インタビュー

「ゲームをやるのも仕事」と言える仕事っぷりを見せるアニメ「放課後さいころ倶楽部」シリーズ構成・前川淳さんインタビュー


2019年10月から、ボードゲームを題材にした漫画「放課後さいころ倶楽部」のアニメ放送・配信が始まりました。シリーズ構成を手がけるのは前川淳さん。本作と同じくゲームがメインである「遊☆戯☆王」シリーズでも構成を担当していることで知られているので、そのあたりのつながりや、原作アリの本作でどのようにしてエピソードを組み立てていったのか、話をうかがってきました。

アニメ『放課後さいころ倶楽部』公式サイト
http://saikoro-club.com/

GIGAZINE(以下、G):
前川さんは「すごろくや祭」でのトークイベントの中で、自身もボードゲームプレイヤーであるという話をしていました。ボードゲームとの出会いはどういう形だったのですか?

前川淳さん(以下、前川):
以前、ボードゲームをやる会みたいなところに参加していたことがありまして……ただ、本格的にやり始めたのは、それとはまた別のチームでやるようになってからで、2~3年ぐらい前のことですね。

G:
それはこの企画に出会うよりも前ですか?

前川:
前ですね。むしろ、ボドゲの会でここのプロデューサーさんと出会ったぐらいですから。最初はただゲーム仲間だったんです。それが、やがてこの仕事につながったというわけです。

G:
ボードゲームきっかけでプロデューサーと出会ったというのは、そのボドゲの会でのことだったんですね。

前川:
はい。ゲームもやってみるものだなと思いました(笑)

G:
趣味が実益につながったという感じですね。

前川:
まさにそうなんです。このおかげで「ゲームをやるのも仕事だから」と胸張って言えます。

G:
シナリオ会議の後にもゲームをプレイされていたとか。

前川:
やっぱり自分たちがゲームを知らないと書けないところもありますから、僕以外に入っている脚本家の方や監督たちと一緒に、作品に出てくるゲームをプレイしています。


G:
アニメのスタッフの決まり方は必ずしも一定ではないと聞きます。今回、前川さんが本作に参加されたのは、どれぐらいのタイミングだったのですか?

前川:
話をいただいたのはわりと早かったですね。時間的にも余裕があった方だと思います。

G:
マンガ原作のアニメ化作品ではアニメの放送が始まった時点でもまだ単行本の巻数があまり出ていないというケースがあります。「放課後さいころ倶楽部」の場合は2019年5月に14巻が出ているので、比較的多い方に思えますが、「シリーズ構成」としてこのボリュームをどうするかというのは難しくありませんでしたか?

前川:
「何巻までやります」とはまだ言えないのでそこは伏せますが、原作が続いている作品なので、まずは「どこまでやるか」を決めて、次に各エピソードをどのぐらいにするか、たとえば第1話でこのあたりまで行って、第2話ではここまでやって、ということを詰めていきます。

G:
なるほど。

前川:
もちろん、中には「このエピソードはちょっとアニメにするのは難しい」というのもありますので、そういうところに配慮しつつ、わりと順番にボトムダウンな感じで進めていきました。他の現場では確かに、原作が足りなくてオリジナルエピソードをやらなければということも経験していますが、今回はむしろ逆でしたね。

G:
どのエピソードをアニメに盛り込むか悩むぐらいだと。

前川:
はい、それを選んでいく仕事がメインだったぐらいにも感じます。

G:
選ぶにあたって、作中にはいろいろなゲームが登場しますが、「このゲームは面白いから登場させよう」みたいなことはありましたか?

前川:
原作では基本的にストーリーと絡む形でゲームが登場するので、「このゲームが好きだから」とこちら側から特定のゲームだけ選ぶようなことはなかったと思います。前提として、極力、原作の流れには沿った原作準拠のものをと考えた上で、諸事情あって変更を入れる必要がある部分については「こうアレンジしましょう」などと進めた感じです。

G:
参考としてちょっと映像を拝見しましたが、まさに原作を忠実にアニメに落とし込んでいるなと感じました。

前川:
いやー、なにより現場が大変だったと思いますよ。PVにも出てきますが、出てくるゲームはあれすべてテクスチャを貼っているわけですよね。僕は「遊☆戯☆王」も手がけましたけれど、あのカードだけでも大変だろうと思うのに、ボードゲームでカード以外のものも出てくることがあるわけですから、あれは相当大変だろうと。僕らはしょせん、文字ですからね(笑)


G:
(笑) でも、文字のみで書くとなるとイメージする必要があって、それはそれで大変ではないですか?

