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ナンバープレート偽装防止のために生み出されたフォント「FE-Schrift」とは?

by StockSnap

世の中にはさまざまなフォント(書体)があり、フォントの違いによって人が文字から受ける印象が変わったり、同じ文面でもよりインパクトが強くなったりします。「FE-Schrift」というフォントは「ナンバープレートの偽装を防止する」という目的で開発された特殊なフォントであり、今や多くの国々で採用されています。

FE-Schrift - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/FE-Schrift

FE-SchriftのFEとは、ドイツ語の「Fälschung(改ざん)」と「erschweren(防止)」の頭文字をとったものであり、Schriftはドイツ語でフォントを意味します。FE-Schriftはドイツで生まれたサンセリフフォントであり、文字の飾り(セリフ)がなく、わずかに太めで均等な文字の幅は機械による読み取りが容易なだけでなく、ナンバープレートの偽造防止にも有効であるとのこと。

もともとドイツではDIN 1451というタイプのサンセリフフォントが、ナンバープレートを含めた交通・行政・技術分野で広く用いられていました。ところが1970年代に入るとドイツ赤軍によるテロの脅威が高まったことや、ナンバープレートの盗難が増加したことから、DIN 1451に代わる新たなフォントが必要という考えが高まりました。

DIN 1451は読みやすいフォントではあるものの、ほんの少し黒いペンキを塗り足したり黒いテープで文字を描き足したりすることで、簡単に別の文字に偽装できてしまうという弱点がありました。たとえば「P」を「R」にしたり、「L」または「F」を「E」に書き換えたりすることで、ナンバープレートを偽装して検問を掻い潜ることができてしまいます。一方、文字の一部分を白いペンキで隠すのは塗料の問題で難しく、特に夜間であれば偽装がバレやすかったそうです。

by Capri23auto

そこでドイツ連邦高速道路研究所に勤務していたKarlgeorg Hoefer氏がギーセン大学と協力し、1978年から1980年にかけて開発したフォントがFE-Schriftでした。FE-Schriftでは機械の読みやすさを向上させるために線の幅が等しく設定され、それぞれの文字を別の文字と誤認しにくいように改善が行われました。


中でもFE-Schriftの開発にあたって力が注がれていたのが、「文字に線を描き足すことでの改ざんをしにくくすること」です。以下の画像は一番上がFE-Schriftで「PBF」という文字列を書いたものであり、その下にある赤字が「PBF」を「R3E」に改ざんしようとしたもの。一番下にあるのが、FE-Schriftで書いた正しい「R3E」です。それぞれを見比べてみると、「P」と「R」でも上部の形が違ったり、直線と曲線のくっつくポイントに違いがあったりと、簡単には「P」を「R」に書き換えられないようになっていることがわかります。同様に「B」と「3」、「F」と「E」といった似た文字であっても、微妙な形状の違いをあえて作り出すことで、改ざんを難しくしています。


せっかく開発されたFE-Schriftでしたが、1980年に完成したころには新しいフォントを採用する圧力が弱まっており、結局使われないまま忘れられようとしていたとのこと。しかし1990年代になって、盗難車が鉄のカーテン消滅後の東ヨーロッパへ運ばれるケースが増えたことや、欧州連合(EU)内で統一的なナンバープレート(ユーロプレート)の導入が要求されたことから、再びFE-Schriftへの注目が集まります。

FE-Schriftは機械が読み取りやすいフォントであったことから、光学文字認識(OCR)を利用したナンバープレート自動認識技術にとって都合がよかった点も採用を後押ししました。1994年にドイツ東部の州でFE-Schriftを用いたナンバープレートの導入が始まり、1998年にユーロプレートの共有形式が定められて以降、さらに採用する国々が増加。

近年ではヨーロッパだけでなくウズベキスタンやアルメニアといった中央アジア諸国、ウルグアイやアルゼンチンをはじめとする南アメリカの国々、南アフリカなどのアフリカ諸国、クウェートなどでもFE-Schriftが採用、またはFE-Schriftをもとにアレンジを加えたフォントが使われています。

by Hans

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in 乗り物,   デザイン, Posted by log1h_ik

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