々が住んでいるものの、あまりにも高すぎる住宅費が生活を圧迫し、住民たちが離れていく現状があるそうです。

California housing crisis: Residents flee San Francisco because of costs
https://www.usatoday.com/story/news/nation/2019/10/19/california-housing-crisis-residents-flee-san-francisco-because-costs/3985196002/

ライフスタイルブログのSassy Red Lipstickを運営するサラ・トリップ氏と夫のロビーさんは、2016年に希望を持ってサンフランシスコに引っ越しました。「私たちはこの都市が一生懸命働いて成功をつかむチャンスとつながりにあふれていると考えていました」とサラさんは語りますが、2人の家探しは非常に難航したとのこと。

トリップ夫妻はおよそ1年以上にわたって住みやすい家を探し続けたものの、「改装が必要な狭い掘っ立て小屋なのに100万ドル(約1億1000万円)もする家」しか見つけられなかったそうです。2人は毎月の家賃が2500ドル(約27万5000円)もする寝室が1つ、バスルームが1つの賃貸物件に2年間住み続けましたが、最終的にサンフランシスコを離れることを決心しました。アリゾナ州フェニックスで購入した新築物件は、寝室とバスルームが4つずつあり、サンフランシスコではとても手が出ない物件でした。

トリップ夫妻はベイエリアでの生活を「多くのハイテクスタートアップ企業の近くに住むことは魅力的でした。しかしベイエリアでは、自分自身がスタートアップの一部でなければすぐに追い出されてしまうでしょう。悲しいことです」と回想しました。

by Pixabay

ベイエリアは、過去20年近くにわたりテクノロジーに魅了された起業家たちにとって魅力的な場所であり続けました。その結果、アメリカ西部で最も住宅価格が高く、ガソリン代や教育費、外食費などを合わせると、アメリカ平均の2倍もの生活コストがかかる都市となってしまったそうです。

不動産仲介業者のRedfinが発表した移住レポートによると、2019年の第2四半期だけで2万8190人もの人々がサンフランシスコを離れているそうで、サンフランシスコはアメリカでも一二を争う「住民が流出している都市」だとのこと。

以下の画像は都市ごとの住宅価格の中央値を表したもの。サンフランシスコでは住宅価格の中央値が146万6900ドル(約1億6000万円)であるのに対し、ロサンゼルスは63万2500ドル(約7000万円)、シアトルは58万ドル(約6400万円)となっており、両都市とも2倍以上の開きがあることがわかります。トリップ夫妻が物件を購入したフェニックスに至っては28万ドル(約3000万円)で、5倍以上も住宅価格の中央値に差が出ています。カリフォルニア州全体としても住民の流出傾向があり、2018年には流入者より3万8000人近く多くの流出者があったそうで、住民の53%が高い生活費のために移住を検討しているという(PDFファイル)調査結果もあります。


ベイエリアを含むカリフォルニア州からの移住先として近年人気を集めている都市として、州税としての所得税がないテキサス州オースティンなどが挙げられます。オースティンは2019年の第2四半期に5403人の新規移住者があり、その多くがサンフランシスコ出身だったとRedfinは指摘しています。

家計収入の中央値でみると、ベイエリアは10万ドル(約1100万円)という高水準にあり、ほとんどのアメリカの都市で暮らすのに十分です。しかし、連邦税と州税が引かれた上におよそ月額3600ドル(約40万円)、シリコンバレーに至ってはおよそ4600ドル(約50万円)という高額な家賃が生活を圧迫し、低所得者はホームレスになるか、車上生活者になるしかないという現実もあるとのこと。

拡大する住宅危機問題には起業家や政治家も注目しており、企業向けクラウド大手のSalesforce.comの共同CEOであるマーク・ベニオフ氏はホームレス問題解決に向け、大企業に課税することを定めた法案を強く支持しました。また、カリフォルニア州知事であるギャビン・ニューサム氏も住宅問題に取り組み、低所得者向け住宅の建築に資金を拠出したり、家賃の上昇幅に制限を設けたりする対策を打ち出しています。ニューサム氏は2019年10月、「私たちはアメリカで最も裕福であるのと同時に最も貧しい州に住んでいます。生活費こそがカリフォルニア州が抱える最も大きな問題です」と述べました。と述べました。

by Lukas

カリフォルニア州全体で危機意識の高まりもみられるものの、生活費に日々の生活が圧迫されている中流階級の人々にとって、住宅価格の上昇はのんびりと構えていられる問題ではありません。カリフォルニア州・サンノゼ出身のヘイリー&ジム・ケーシー夫妻は、2016年にサンノゼで購入した小さな家に住み、2人で幸せに暮らしていけると思っていました。ところが2人の間に子どもが生まれ、「これ以上大きな家を買うことはできない」と判断したケーシー夫妻は、サンノゼの家を手放してオースティンへの移住を決断しました。「オースティンには柔軟性に富み、家族に優しい生活があります」と、妻のヘイリーさんは述べています。

また、2006年にシリコンバレーに通じる高速道路の近くに家を購入したデボラ&ジャスティン・ネイスラー夫妻も、サンフランシスコを離れる決断をしました。2人目の子どもが生まれて家が手狭になったタイミングで、不動産仲介業者に務めるネイスラー夫妻の友人が、「購入時より66%も価格が上昇している」と教えてくれたため、夫妻は家の売却を決断。「サンフランシスコは恋しいですが、家族にとってベストな場所ではありません」と、夫妻はコメントしました。

カリフォルニア州のチャップマン大学で都市研究を行うジョエル・コトキン氏は、「カリフォルニア州には中流階級が必要です。中流階級のいない社会はいびつな社会です」と述べ、カリフォルニア州から中流階級の人々が流出する現状を危険視しています。また、カリフォルニア州の上院議員であるスコット・ウィーナー氏も、「私たちは中流階級の人々が家族を養うことができず、労働者が雇えずにレストランが閉店し、教師や警官などの公務員が職場の近くに住めない未来に直面しています」「私たちは大きな切迫感を覚えるべきです」と述べ、警鐘を鳴らしました。

by Gary Denham

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in メモ, Posted by log1h_ik

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