前川:
そこで出てくるのが、スタッフが作ってくれる「棋譜」なんです。

G:
ああー、「遊☆戯☆王」のデュエルでも作られていたという。

前川:
「遊☆戯☆王」のデュエルを素人が構成するのは無理ですからね。まずは「デュエル考証」という役割の専門スタッフに、その回のデュエルの流れをざーっと書き出してもらうんです。それを見ながら脚本に落とし込むという作業をしています。今回の「放課後さいころ倶楽部」でも同じようにゲームの流れを事前に全部作っておいて、「今はこの部分をプレイしている」というところを切り出して使っています。

G:
そういうことなんですね。

前川:
マンガはコマとコマとの間が飛んでいても大丈夫なんだと思うんです。でも、アニメだと流れが見えてしまうので、一応ゲームの流れは冒頭から最後までを作っておかなければいけないんです。かといって、そのゲームの流れを全部出してしまうと時間が取られてしまいますから、どの部分をうまく使うかですよね。

G:
原作とストーリーに合わせつつゲームメイクをしていくスタッフさんの努力もあって、いいものになっているわけですね。

前川:
「一巡目、どの手札から始まったのか」から、かなり手間をかけてしっかりと作っています。

G:
前川さんは「遊☆戯☆王」のほか「テニスの王子様」「フレッシュプリキュア!」「デジモンアドベンチャー02」といった作品でもシリーズ構成を手がけられていて、深夜アニメよりも朝や夕方の作品を手がけておられるイメージがあります。

前川:
確かに、僕の仕事は子ども向け作品が多くて、あまり深夜の作品はやっていないですね。

G:
それは、キッズアニメを得意としているから、みたいな理由ですか?

前川:
「そういう仕事が来たから」ですね(笑) 脚本家としてのデビューが「ドラゴンボールZ」で、東映アニメーション作品だったという縁でほかにも東映アニメーションの仕事をするようになって、その現場で知り合う方々もまた近い作品を手がけていることが多いので、たまたまフィールドで子ども向けに近いところに立っていたというところです。

G:
「現場での縁」なのでジャンルの近い作品が多かったわけですね。

前川:
それもあって、深夜アニメはそれほどやっていないんです。

G:
最初にスタッフの名前を見た時に、前川さんが起用されたのは「遊☆戯☆王」などのゲーム要素が本作に通ずるところがあるからだろうかと勝手に想像していました。

前川:
(笑) でも、作り方として似たところは確かにあります。でも実は、僕はそもそも「子ども向け」だとか「大人向け」だとか、そういうことは意識していないんです。

G:
意識していない。

前川:
お話の展開、ドラマのベーシックなところは変わりがなくて、見せ方として「子ども向け」「大人向け」の差がちょっとあるだけではないかなと。「放課後さいころ倶楽部」の場合、深夜アニメだからといって過激な描写があるわけではないし、お色気シーンがあるわけでもないですから、特にその差は少ないですよね。書いている側とすれば「フレッシュプリキュア!」の女の子たちを書いているときと、本作のミキちゃんたちを書いているときで、それほど意識に差はないんです。

G:
おおー、なるほど。

前川:
さすがに本作では変身はしませんけれど(笑)、一方は変身する女の子の話、もう一方はボードゲームをやる女の子の話と違いはあっても、友達や家族との関係に悩むのは、誰しも抱える問題ですから。

G:
確かに、そこは普遍的な問題ですね。

前川:
「フレッシュプリキュア!」は未就学児童向けのアニメではあるんですけれど、もうちょっと上の世代が見ても面白いものにしたつもりだし、「放課後さいころ倶楽部」も扱っているゲームの中には対象年齢の下限が「4歳から」「6歳から」みたいなものもあるので、そういった子どもたちが見られるものだと思います。時間的な問題はありますけれど、むしろ、お子さんにも見てもらってボドゲファンの裾野が広がるといいななんて思います。

G:
英才教育ですね(笑)

前川:
もともと、原作もゲームを扱いつつもそこまでマニアックに振り切った内容ではなく読みやすいものなので、極端にいえば、日曜の朝に放送されていても不思議じゃないと思うんです。

G:
それはありますねー。今回、今泉賢一監督との間でイメージのすりあわせはどのように進められましたか?

