ソフトウェア

「無料でオープンソースの写真管理ソフトが特許を侵害している」と謎の企業によって非営利団体が訴えられる

by rawpixel

Rothschild Patent Imaging LLCと呼ばれる企業が、非営利団体のGNOME Foundationが開発を推し進めているオープンソースのソフトウェアに対して「特許を侵害している」と訴えを起こしたことがわかりました。このRothschild Patent Imaging LLCは以前から「パテント・トロール」として知られる人物の会社で、ユーザーコミュニティは「根拠のない訴訟だ」と反発の声を挙げています。

UNITED STATES DISTRICT COURT NORTHERN DISTRICT OF CALIFORNIA_ DIVISION
(PDFファイル)https://insight.rpxcorp.com/litigation_documents/13472237


GNOME Foundation facing lawsuit from Rothschild Patent Imaging LLC – GNOME
https://www.gnome.org/news/2019/09/gnome-foundation-facing-lawsuit-from-rothschild-patent-imaging/


GNOME is Being Sued Because of Shotwell Photo Manager
https://itsfoss.com/shotwell-lawsuit/


GNOME Foundationは、GNOMEというLinuxのデスクトップ環境を開発するGNOMEプロジェクトを運営する非営利団体です。2019年8月28日に地方裁判所に提出された訴状によると、Rothschild Patent Imaging LLCという謎の企業が、GNOMEプロジェクトに基づいてオープンソースで開発されるフリーの写真管理ツールShotwellが特許を侵害していると訴えました。

なお、Rothschild Patent Imaging LLCが侵害されたと主張する特許が以下の「Wireless image distribution system and method(無線で画像を配信するシステムと方法)」というもの。この特許は2008年に出願されたもので、画像を撮影するデバイスと、受信するデバイスを無線で接続し、選択的に日付や場所を送信するという内容で、申請者はL・M・ロスチャイルド氏となっています。

US9936086B2 - Wireless image distribution system and method - Google Patents
https://patents.google.com/patent/US9936086B2/en


しかし、これが果たしてどういった形でShotwellに適用されるのかは不明で、ユーザーコミュニティのフォーラムでも「Shotwellは画像キャプチャデバイスではありません」と指摘されています。

オープンソースやLinuxに関連するニュースを扱うIt's FOSSが調査したところ、Rothschild Patent Imaging LLCには公式サイトや連絡窓口もなく、会社としての活動実態がインターネット上にまったく存在していないとのこと。それでも、Rothschild Patent Imaging LLCは合計48件もの特許訴訟を起こしていて、そのどれもがロスチャイルド氏が所有する特許の侵害を訴えたものであることが判明。


実はこのロスチャイルド氏という人物は以前からパテント・トロールとして知られていて、「既にありふれている技術のアイデアを非常に抽象的な文章で表現し、片っ端から特許申請を行う」というやり口を繰り返しており、電子フロンティア財団の「今月の最も愚かな特許」にも複数回選ばれたこともあります。

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同じくロスチャイルド氏が絡んでいるRothschild Connected Devices Innovations LLCという会社は、2017年に飲み物とデバイスを組み合わせたアイデアを製品化している企業に対して多数の特許侵害訴訟を起こしています。It's FOSSは「Rothschild Patent Imaging LLCは、Rothschild Connected Devices Innovations LLCと同じく、ロスチャイルド氏が訴訟を起こすために設立した会社かもしれない」と論じています。

ただし、ロスチャイルド氏の狙いは裁判で勝つことではなく多額の和解金であり、多くの企業は面倒で負担の大きい訴訟を避けるために和解金を支払うことがほとんどだとのこと。実際、Rothschild Connected Devices Innovations LLCは訴訟を起こした相手に和解金として7万5000ドル(約800万円)を要求しています。

「ありふれたものを抽象的に表現して特許を取得し、企業相手に訴訟を起こして和解金を要求する」を幾度となく繰り返しているロスチャイルド氏ですが、いつも勝利しているわけではありません。ロスチャイルド氏は2017年にGPSウェアラブル端末を出すガーミンを訴えたものの、徹底的に反撃され、訴状を引き下げました。しかし、ガーミンは逆にロスチャイルド氏を訴訟して、勝訴。ロスチャイルド氏はガーミンがこれまで裁判のために負担した費用を全額支払う命令を下されました

GNOME Foundationのエグゼクティブディレクターであるニール・マクガバン氏は「進行中の訴訟のため、残念ながら現時点ではこれ以上コメントすることはできません」と述べました。和解ではなく訴訟に応じるということは法的に対立するということを意味するため、裁判の流れによってはロスチャイルド氏が手痛いしっぺ返しを受ける可能性も十分考えられます。

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in メモ,   ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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