前川:
今回は僕の方が先に入っていたので、監督にイメージを伝えて、監督からこうしたいというお話を聞いて、という感じでした。監督も僕もそれぞれにイメージを持っている、というのはどの作品でも同じですね。とはいえ、今回は原作アリなので2人の間でそれほど遠いものにはならないですよ(笑)。お互いにこだわるポイントの違いはあれ、アフレコ現場に行ったときにできていた映像を見た感じ、イメージから離れたようなものではなかったですし。監督とは同い年というのが関係あるかはわからないけれど(笑)、いい現場だと思います。

G:
シナリオ・センター出身ライターから作家志望へ捧ぐ言葉というのが公開されていて、前川さんは「一に、書くこと。二に、読んでもらうこと。脚本が面白いか面白くないかは、読んだ人が思うことです」という言葉を送っておられます。とはいえ、書き手側にも「今回の出来はこれぐらい」というのがあるのではないかと思います。たとえば「今回の作品だと、点数はこれぐらいかな」みたいな……。

前川:
点数はわかんないけど(笑)、「脚本」というのも厳密にいうと「脚色」なんですよ。

G:
脚色。

前川:
本作に限らず「原作があって、それを脚本にする」というのは「脚色」で、原作の通りそのままでにやれるかというと、いろんな事情でできないところも出てくるんですよね。オリジナルの脚本だとまず「どういう話にするのか」から考えますが、原作ものだとその部分はもうあるので、オリジナルものとは別の発想で「どこを使って、どこを切るか」「ここを切るとどこがどう変わるか」ということを考えるという、ある種の編集だといえます。


G:
確かに。

前川:
「放課後さいころ倶楽部」の原作ではまず3人の出会いがじっくりと描かれていて、最初のゲームである「マラケシュ」が出てくるのは第3話です。でも、アニメではやっぱり1つのエピソードに1つはゲームが出てきて欲しいので、そのためにはどうするか……みたいなことですね。

G:
うまくアレンジされているなと感じました。

前川:
「どこまでゲームを出すのか」というのは初期の打ち合わせで何度も出たんです。ゲームのインスト、いわゆる説明みたいな部分ですね、あれはエンディングかミニコーナーにまとめてしまうという話もあったんですが、やはり本編に組み込もうということになって、本編を見て最低限のルールはわかるようになっています。

G:
なるほど。

前川:
むしろ、ゲームが出てくるという点では演出の方が大変だったと思いますよ。もちろん、脚本の時点でどういう絵にするのかというイメージが伝わるように「こういう説明をする」というのは書くんですけれど……。だから、初めてPVを見てゲームをプレイしているところが出ていたときに「おお、ちゃんとプレイしている」と感動しました。もちろん、こういう作品ですから、それが当然ではあるんですけれど。「ごきぶりポーカー」はカードのみのゲームなので「遊☆戯☆王」と同じですけれど、「マラケシュ」や「インカの黄金」は小物もあって……。「これを毎話数やるんだな……」と(笑)

G:
確かに(笑)

前川:
「遊☆戯☆王」で新しいカードが出るにしたって、カードのみですけれど、「放課後さいころ倶楽部」はゲームごと変わりますからね。本当に現場はすごいなと思いますし、ぜひそこはアニメで注目して見ていただきたいポイントです。

G:
それは20年以上にわたって脚本を書いている前川さんが見ても「これは現場頑張ってるな」と思うぐらいのものだと。

前川:
PVだけでもそう感じるぐらいです。ここまでボードゲームをがっつりアニメにした作品ってないと思うんです。そこまでやる意味がないから。普通なら実写でやってしまうところだと思います(笑) でも、この作品はメインだからそこにしっかりと取り組んでいるということです。この作品を見てボードゲームに興味を持ち、プレイする人が増えたらいいなと本当に思いますね。

G:
本当にそうですね。本日はありがとうございました。

TVアニメ「放課後さいころ倶楽部」はABC・TOKYO MX・BS11・AT-Xで放送中。また、dアニメストアで独占先行配信が行われているほか、10月6日(日)以降、他のサイトでも順次配信がスタートします。

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in インタビュー,   アニメ, Posted by logc_nt

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